2015.12.27  二預言者の生誕祭を祝う街カイロ
富澤規子(アラビア語翻訳者,カイロ在住)


エジプト人男性に圧倒的に多い名前は「ムハンマド」です。これは他のアラブ諸国ではあまり見られない傾向で、エジプト人は預言者ムハンマドをリスペクトするからこそ男児に「ムハンマド」と積極的に命名するのに対し、湾岸系の国ではリスペクトゆえに「ムハンマド」と言う命名を避けるからです。
同様の女児名として「マルヤム」をあげることができます。マルヤムは聖母マリアのアラビア語読み、キリスト教徒だけでなくイスラーム教徒のエジプト人女性にとても多い命名の一つです。

イスラーム暦の移動祝日の一つである預言者ムハンマドの生誕祭は、今年2015年は12月23日でした。カトリック教会のクリスマスと重なり街がとてもにぎやかです。
エジプトの首都カイロの、伝統柄の垂れ幕が飾られたお菓子屋や特設テントでは、ムハンマドの生誕祭のための贈答菓子が売られ、ギフトショップではクリスマス飾りや電飾がところ狭しと並びます。
この贈答菓子、昔は娘姿に型抜きした砂糖に色紙の扇飾りを背負わした人形でしたが、現在では、大きくふくらんだスカート部分にアラブ菓子を詰めたファンシードールが一般的です。箱に詰め合わせた菓子だけ、もしくは人形だけもこの行事の贈り物として喜ばれます。ギフトショップでは、チュールレースの豪華な扇飾りを背負ったファンシードールが並ぶのですが、今年はバーバノエル(サンタクロース)飾りと仲良く店頭をにぎわすことに。
写真(1

アラブ菓子と洋菓子を一緒にあつかう菓子店では、ショーウィンドにクリスマスツリーと扇飾りの人形のステッカーが飾られていました。店内のチョコレート製の小屋からひょっこり顔をだすバーバノエルの視線の先には、お菓子を詰められたムハンマドの誕生日をお祝いする人形達。今年のクリスマスはいつもよりにぎやかなのでバーバノエルもさぞかしびっくりしたことでしょう。
写真(2

エジプトの本来のキリスト生誕祭は東方教会の一つであるコプト正教会のカレンダーで1月初旬に祝いますので、エジプト人が12月25日を祝うのは日本人がキリスト教徒でないのにクリスマスを祝うのと近い感覚かもしれません。

夜には菓子屋の店頭に電飾が煌々とともります。
写真(3

この預言者ムハンマドの誕生日を祝う習慣はエジプトが発祥です。イスラーム教発祥の地である湾岸では生誕祭はさほど盛んではなく、厳格論者の中には偶像崇拝につながるとして否定的な声もあるとのこと。
預言者ムハンマドの誕生日を盛大に祝うそこに、カトリック行事の飾りも混じる今年のエジプトの光景は、他国の方々から見ると程度の差こそあれ驚くべき光景のようです。
よいと思うものを積極的に取り入れ自分達の中に吸収してしまうのは、エジプト人の特徴なのでしょうか。命名方法や生誕祭などの習慣を見ると、アラブ人と一括りにはできない国民性に気づかされます。

なにはともあれ世の中を良くしようと尽力した人の誕生日を記念日として、街がにぎやかなのは楽しいことです。
写真を撮りながら道々そんな話をして、「23日は日本では天皇誕生日でもある」とエジプトの人たちに教えますと、「それは素敵だ」と驚いて「クッルサナ・ウェンタ・タイブ(幾年もあなたが健やかでありますように)」と微笑んでくれます。
日本の皆様によろしくとのこと。
كل سنة وأنت طيب
幾年もあなたが健やかでありますように。
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