2016.05.25 フルーツは可算か不可算か
可算や不可算という概念は英米人固有の文化的・心理的な要素に依存している

松野町夫 (翻訳家)

英語の名詞は、可算と不可算に分類できる。可算と不可算が区別できないと、和訳はともかく、英訳はできない。たとえば、フルーツは好きですか?と言いたい場合、フルーツが可算名詞(C)なら、Do you like fruits? だが、不可算名詞(U)なら Do you like fruit? とすべきで、表現が異なるからだ。

可算とか不可算とかいう概念は日本語に存在しない。日本だけでなく、中国や韓国、タイ、マレーシア、インドネシアなどにもない。固有名詞や普通名詞という概念は万国共通で普遍性があり、一度説明をきけば誰でも即座に理解できるが、可算や不可算という概念は、そのような普遍性はなく、論理というよりも、英米人固有のものの見方や言語習慣、つまり文化的、心理的な要素に依存しているので、英語を母語としない多くのアジア人にとっては、どうにも理解しがたい部分が残る。野菜(vegetable)は可算名詞(C)、フルーツ(fruit)はふつう不可算名詞(U)と説明されても、理屈としてなかなか納得できるものではない。

とくに不可算名詞が難解だ。不可算名詞は「形の一定していない大きなかたまり」で、数えることができない。以下の名詞はいずれも不可算名詞なので、原則として、複数にしたり、あるいは a や an をつけることはできない。

不可算名詞(形状から分類)
固体 (solid) : ice, butter, sugar, bread, wheat, rice, fruit, food, glass, soap
液体 (liquid) : water, milk, coffee, tea, wine, sake [sɑ́ːki], blood, ink
気体 (gas) : steam, air, oxygen, hydrogen, nitrogen, smoke, gas

不可算名詞(名詞の種類から分類)
固有名詞: John, Mary, Tokyo, London, Sony, Microsoft
抽象名詞: beauty, information, kindness, knowledge
物質名詞: water, butter, coffee, milk, wine, wood, glass, plastic, steel
一部の集合名詞: baggage, furniture, equipment, fruit, food

フルーツ(果物)はふつう不可算名詞(U)として単数形で集合的に用いる。これが原則。

Do you like fruit? フルーツは好きですか?
Let’s eat fruit after dinner. 夕食の後、フルーツを食べましょう。
She bought several kinds of fruit. 彼女はいろいろな果物を買った。
I bought some fruit at a supermarket. スーパーでいろいろな果物を買った。
That kind of fruit is in season now. その種の果物は今が旬だ。
That kind of fruit is out of season now. その種の果物は今は時季はずれだ。
Forbidden fruit is sweetest. ⦅ことわざ⦆ 禁断の木の実は甘い。(エデンの園のリンゴ)
Try to eat at least one piece of fruit a day.
一日に少なくとも1個のフルーツを食べるようにしなさい。
Fresh fruit and vegetables provide fiber and vitamins.
新鮮なフルーツや野菜には繊維やビタミンが含まれている。

しかし、原則に例外はつきもの。フルーツの種類をいうときは、可算名詞(C)として単数形や複数形で用いることもできる。ちなみに、fruit の複数形は fruit or fruits。イギリス英語では果物の意味の fruit は単複同形。また、fruit は集合名詞でもあるので、以下の例文中の fruits はほぼすべて fruit に置き換えることが可能。つまり、フルーツを英訳する際に fruit か fruits か、どちらにすべきかよくわからない場合、これを解決する唯一の便法は、fruit を選択することである。

fruits in season 季節の果物
The apple is a fruit which ripens in the fall. リンゴは秋に熟す果物だ。
Apples and oranges are fruits. リンゴとオレンジは果物だ。(アメリカ英語)
= Apples and oranges are fruit. リンゴとオレンジは果物だ。(イギリス英語)
Peaches are my favorite fruit. モモは私の大好きな果物だ。(イギリス英語)
What fruits are in season now? = What kinds of fruit are in season now?
今はどんな果物が食べごろですか?
tropical fruits, such as bananas and pineapples 
バナナやパイナップルのようなトロピカル・フルーツ
The doctor said I should eat more fruits and vegetables.
フルーツや野菜をもっと食べるようにと、医者に言われた。
Jack grows a variety of fruits and vegetables in the garden.
ジャックはガーデンで、さまざまな種類のフルーツや野菜を栽培している。

興味深いことに、アメリカ系の辞典、たとえば、メリアム・ウェブスター英英辞典はfruit の複数形として fruits のみを、ランダムハウス英語辞典では (pl. fruits, ⦅特に集合的⦆ fruit) と両方を記載しているが、イギリス系の辞典、たとえばマクミラン英英辞典やLAAD2英英辞典では fruit or fruits と両方を記載している。さらにまた、イギリス系のコウビルド英英辞典にいたっては、The plural form is usually fruit, but can also be fruits.(筆者訳: 複数形は通常 fruit だが、fruits も可)と、わざわざ説明している。要するに果実としての fruit の複数形について、アメリカ人が fruits と考えるのに対して、イギリス人は fruit と単複同形としてみているのだ。

不可算名詞の中にはフルーツのように、通常は不可算名詞 [U] だが、その種類や特定の量について話すときは可算名詞 [C] として複数にしたり、あるいは a や an をつけることのできる名詞 [U,C] が非常に多い。イギリス人はこのような名詞をとくに mass noun [mǽs nàun] (マスナウン、質量名詞)と呼ぶ。つまりマスナウンは狭義には、可算・不可算両用の「二元性名詞」を指す。ただし広義には不可算名詞を意味する。質量名詞=不可算名詞。 mass noun = uncountable noun.  日本では可算名詞 [C] と不可算名詞 [U] を対比するが、英米では count と mass (or noncount) を対比する場合が多い。

いずれにしろ、フルーツは不可算名詞(U)で、野菜は可算名詞(C)なので
フルーツは好きですか? Do you like fruit?
野菜は好きですか? Do you like vegetables? が正解。

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