2016.01.08 買ってはいけない「機能性表示食品」

岡田幹治(ジャーナリスト)

筆者は昨年5月にこのサイトで、4月に解禁されたばかりの「機能性表示食品」について問題点を指摘し「『機能性表示食品』なんて、いらない」と書いた(上・中・下=2015年5月14・15・16日)。その後、制度の欠陥がさらに明らかになるのをよそに、商品は増え続け、昨年末までに171商品が消費者庁に届け出を受理された。これらはドラッグストアや通信販売で販売されており、テレビや新聞での広告宣伝も盛んだ。そこで改めて強調したい。機能性表示食品を買ってはいけない、と。

◆事業者にはメリットが多い
健康によいとして販売されている「健康食品」は、昨年3月まで3種類だった。①国が商品ごとに健康の維持増進効果(機能性)や安全性を審査・許可する「特定保健用食品(トクホ)」、②効果が明確な栄養成分(ビタミンやミネラル)を補うもので、審査なしで表示できる「栄養機能食品」。③事業者が政府の許可なく販売している「いわゆる健康食品」である。
このうち①と②は健康効果を表示できるが、③はできないことになっている(だから「いわゆる健康食品」は健康によさそうなイメージで宣伝している)。

これに機能性表示食品が加わったわけだが、この新参者が急増しているのは事業者にとってメリットが大きいからだ。まず、トクホが許可を得るまでに2~3年の期間と億単位の費用がかかるのに対し、機能性表示食品は効果や安全性を企業の責任で判断し、消費者庁に届け出るだけでよい。届け出の記載内容がガイドラインに違反していなければ消費者庁は受理し、受理されれば、届け出日の60日後から販売できる。消費者庁が調べるのは届け出内容がガイドラインに合っているかどうかだけだ。
しかも、表示できる内容がトクホでは「おなかの調子を整える」など約10の類型に限られていたが、機能性表示食品では、目やひざなど「体の部位」を挙げて消費者に訴えることができる。

 受理済みの商品をみると、種類は多様だ。サプリメント(錠剤・カプセル・粉末など医薬品と同じ形をしたもの)や飲料(ノンアルコールビールを含む)はもちろん、キャンデーや生菓子もある。生鮮食品も2商品が受理されている。
消費者に訴える効能・効果も多様で、「脂肪の吸収を抑える」といった定番だけでなく、「目のピントを合わせる」「睡眠の質の向上」「便秘気味な女性に」「体温維持機能」「記憶力を維持する機能」まで認められている。

◆健康増進効果はきわめて小さい
しかし、これらの商品には問題が多い。第一の問題点は、効果(機能性)がほとんどなく、あってもごく小さいことだ。
機能性表示食品で機能性を表示するには①ヒトを対象にした試験をするか、②査読済みの論文を公正に評価する(システマテック・レビュー)か、どちらかの方法で科学的根拠を示すことが必要だ。
その場合、特定の成分を摂取したグループ(実験群)と摂取しないグループ(対照群=プラセボ群)を比較し、ある測定項目の値で「統計的に」有意な差が出れば科学的根拠ありとされるのだが、その統計的優位さが「実用的に」意味を持つかどうかはほとんど考慮されない。

キリングループの「パーフェクトフリー」(ノンアルコール飲料)など多くの機能性表示食品に使われている「難消化性デキストリン」(以下「難デキ」)の場合で説明しよう。この物質の試験は、被験者10人ずつに1日55gの脂質(日本人の1日平均摂取量に相当)を摂取してもらい、大便の中の脂質量を測る方法で行われた。その結果、難デキを15g摂取したグループの脂質排出量は、摂取しなかったグループより0・67g多く、優位差が認められたという。
しかし、パーフェクトフリーに含まれている難デキは5gだから、脂質排出量の差はわずか0。22gしかない。誤差の範囲ともいえる、たったこれだけの改善でも「脂肪の吸収を抑える」と宣伝しているのだ。

◆「可能性が示唆」されただけでも
もう一つ例を挙げよう。キューサイの「ひざサポートコラーゲン」は、コラーゲンペプチドという成分を含み、「ひざ関節の曲げ伸ばしを助ける機能がある」と表示・宣伝している。
根拠となった臨床試験は、ひざ関節痛に悩む40~78歳の男女39人を対象に実施され、15人にこのサプリを、14人に偽のサプリ(プラセボ)を16週間摂取してもらった。改善ぶりを専門医の診断と被験者へのアンケートで調べて点数化したところ、診断によるサプリ摂取群の「曲げ伸ばし」の点数が8週目以降に改善が見られたという(ただし、プラセボ摂取群との間に有意差はなかった)。

これらの結果から、論文は「ひざ関節の痛みを緩和し、ひざの屈曲角度を改善する可能性が示唆された」と結論づけている。可能性が示唆されただけなのだが、「助ける機能がある」とし表示されている。
科学的根拠といってもこの程度のものだ(この点はトクホも同程度)。しかも機能性表示食品では質の悪い研究論文が多いと何人もの専門家が指摘している。

