2016.03.04  「バーニー・サンダースの善戦健闘」(2)
 ―「トランプ大統領」で大恐慌の再現か―

半澤健市 (元金融機関勤務)

《善戦健闘と予備選見通しの混沌》
 米大統領予備選で民主党バーニー・サンダースは善戦健闘している。
スーパーチューズデー(3月1日)に、マサチューセッツ州を落としたのは残念だが、出身地バーモントの圧勝は当然として、コロラド、オクラホマ、ミネソタと計四州で勝った。相手のヒラリー・クリントンには特別代議員なる味方が500人ほどいるから勝負はついている。しかし「政治的革命」を訴える「民主社会主義者」が、「まだ35州ある」といって戦いを続けているのは、やはり、善戦健闘と言うべきであろう。

米大統領予備選は予想外の混沌である。メディアの「専門家」も現状分析に成功していない。
見通しに関しても、公然と「分からない」といっている。東京の一市民は直感を述べるしかない。私の直感は「アメリカ帝国の崩壊」が遂に始まったというものだ。しかし「米国覇権」の終焉が「中国覇権」を保証するものではない。だから混沌なのである。

《米紙の「トランプ大統領」の大恐慌再現論》
 『ウォールストリート・ジャーナル』(2016年3月2日)に面白い社説を見つけた。
Making Depressions Great Againと題する。一言でいうと、トランプ、クリントンらの有力候補の多くが「自由貿易懐疑派」であり、特に「トランプ大統領」が現実となれば、「大恐慌」の再現だという内容である。
まず、世界貿易総額の伸びが世界GDP総額の伸びを引っ張ってきたのを数字で示している。そういう事実があるのに、トランプは日本、中国に対して45%の輸入関税を課せと主張し、TPPなどの貿易協定に反対しているという。社説は、貿易縮小が不況を招いた前例を述べる。H・フーバー米大統領の高関税法「1930年スムート・ホーリー法」である。『大不況下の世界・1929~1939』の著者C・キンドルバーガーは、これが近隣窮乏政策を誘導したうえ米国が自由貿易のリーダーたることを避けたのが、大恐慌の主因と考えている。その反省がブレトンウッズ体制を生んだ。ドルの打ち立てた世界の成立である。
しかしその後80年、米国内では自由貿易政策が自明なものでなくなった。最近では、ブッシュ、オバマ、ロムニーらの貿易黒字推進策がある。トランプは、貿易戦争を容認するどころか逆に提唱している。そうなれば「中国は未曾有の不況に突入する」、「貿易戦争は血みどろの戦いになるだろう」などといっている。社説は「トランプ候補は、2008年恐慌からの回復に苦闘しながらも新しい対策がなかなか奏功しない世界に、新たな危険をもたらすものである」と結ぶ。

《マイナス金利は「血の海」の予感か》
 私の意見によれば、この社説も「混沌」の所産である。諸言説のなかには、トランプもバカではないから政権を取れば、有能なブレインを集めてそれなりの政治を行うだろう、という言葉もある。しかし無能なブレインが結集する可能性もあるだろう。我々は安倍晋三という実例をもっているから、この話は信用できない。安倍晋三は国会で「誰が米大統領になっても日米同盟は強固で不変である」とロボットのような答弁をした。

トランプ大統領が実現して前述の政策が実行されたら日本経済は壊滅する。対米輸出が減るだけでは済まない。中国を血の海にするというのだから、本当に1929年以上の世界恐慌になるだろう。昨今の世界金融市場における不可解な現象は「血の海」を予言しているのかも知れない。(2016/03/03)
Comment
要を得た簡潔明瞭な解説、大いに納得。
則松久夫 (URL) 2016/03/04 Fri 08:29 [ Edit ]
ドナルド・トランプ氏の破竹の勢いに、いま恐慌をきたしているのは保守本流を自任するGOP,すなわち共和党である。これではまた政権が逃げていく。ところがそのGOPこそがトランプ氏の生みの親なのだ。GOPが事あるごとに繰り返す執拗な妨害工作は国民健保、財政審議、銃規制、グアンタナモの返還等々、どれをとっても歴史ある大政党の名を辱めるものであった。トランプ氏はその共和党イデオロギーの頂点に立とうとしている。「アメリカ帝国の崩壊」はいざ知らず、共和党の瓦解こそが目下の関心事であろう。かつて英国では保守、自由の2大政党時代があっという間に保守、労働の2大政党時代へと移行した歴史がある。
日本についても一言。原発事故に直面した民主党政権に対する谷垣自民党の協力ぶりはすさまじいものであった。
shoji oshima (URL) 2016/03/05 Sat 12:31 [ Edit ]
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