2016.04.27 民進党京都府連の「野党非共闘」路線は有権者7割の棄権を招いた、戦後最低投票率となった衆院京都3区補欠選挙で何が起こっていたのか
~関西から(185)~

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

関東の方々にはなかなか理解しにくいだろうが、北海道5区と並行して行われた京都3区の衆院補選は、権謀術数の渦巻く京都らしく複雑怪奇を究めた選挙戦だった。なにしろ政権与党の自民党が前議員の不倫辞職で候補擁立を断念せざるを得なくなり、その「空き巣」を狙った諸政党が乱立立候補したからだ。

民進党とて例外ではない。民進党は「空き巣」となった自民票を取り込むため、「党派を超えた支持」を得るための選挙方針を決定した。それが「共産党とはいずれの選挙においても共闘しない」という「野党非共闘」路線の党大会決議であり、自民票狙いの選挙戦術だったのである。具体的には比例区前職議員が自民票を取り込むことによってまず小選挙区での議席を獲得し、その後釜として比例区の繰り上げ当選でもう1人の民進党議員を確保するという「一挙両得作戦」である。だから選挙演説では、「平和を守る」「立憲主義を守る」「生活を守る」といった一般的なスローガンは並べるが、安倍政権に対する具体的な政策批判はほとんど口にしない。ただ地元のために働いてきた、これからも働かせてほしいとの一点張りだ。これなら自民支持層を刺激することなく「党派を超えた支持」を得られると睨んでのことだろう。

 「空き巣」狙いという点では、京都のお隣の「おおさか維新」も負けてはいない。おおさか維新の馬場幹事長は、自民不在の選挙戦を「戦いやすい」と歓迎し、「大阪でもそうだが、保守の支持層が維新を応援してくれている」と選挙前は大層な自信をのぞかせていた。日本のこころも「親自民」を自認し、中野正志幹事長は「保守政党であることを理解してもらえれば、十分に自民票を取り込める」とみていたのである(京都新聞2016年3月14日)。両党にとっては政党結成後に迎える初の国政選挙だということもあって、「空き巣」となった京都で初陣を飾り、国政進出の足掛かりを得ようと考えていたのである。

 ところが、この候補者たちのレベルが恐ろしく低かった。おおさか維新の落下傘候補などは、まるで京都をリストラするのが目的であるかのような演説で、外の言葉は知らないのか、どこに行っても「身を切る改革で京都を変える」一点張りだった。こんな選挙風景を見て、多くの有権者が心底幻滅を感じたのだろう。私の周辺でも「見るも恥ずかしい選挙」「見るに堪えない選挙」と嘆く声が多く、選挙そのものに対する関心が投票前から急速に薄れていった。24日の投票日当日、いつもは投票に行く近所の小学校の前を通りかかったときのことだ。駐車場代わりに開放されている校庭にはほとんど自動車の影はなく、校門をくぐる人影もまばらだった。国政選挙にふさわしい候補者が互いに切磋琢磨してこそ選挙戦は盛り上がるのだが、こんな選挙戦ではまるで話にならない。こうした「烏合の衆」ともいうべき泡沫候補に近い候補者の乱立が有権者の離反に一層の拍車を掛けたのである。

 衆院京都3区補選の投開票前日、4月23日付の京都新聞は「投票率、過去最低予想も 衆院京都3区補選」と伝えた。2014年12月の前回衆院選に比べて、今回補選の期日前投票が大きく落ち込んでいるというのである。実際、告示日翌日の4月13日から始まった期日前投票(累計)は、初日から4日目までは前回衆院選よりも上回っていたが、5日目からは下回り、それ以降は回復することなく日を追って低下していった。その推移を追ってみると、期日前投票累計は前回比152%で好調にスタートしたが、その後は107%(16日)→86%(17日)→78%(18日)と日毎に低下し、20日以降は60%台に落ち込んで結局は61%(23日)で終わった。投票数合計は2万2089人、前回衆院選3万6276人の僅か6割である。

期日前投票の結果が必ずしもそのまま投票率に反映するというわけではないが、前回投票率49・2%の61%は30・0%になるので、今回は期日前投票のトレンドが投票日までそのまま続いたことになる。京都府選挙管理委員会が発表した投票率は30・1%で、前回衆院選の49・2%はもちろんのこと、戦後の衆院補選の過去最低投票率33・0%(1947年新潟1区)を下回る「戦後ワースト記録」となった。実に69年ぶりの記録更新であり、京都3区補選は衆院選挙史上その不名誉な名前を留めることになった。