◆安全性審査はトクホ以下
機能性表示食品の第二の問題は、安全性確認の不十分さにある。安全性は①十分な「食経験」があるか、②ヒトを対象にした臨床試験で確認されたか、で判断されるのだが、②の限界を示したのがリコムの「蹴脂粒」(しゅうしりゅう)だ。
この商品は同社が臨床試験で安全性を確認したとして昨年4月に受理されたが、同社が同じ抽出物を同量含有した飲料「蹴脂茶」をトクホに申請していたため、食品安全委員会が審査し、7月に「安全性を評価できない」と答申した。

食品安全委員会は企業が説明する作用機序(関与成分が効果を発揮するメカニズム)を前提にすると、脂肪を減らす効果以外に心血管系・泌尿器系など他の臓器に悪影響を及ぼすことは否定できないと判断したのだ。
これに対して消費者庁は8月末、坂東久美子長官が記者会見で「受理を撤回しない」と発表した。その理由として消費者庁は、安全性を明確に否定する試験結果や過去に事故情報がないことなどを挙げた。つまり、食品安全委員会が安全を確認できないような商品でも機能性表示食品としては認められるわけで、機能性表示食品の安全性がトクホより低いレベルであることを示している。

食経験についても、多くの事業者が、ほぼ同じ成分の自社製サプリの販売実績を申請サプリの安全性の根拠にしている(中には、1年にも満たない販売実績しかないサプリもある)。しかし、サプリの販売実績が「十分な食経験」といえるのだろうか。そもそも食経験で明らかになるのは急性毒性だけで、慢性毒性は分かりにくく、発がん性・遺伝毒性となるとまず分からないのが実態である。

◆品質は保証されていない
 機能性表示食品の第3の問題点は、商品が表示通りの成分を含んでいるかどうか不明なこと、つまり品質が保証されていないことだ。健康食品は医薬品のように厳密な製造工程でつくられるわけではないので、表示成分が含まれていないケースや、逆に表示されていない成分が含まれているケースが珍しくない。
 また崩壊性に問題があるサプリなども少なくない。サプリなどは摂取後、一定の時間内に崩壊し、成分が胃や腸から吸収されてはじめて効果を発揮するわけだが、ほとんど崩壊せず、体の中を通りぬけていくだけという商品さえある。

品質保証についてトクホでは審査の過程で「このように製造すること」といった。注文がつくようだが、機能性表示食品では事業者が品質保証の方法などを届け出るだけだ。しかも成分の分析方法が公開されていないため、専門家が表示通りかどうか確認するための追試ができないという。

◆米国では悪質サプリが野放し状態
以上のように、効果にも安全性にも品質保証の点でも問題だらけの機能性表示食品が次々に受理されているのはなぜだろうか。制度が安倍内閣の成長戦略の一つとして、企業の負担軽減を目的に作られているからだ。消費者庁のガイドラインも一見厳しいように見えるが、抜け穴だらけである。
 すべてを企業任せにすれば、どんな結果が待っているか。安倍政権がモデルにした米国では、悪質なサプリが野放し状態になっている。

たとえば、ニューヨーク州司法長官の昨年2月の発表によると、市販されているハーブ・サプリをDNA検査したところ、79%はハーブ薬草を含んでいず、別の植物が含まれていた。逆に表示通りの植物のDNAが検出された商品は、わずか21%だった。
健康被害も後を絶たない。たとえば米国食品医薬品局(FDA)は昨年4月、筋肉増強のためのサプリ一商品について「深刻な肝障害を引き起こす恐れがある」とし、消費者に使用禁止を警告した。3人の消費者が被害を受けたため調査したところ、このサプリには重篤で不可逆的な多臓器障害をもたらすステロイドが含まれていることが判明したという。

13年には「ビタミンやミネラルのサプリのためにお金を無駄づかいするのはやめよう」というジョンズ・ホプキンス大学の研究者の論文が、米国内科学会誌に掲載され、大論争になった。この論文は信頼性の高い三つの研究報告を解析し、ビタミンやミネラルのサプリを毎日摂取しても病気を予防したり、進行を遅らせたりすることはできない、と結論づけている。

◆自衛手段は「買わないこと」
米国の惨状を日本で繰り返さないためには、どうしたらよいだろうか。まず新制度の運用を停止すること、同時に健康食品制度全体を抜本的に見直すことだ。

世界で健康食品の届け出制を採用しているのは米国と日本だけだ。いくつもの国・地域では国の関与を強めており、たとえば欧州連合(EU)では、次の3制度にしている。①一般に根拠があると認められた機能性を表示できる制度(ビタミンなど約230件を指定)、②病気リスクの低減効果と子どもの健康効果を表示できる制度(無糖チューインガムなど25件を認可)、③新たな研究データを基に企業が申請し、EUが審査する制度(100件近く申請されたが、認可はわずか数件)の三つである。
③の認可が数件にとどまっているのは、研究結果が実際にヒトの健康に役立つことを証明しているかなど、厳密な根拠を求めているからだ。参考にすべきは、こちらの制度だろう。

ただ、そのような制度改革が安倍内閣の下で急にできるとは考えにくい。そうであるなら、機能性表示食品は買わないことで自衛するしかあるまい。

◆詳しくは、岡田の書いた次の記事を参考にしてください。
「健康食品 七つの大罪」(『週刊金曜日』15年4月17日号)
「機能性表示食品は『トクホ二軍』」(同9月4日号)

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