2016.05.13  5年の内戦で激変したシリアと人々。取材し続けた英女性記者の目(下)

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 葬儀と集団虐殺
 その後、両側の戦いの優劣は動いた。誰もが犠牲を払った。
 2012年、ラタキアの丘陵地にあるアサド大統領の故郷のアラウイ派(坂井注:シーア派の一部)の本拠地では、すべての村で毎日、時には一日に3回も前線から戻ってきた若い兵士の棺が埋葬された。
 私たちの取材旅行の大部分を撮影してきた同僚フィル・グッドウインは、ある墓のそばにいた男性に、どうして、暖かい人間が真っ暗な闇に行くようになったのか、と訊いた。その男性は「我々すべての中に野蛮なけだものがいるからだ」と答え、ため息をついた。シリアでの最悪のことは、だれも想像できなかったことの中で最悪なことだ。
 2013年、ここから集団虐殺のニュースが拡がったハスウイア村で、恐怖の現場を探しだすため、ある集団住宅のドアを開けた。
 射殺され、燃やされた黒こげの死体が部屋に散乱し、廊下にまではみ出していた。オーブンの中には食べ物が残っていた。
 私たちを案内してきた政府軍の兵士たちは、アルヌスラ戦線(坂井注:アルカイダ系反政府イスラム過激派)の仕業だといったが、村人は、政府側の民兵が「命令なしにやった」とささやいた。
 シリアの戦争では、真実を見出すことが、平和を見出すことと同じように難しかった。
 そのころ、ほとんど毎週、集団虐殺があった。どの場合にも、実際に起こったことを知っている人がだれか残っていた。いつの日か、だれか数え上げるだろう。
 すべての武器が拡がり、だれもそれを使うのを惜しまなかった。集落は一掃され、化学兵器が使われ、子供たちまで拷問された。
 飢餓作戦
 この戦争で、最も強力な武器の一つは、最も単純なものー食料だ。
 すべての勢力が勝利を得るために、相手側の食料、水、医薬品を遮断した。
 2014年に、ヤルムークのパレスチナ難民キャンプ(坂井注:シリア内にある最大の難民キャンプ)が攻撃されていた最中に会った13歳のキファーは、勇ましい顔を見せようと努めていたが、涙を出さないのは長続きせず、「パンがないんだ」と泣き崩れた。
 国連の当局者は戦う双方に、小麦粉は爆弾製造に使われることはないと、必死に説得しなければならなかった。
 米国の高官の言葉によると、オバマ大統領はシリアへの軍事的関与の拡大に「病的なまでに反対した」
 米国の確固とした指導力がないまま、アラブ諸国とトルコは目的が違うさまざまなグループを支援した。それに比べ、アサド大統領には、ロシア、イラン、レバノンのヒズボラ(坂井注:強力なシーア派武装政治勢力)を含む忠実な支援者がいた。
 2013年、戦略的に重要なカセイルの町の攻防でシリア反政府勢力に勝利した直後、ヒズボラはシリアへの軍事介入とその誇りを隠そうとしなかった。そのレバノン人戦闘員に「戦闘はどれほど厳しかったのか」と訊くと、彼は苦笑いしながら「レモンを絞るようなものさ」と答えた。
 ダラアに戻る
 最初の決起から5年が過ぎた。ひ弱で、稀な停戦が実施された。ただそれは、外部のプレイヤーが、わずかな和平のチャンスを当事者たちに与えることを決めたからだった。この機会に、私たちはダラア市に戻った。歴史上何度も戦火に見舞われた農業地帯の都市が、この戦争でどのように傷ついたかを確かめるためだった。
 2011年の初めての決起は「南部戦線」の名で知られる反政府勢力の攻勢に引き継がれ、昨年夏には同戦線が市を支配した。
 私たちが2011年に初めて会ったとき、当時のアルハヌス市長は、ロケット弾で破壊された窓と床を指しながらいったー「我々はいくつか小さな過ちをしたかもしれません」「しかし彼らの偽の革命は我が国を破壊し分裂させたのです」と反政府勢力を厳しく非難した。
 そして今回、ダラアの反政府勢力だった女性教師ザハラに電話で話ができた。彼女は「多くが破壊されました。しかし、革命を避けることはできません」「一人の男が権力に居続けようとしているために、あまりにも多くの人々が失われました」と語った。
 挑戦と不信が消えることはない。
 シリアは全く違う国になってしまった。何百万人もの国民が国を去り、子供たちとともに新しい人生を始めようとしている。
 しかしシリアは、消えてはいないーまだ。
 政権と革命勢力の間のどこかで、古い国の生き残りたちとともに、新しいシリアが廃墟の中から立ち上がるかもしれない。ただし、この戦争が未来を奪うのを止めるとめることが、できるのであれば。
(了)
Comment
『民主主義のために』『文明破壊』を行った『西側アルカイダ支援諸国』。難民進駐軍にイギリスも征服されれば良い!
ローレライ (URL) 2016/05/13 Fri 06:31 [ Edit ]
管理人にだけ表示を許可する
 
TrackBack