2016.01.12 護憲派は改憲勢力の攻勢を阻止できるか
7月の参院選が決戦の場に

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 2016年が明けたが、本年は、これからの展開によっては日本にとって決定的な年になりそうである。改憲勢力が、来る7月に予定されている参院選で日本国憲法の改定発議に必要な議席を参院でも獲得しようと動き出したためだ。改憲勢力の最大の狙いが、これまで70年にわたって戦後の日本を支えてきた屋台骨である第9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)の改定にあるのは言うまでもない。どうやら、参院選の帰趨は、日本がこれまで通り「平和国家」としての道を歩むか、それとも文字通り「戦争ができる国」に転換するかの分岐点となりそうだが、護憲派は果たして改憲勢力の狙いを阻止できるだろうか。

  改憲発議可能な3分の2議席を狙う首相

日本国憲法第96条には「憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とある。
 衆院では、与党(自民党と公明党)がすでに3分の2以上を占めているが、参院(242議席)では135議席で、過半数を握っているものの、改憲発議に必要な3分の2以上(162議席)を下回っている。
 このため、改憲を悲願とする安倍首相は1月4日の年頭記者会見で「(憲法改正を)参院選でしっかり訴えていく。その中で国民的な議論を深めていきたい」と述べ、改憲を参院選の争点とし、民意を問う考えを明らかにした。
 さらに、安倍首相は1月10日のNHK日曜討論で、憲法改定に関連して「与党だけで3分の2の確保は大変難しい。自民党、公明党以外にも、おおさか維新の会もそうだが改憲に前向きな党もある。自公だけではなく改憲を考えている人たちと3分の2を構成していきたい」と述べ、憲法改定に積極的な政党で改憲発議に必要な3分の2の議席の確保を目指す考えを示した。
 今度の参院選の改選議席数は121。もし与党とおおさか維新などが86議席を獲得すれば非改選議席数と合わせて162議席となり、改憲発議が可能になる。

  野党統一候補擁立に動く護憲派

 これに対し、護憲派は参院選をどう闘おうとしているのか。
 国会外の護憲派は、おおまかに言って二つの活動を武器に参院選に立ち向かおうとしている。一つは、参院に向けて第9条擁護の世論を盛り上げることである。具体的には「戦争法の廃止を求める統一署名」だ。
 署名の宛先は衆参両院議長と内閣総理大臣。署名用紙には「2015年9月19日に参議院で“強行採決”され、“成立”した『平和安全保障関連法』は、憲法9条が禁じる国際紛争解決のための武力行使を可能とするもので、憲法違反であることは明らかです。したがって、『平和安全』の名にかかわらず、その内容はまぎれもなく戦争法です。また、憲法解釈を180度くつがえした閣議決定に基づいた違憲の立法は、内閣と国会による立憲主義の否定であり、断じて認めることはできません」とあり、「戦争法である『平和安全保障関連法』をすみやかに廃止してください」「立憲主義の原則を堅持し、憲法9条を守り、いかしてください」と求めている。
 署名を呼びかけているのは「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」。これには、平和団体、労働組合、学生団体、女性団体、学者の会、反原発団体、法律家団体、宗教者の会、医療・介護・福祉関係者の会など29団体が結集している。目標は2000万人。集約は4月25日。5月3日発表を予定している。

 もう一つは、参院選で改憲勢力を勝利させないために野党各党に統一候補の擁立を要請する活動だ。今度の参院選の選挙区は全部で45。うち32が1人区である。ここで野党各党がバラバラに候補を出せば共倒れ必至だ。だから、この際、野党各党が協力して統一候補を立ててほしい、というわけである。
 昨年の12月20日には、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、安全保障関連法に反対する学者の会、自由と民主主義のための学生緊急行動(SEALDs)、安保関連法に反対するママの会、立憲デモクラシーの会の有志が東京で「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」を結成し、安倍政権に対抗するため、参院選1人区で統一候補擁立を進めるよう野党各党に求めた。

 1月9日付の毎日新聞によると、32の1人区のうち、現在、13選挙区で共産党を含む共闘が本格化しているという。
最初にまとまったのが熊本で、昨年12月23日、安保関連法に反対する市民団体の要望を受けた民主、維新、共産、社民、新社会の野党5党が無所属で立候補する新人(女性弁護士)に一本化することで合意した。山形でも共産党を含む野党共闘がほぼ固まった。そのほか、岩手、秋田、宮城、福島、栃木、石川、岐阜、三重、鳥取・島根、徳島・高知の10選挙区で共産党も加わった野党共闘の動きが具体化しているという。沖縄では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対する無所属候補予定者を共産、社民両党などと保守系の地方議員らが支援する構図になっているという。

 ただ、同紙も指摘しているように、自民党が1人区で着々と候補者を決定しているのに対し、野党側は遅れ気味。それだけに、護憲派の中では「野党は早く統一候補を決めよ」という声が強くなりつつある。
1月4日には、東京・永田町の衆院第2議員会館前で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会の主催で、「戦争法廃止!安倍内閣退陣!1・4国会開会日総がかり行動」が行われ、労組員、市民ら3800人が集まったが、会場では、野党共闘を求めるブラカードやプレートが目立った。

議員会館前集会 008
衆院第2議員会館前を埋めた「総がかり行動」に参加した人々
(2016年1月4日)

議員会館前集会 011 (2)
総がかり行動に参加した人たちが掲げるブラカードには「野党共闘」を訴えるものも
(2016年1月4日)

   同日選挙になったらどうする

 さらに、9日には野党にとって衝撃的なニュースが流れた。自民党の二階総務会長が「安倍首相が同日選挙をしたいと思っているのは間違いない」と語ったというニュースである。つまり、首相は、今夏の参院選に合わせて衆院を解散し、衆院選挙と参院選挙を同じ日に実施しようとしている、というのだ。もし、そうなれば、野党は衆院選に全力を投入せねばならず、したがって、参院選での共闘は極めて難しくなる。内閣支持率の向上、そして参院での勝利、改憲のためなら何でもやる、というのが安倍首相の姿勢だ。とすると、参院での野党の勝利はなんとしても避けたい、改憲のために参院で三分の二の議席を占めたいと目論む首相は同日選挙に打って出るのではないか。そう思われてならない。
 護憲派にとっては、これから先、厳しい局面が予想される。これをどう打開するか。

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