各陣営が言うには、期日前投票が振るわないのは「不倫問題で議員が辞職するというスキャンダルを受けた補選で政治不信が広がった」(日本のこころ)、「京都で1番と2番の勢力を持つ自民と共産の候補者が出ていないことが最大の理由。巨人や阪神のいないプロ野球みたいで盛り上がらない」(おおさか維新)、「熊本地震による自粛ムード」(民進党)などそれぞれが勝手な理由を挙げているが(京都新聞、同上)、いずれも表面的なものばかりで本質を衝いていない。彼・彼女らが参入した補選そのものが有権者から拒否され、それが過去最低の低投票率を招いたことを自覚していないからだ。

私は1カ月余り前の拙ブログ(広原盛明のつれづれ日記、2016年3月17日)で「衆院京都3区補欠選挙は記録的な低投票率になるだろう」と予測した。しかしその時は、まさか7割もの大量の有権者が棄権するとは考えていなかった。それほど京都3区の有権者の多くが今回の補選には嫌気がさし、棄権することで抗議の意思をあらわそうという気になったのである。

選挙結果は、民進党前職・泉健太氏が6万5051票で当選し、おおさか維新・森氏は次点の2万710票、その他の候補はそれぞれ数千票程度(以下)だった。しかし泉氏の得票数は、自民、民主、共産、維新4党の有力候補が争った前回衆院選の5万4900票を僅か1万票余り上積みしただけで、自共不在の有力候補がいない烏合の衆相手の選挙としては余りにも「さびしい結果」だと言わなければならない。告示日前後の各紙の見出しは、「自共不在」「異例の構図」「6人乱立」「争点あいまい」「民意は反映できるか」「投票先ない」などというものだったが、そんな空気が選挙期間中においても払拭されず、そのまま投票日にまでずれ込んで「戦後最低」の投票率になったのである。

 投開票日翌日25日の各紙朝刊は、次のような見出しで京都3区補選の結果を伝えた。主な見出しを拾って紹介しよう。
「衆院京都3区補選 泉さん当選」「民進 熱なき初勝利」「自共不在、関心低く」(京都新聞)
「京都3区は民進 おおさか維新惨敗」「野党共闘 道半ば」「高まらぬ関心 民進浮かぬ顔」「『脱橋下』つまずく、おおさか維新」(朝日新聞)
「京都3区 民進・泉さんホッ」「『消去法』 有権者苦虫」「おおさか維新完敗、結成後初の国政選挙」(毎日新聞)

これらの見出しからわかることは、今回補選の特徴は、有権者の関心が著しく低かったこと、勝利した民進党が浮かぬ顔をしていること、おおさか維新が完敗したことの3点である。理由は明白だろう。自民党の不在に乗じて党利党略選挙に徹した民進党が、表向きは当選したものの「戦後最低」の投票率という形でお灸をすえられ、有権者の厳しい批判と審判を受けたのである。これは、民進党の将来にとって大きな禍根を残すことになったと言ってよく、これ以降の選挙においても京都民進党の「野党非共闘」路線は有権者から繰り返し批判されることになるだろう。

また、同じく自民党の不在に乗じて京都に進出しようとした「おおさか維新」も手痛い打撃を受けた。国政進出の初陣を京都で飾ろうとした彼らの野心は無残にも打ち砕かれ、そのイメージは地に堕ちたのである。「おおさか維新」は党名変更はもとより国政進出戦略を全面的に再検討しなければならなくなった。それほど参院選を直前にしての京都での惨敗は手痛く、全国的にも計り知れない打撃を「おおさか維新」に与えるものになったのである。

最後に「自主投票」で候補擁立を見送った共産党にとっても、今回の補選は無視することのできない影響を与えると思う。京都新聞の出口調査では、泉氏に投票した人のうち共産支持層が13・6%を占めていた(京都新聞4月25日)。6万5千票の13・6%だから、共産支持層の泉氏への投票数は約8千800票となる。しかし前回衆院選の共産得票数は2万6500票だから1万8千票近くが減ったことになり、共産支持層の3分の2が投票に行っていないことになる。おそらく共産党府委員会は、泉氏への投票数がもう少し多いと考えていたのであろうが、結果はその反対だった。つまり、同じ民進党でも京都のような民進党には投票しない、したくないと考える人たちが圧倒的に多いのである。

 衆院京都3区補選は低投票率との戦いだった。それは、大義のない選挙に対する有権者の反乱であり、批判の意思表示でもあった。大義を見失った選挙は有権者に見捨てられる。それは共産支持層といえども同じである。

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