2016.04.01 エジプトでの人権NGOと活動家の弾圧に国連が深い憂慮を表明

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

人権擁護のための国連常設機関・国連人権高等弁務官事務所(OHCHR,ゼイド・フセイン高等弁務官、本部ジュネーブ)は24日、エジプト当局による数百の民間人権擁護団体の閉鎖と活動家への弾圧を非難し、「人権弾圧の犠牲者たちを擁護する声を窒息させる恐れがある」として「深い憂慮」を表明した。人権活動家のガマル・イード、ホッサム・バガット両氏が外国政府から資金を違法に受け取ったとして、エジプト当局が資産凍結命令を下した。両氏はそれを違法として取り消しを求めていたが、エジプトの裁判所はその訴えを却下したのだ。
イード氏は国際人権団体「人権情報のためのアラブ・ネットワーク」のリーダー。バガット氏はジャーナリストで「私的人権のためのエジプト・イニシアチブ」の前リーダー。
2013年のクーデター直後から、シーシ将軍の率いる軍事政権は、エジプトで活動する国際、国内人権団体の取り締まりを強化、まず同年内に裁判所が五つの国際非政府組織(NGO)の外国人とエジプト人スタッフ43人に、1年から5年の投獄刑(一部執行猶予)を宣告した。その時点で被告たちの大部分は国外に脱出していた。
 OHCHRによると、シーシ政権はムバラク独裁政権下の2002年団体規制法を根拠に、国内NGOの取り締まり、解体を開始。閉鎖、資産凍結、団体役員会の任命禁止、資金運用禁止、国際NGOとの連携申請の却下を広げた。また一部のNGOを、クーデターで打倒したモルシ大統領の出身母体であるムスリム同胞団との関係を理由に閉鎖した。最近になっても、執拗にNGO弾圧が続き、この3月のある1日だけで少なくとも20以上のNGOが全国で閉鎖された、とOHCHRは指摘する。
 英BBCに対してフセイン高等弁務官は次のように語っているー
「この事態は、エジプトの市民社会の一部閉鎖のように見える。止めなければならない。NGOは人権の侵害を記録し犠牲者を支える貴重な役割を果たしている。もし、このような事態が続けば、NGOは完全に活動できなくなる」
「エジプト当局は、合法的な人権擁護活動を目標にしたすべての弾圧を止めなければならない。とくに、国際的基準によって、いかなる罪をも犯していないことが明白な、ホッサム・バガット、ガマル・イード両氏に対する訴迫を終結しなければならない」
 国際アムネスティ、ヒューマン・ライト・ウオッチを含む14の国際人権団体も24日、エジプト当局による両氏への弾圧を非難した。
 
▽シーシを公式に受け入れた安倍政権
本欄では、シーシ将軍(国防相)によって率いられたエジプト軍のクーデター(2013年6月30日)で、選挙で選ばれたモルシ大統領の政権を打倒して以来、シーシ政権がムスリム同胞団へのすさまじい流血の弾圧を行うとともに、11年の「アラブの春」のを先導した世俗的な民主活動家たちの逮捕投獄の実情を伝えてきた。
また本欄では、シーシ将軍が、国内的・国際的認知を得るために行った14年6月の選挙で大勝して大統領に就任した後も、同胞団と世俗的民主活動家たちへの弾圧を続けている実情をまとめた(16年2月「1月25日革命から5年①②③」)。そして、安倍政権が、そのシーシ大統領の公式訪問を受け入れ、会談をし、最大540億円の円借款供与と外務・防衛当局間の対話を定期化することで合意したことは、シーシ政権の国際的認知を世界に示したと批判した(3月3日)。民主主義を掲げる国家で、どこの国がシーシの公式訪問を受け入れ、国際的認知をわざわざ示しているだろうか。外務省は少しでも抵抗したのだろうか。
シリアで、イラクで、リビアで、イエメンで殺戮と難民化がすさまじい中東で、国際社会はエジプトでの人権弾圧まで目を向ける余裕はないかもしれない。だが、エジプトは中東で最も影響力の大きい国であり続けできた。エジプトの人権問題はとても重要だと思う。目を離せない。人権のために戦う人々も、組織も、弾圧されても弾圧されても再生してくれると信じているからだ。

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