2016.06.10  安倍政権の憲法改悪計画こそ最大の争点
  ―戦後最重要な参院選だ

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

7月の参議院選挙への戦いが始まった。安倍政権、自民党による憲法改悪計画を挫折させるか、それとも発議させ、国民投票を実現させるかの可否を決める、戦後日本で最も重要な参院選挙だと思う。国民の過半数が、憲法を変えることは「必要がない」としている現実をみて、安倍首相は3日に始めた参院選向けの街頭演説で、憲法「改正」問題を最後に回したが、この選挙が、憲法「改正」計画の、生死を決めかねないことを知りぬいているはずだ。安倍流の事実上の争点隠し戦術だ。もし、自民・公明その他の改憲勢力で参院の3分の2以上を獲得でれば、すぐにでも改憲発議の実現に全力を挙げて急ぐに違いない。その手法は安保法制の強行で国民に見せつけた。
一方、民進、共産はじめ改憲反対勢力が参院の3分の1以上の議席を維持すれば、安倍政権による改憲は事実上、不可能になる。仮に安倍政権が3年後の参院選に臨めるとしても、民主党が大敗した3年前のような、自民党にとって絶好な政治条件は起こりそうもないからだ。
だから、今回の参院選挙は安倍政権と自民党による憲法改悪計画の生死を分ける、選挙になるだろう。
参議院議員定数は242議席。その半数の非改選121議席のうち自民、公明など改憲勢力は84。今回の選挙で78議席以上を獲得すれば計162議席となり、改憲発議に必要な定数の3分の2に達する。それ以下ならば、改憲発議は不可能となる。つまり今回の選挙の最大争点の改憲問題は、改憲勢力が78議席を獲得できるか、できないかが、勝敗の分岐点になるのだ。憲法改悪阻止に一致する民進、共産はじめ改憲阻止勢力が一人区で統一候補にまとまった結果、一人区での当選者を6年前より大幅に増やして、この選挙にかける安倍政権の野望をつぶす見通しが明るくなった。

安倍首相は伊勢志摩サミットで、世界経済危機説を煽り、”アベノミックス“で国家経済も国民生活も一向に改善しない言い訳とし、国民生活を圧迫する消費税増税を延期して、選挙向けの人気取りに役立てる口実を作った。安倍政権は、膨大な数の非正規雇用者の不安定な身分と低賃金を、実際にはほとんど改善しなかったのに、「一億総活躍社会」だとか「同一労働、同一賃金」など空虚な宣伝を繰り返してきた。そして、国民の過半数が「必要ない」と考えている「憲法改正」を選挙公約の最後に発言、まるで重要な争点ではないかのようにみせる争点隠しをしている。このような争点隠し、空虚な宣伝文句で国民に期待を持たせる言葉の詐術こそ、安倍首相の常套手法なのだ。

だが、この言葉の詐術で国民をだまし、参院選で改憲勢力が3分の2を獲得でき、憲法改悪に着手したら、どのように進めるのか。安倍首相は、自民党の改憲草案の重視を公言している。しかし、最重要攻撃目標である9条の改定からではなく、国民投票になった場合に賛成票を集めやすいとみなしている、緊急事態条項の新設から手を付ける考えを、自民党憲法改正推進本部事務局長の磯崎陽輔首相補佐は述べている(昨年3月22日)。緊急事態条項は、内閣が緊急とみなした事態には、現行法にはない法律を、合憲か違憲かを問わずに内閣が作成・施行できる憲法条項。ヒトラーのナチスが多用した、ユダヤ人をはじめ国民を残酷に抑圧した悪名高い条項だ。しかし、参院選で大勝した場合には、一気に自民党草案に基づく憲法全文案を急いで衆参両院で提案、3分の2以上の賛成で可決、国民投票に発議する可能性もある。性急な安保法制の国会議決と施行のやり方をみれば、それもありうる安倍政権だ。
自民党の憲法草案については、多くの優れた解説書、新聞の解説記事が豊富だから、今回の選挙期間に改めて読み直したい。とくに現行憲法との重要な相違は、前文、第9条の2(自衛軍)、第11条(基本的人権の享受)、第12条(国民の責務)、第14条(法の下の平等)、第17条(国等に対する賠償請求権)、第19条(思想及び良心の自由)、第26条(教育に関する権利及び義務等)、27条(勤労の権利および義務等)、28条(勤労者団結権等)などに顕著。
軍隊を持ち、世界どこにでも戦争に出動、国旗・国歌の尊重をはじめ国民の義務を政府から強制される国家。「国民は憲法が保障する権利と自由を濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益および公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」(第12条)と国民に押し付ける姿勢も自民党の憲法草案の特徴だ。
現行憲法をこのような憲法に変えようとする、自民党はじめ公明党その他の改憲勢力を参院選で勝たせるわけにはいかない。
新しく選挙権を得る18歳以上の若者たちは、そのことを、いちばん敏感に感じるはずだ。若者たちにできるだけ語りかけよう。
Comment
同じ次の参議院選挙についての考察ですが捉え方としてこちらの方がもうすこししまとも、説得力があるように感じられました。
http://blogos.com/article/178800/?p=1

、、ここでも述べられていますが大きな課題は、
”アベノミクスが争点となって、期待感を取り戻すための政策を各党が競い合うのだとすれば、とてもいい選挙になるはずです。もちろん、現実はそうはなっていません。以前から指摘しているように、野党には経済運営の全体性がないからです。国民には、安倍政権を信任するか、どのくらい懲らしめるかの選択肢しかありません。「そんな55年体制的なバカな話があるか」という怒りがこみ上げてきますが、それが現実です。日本の政党状況の現実を踏まえると、経済政策を争点にすることは構造上できないわけです。” にあるかと思います。

、、仮に野党勢力が衆参で過半数の議席をとったと仮定するとどうなりますか? 首相になれそうな人/したい人をあげられますか? 改憲もテーマですが 立候補者の資質にも目を向けるべきでは? 野党には日本の将来を託せるような人材はもはや少数もしくいなくなっているようにあります。
3分の2阻止だけしか主張できない政党、政治家や論者には日本の将来を託せそうにありません。

名無し (URL) 2016/06/10 Fri 08:46 [ Edit ]
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