2016.04.02 名詞の分類
日本の英文法でいう「普通名詞」は具象名詞の概念に近い

松野町夫 (翻訳家)

英語の名詞の分類について、日本では一般に、可算(かさん)と不可算(ふかさん)に大別し、可算グループには普通名詞と集合名詞、不可算グループには固有名詞・物質名詞・抽象名詞とするのが標準である。日本の英文法では、名詞の種類は以下のように5種類となる。

■可算名詞(数えられる名詞 countable noun)
普通名詞 (common noun) → apple, bed, cat
集合名詞 (collective noun) → family, committee, team

■不可算名詞(数えられない名詞 uncountable noun)
固有名詞 (proper noun) → Japan, John, America
物質名詞 (material noun) → air, water, coffee
抽象名詞 (abstract noun) → peace, love, truth

この分類の長所は、可算名詞と不可算名詞の区別が明確に示されていることだ。問題点は、普通名詞の定義が漠然としていることである。たとえば、ロイヤル英文法改訂新版によると、「普通名詞とは一定の形や区切りを持つもの」で「普通名詞はすべて可算名詞」だという。

しかし英英辞典で「普通名詞」“common noun” を引くと、以下のように、「普通名詞はすべて可算名詞」ではないことが一目瞭然だ。もっと端的に言えば、普通名詞=非固有名詞。たとえば、

a word (such as “singer,” “ocean,” or “car”) that refers to a person, place, or thing but that is not the name of a particular person, place, or thing — compare PROPER NOUN [メリアム・ウェブスター英英辞典]

a word such as table, cat, or sea, that refers to an object or a thing but is not the name of a particular person, place or thing. [OALD7]

A common noun is a noun such as `tree', `water', or `beauty' that is not the name of one particular person or thing. Compare proper noun. [COBUILD English Dictionary]

any noun that is not the name of a particular person, place, or thing, for example "book" or "sugar" [LAAD2]

固有名詞は、人名、地名、社名、国名、天体名など、特定の人または事物の名称を表す名詞で、これ以外の名詞は英米ではすべて普通名詞となる。つまり、物質名詞や抽象名詞、集合名詞も、固有名詞ではないので普通名詞に属することになる。現に、普通名詞としてここに例示された単語には、ocean, water, beauty, sugar が含まれているが、これらは不可算名詞(=物質名詞・抽象名詞)である。

ケンブリッジ英文法では、以下のように、名詞を固有名詞と普通名詞に大別している。また、普通名詞としてここに例示された heat も不可算名詞(抽象名詞)。

Nouns can be divided into proper nouns and common nouns. Proper nouns give names to people and things (Tony Blair, Greece, Oxfam). Nouns which are not proper nouns are common nouns (table, boy, heat). [CGE (Cambridge Grammar of English)]

筆者訳: 名詞は固有名詞と普通名詞に分類できる。固有名詞は人やものの名称(トニー・ブレア、ギリシア、オックスファム)を示す。固有名詞でない名詞は普通名詞(テーブル、少年、熱)である。

ちなみに、ケンブリッジ英文法では名詞を(普通・固有・具象・抽象)の4種類に分類している Noun (proper, common, concrete, abstract)。普通と固有、具象と抽象はそれぞれ対立した概念である。具象名詞(concrete noun)という用語は日本ではなじみが薄いが、意味は以下の通り:

concrete noun:
a noun that refers to an object that you can see or touch, not to an idea or feeling [MED2]
筆者訳: 具象名詞とは、概念や感情ではなく、見たり触ったりできるものを示す名詞。

抽象名詞が具体的な形を持たない抽象的な概念を示すのに対して、具象名詞は「一定の形や区切りを持ち、見たり触ったりできるもの」を示す。日本の英文法でいう「普通名詞」は具象名詞の概念に近い。「普通名詞」=具象名詞。

以下に、A. 名詞の分類(日本標準)と B. 名詞の分類(草案)を図示する。B案は私案なので認知されているわけではないが、こちらの方が少なくとも英米人には説得力があると思う。

名詞分類

『ニューヨークタイムズ』ニュース速報(March 27, 2016)の見出しを以下に示す。
At least 40 people, including children, were killed at a park in Pakistan by an apparent suicide blast, officials said.

ここから名詞を取り出すと、people, children, park, Pakistan, suicide, blast, officials となり、固有名詞は Pakistan のみ、それ以外はすべて普通名詞となる。

この普通名詞をさらに詳しく分類すると、
集合名詞: people (「人々」の意味では集合名詞。ただし「国民」の意味では具象名詞)
具象名詞: children(child の複数形), park, blast, officials
抽象名詞: suicide (ただし、ここではsuicide を形容詞とみることもできる)

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