2016.06.11  首相のウソは絶対にいけない
    一億総活躍プランにも選挙向けのウソ

早房長治 ((地球市民ジャーナリスト工房代表)

 参院選が事実上、スタートした。自民・公明の与党陣営と民進・共産を中心とする野党陣営が全国各地の遊説合戦で火花を散らしている。争点はアベノミクスの成否、安保法制の是非、TPPの評価、憲法改正問題など多岐にわたるが、今のところ中心的争点となっているのはアベノミクスの成否である。とりわけ問題となるのは、安倍晋三首相以下の政権幹部がその失敗を隠ぺいするために公然とウソをついていることである。

 首相は通常国会が閉幕した6月1日の記者会見で、消費税増税の再延期を宣言した。その理由として世界経済、とりわけ新興国経済の不安定性を挙げ、アベノミクスについては、雇用状況を大幅に改善しただけでなく、顕著な所得増加も実現した、と述べた。これは明らかなウソである。
 1990年代後半以降、実質賃金は減少を続け、その結果、最近2年間の家計消費もほとんど毎月、前年を下回っていることが総務省の調査で明らかになっている。雇用状況が改善されても、雇用が増えているのが女性と高齢者が中心で非正規労働が大部分であるため、賃金が物価上昇に追いつかないのである。
 
 首相はなぜ政府統計で明示されている事実を認めず、ウソをつくのであろうか。首相の過去の言動や、増税再延期宣言に先立つ伊勢志摩サミットにおける経過をたどってみると、「国民をごまかせるなら、首相がウソをついても構わない」という首相の考え方が浮かび上がってくる。
 安倍首相は伊勢志摩サミットで議長の地位を利用して、「世界経済は現在、リーマンショック前と非常によく似た危機状況にある」という共通認識をでっち上げようとした。これができれば「リーマンショック級の経済危機に陥らない限り、消費税を2017年4月に10%に必ず引き上げる」という公約破りを回避できるからである。しかし、この企みはメルケル・ドイツ首相ら多くの首脳の反対で潰えた。そこで首相は「ウソで国民をごまかす作戦」に切り替えたわけだ。

 安倍首相のウソといえば、多くの人の記憶に残っているのは、2020年のオリンピック開催地を決めるために13年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれた国際オリンピック委員会総会で、福島第一原発事故による影響を問われて、「状況は完全にコントロールされており、汚染水による影響は同原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」と断言したことである。この発言が真っ赤なウソであることはその後の状況をみれば、だれの目にも明らかだ。
 日本の政治家はよくウソをつく。ウソをつかない政治家を探すのが難しいといえるほどである。しかし、歴代首相で明らかなウソを何回もついた人はいない。政権幹部や閣僚のウソは首相が否定すれば白紙に戻すことが可能だが、首相のウソは否定できる人がいないからである。国民が「首相がウソをついている」と本気で考え出したら、政治は間違えなく混乱する。そのことを安倍首相は理解していないようである。

 安倍内閣は6月2日、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」と「一億総活躍プラン」を閣議決定したが、これにも明らかなウソがある。まず、財政健全化目標を堅持するというが、2020年にプライマリーバランスが黒字化する可能性はまったくない。保育士・介護士を確保するために賃金を引き上げる方針だが、そのための財源は不十分。「同一労働・同一賃金」を実現し、正規労働と非正規労働の賃金差を40%から20%に縮小するというが、実行するのは民間企業で、実現の保証は全然ない。給付型奨学金の実現もうたったが、具体策や財源は示していない。
 安倍政権は多くの国民から経済政策の方向転換や立憲主義への復帰を求められているが、それより前に、「ウソのない政治」を行う必要がある。
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