2016.06.23  イラクのIS壊滅への転機に
   ― 政府軍ファルージャを奪還(上)

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

イラク政府は先週、2014年1月からイスラム過激派IS(イスラム国)の支配下にあったイラク中部の重要都市ファルージャを「解放」したと発表した。市内の一部で、建物などの硬化陣地にこもったISの一部は抵抗をつづけているというが、時間の問題のようだ。政府側の攻撃には、精鋭のテロ対策部隊をはじめ政府軍、警察とシーア派の民兵部隊(人民動員軍)が加わった。
米軍中心の有志国連合が市内IS部隊を4日間に20波爆撃し、IS部隊のマーヘル・アルビラウィ司令官を殺害した。シーア派民兵部隊は昨年3月のテクリート奪回作戦と同様、市外にとどまり、スンニ派住民との摩擦や略奪を避けた。テクリート奪回作戦でも、今回のファルージャ奪回作戦でも、政府軍側は市全域をほぼ包囲し、数千人規模とみられていたIS部隊の脱出は困難だったが、政府軍側が拘束したIS兵士の人数も、死亡した人数も発表されてない。死者の埋葬などはどうしたのか、ほとんど報道されていない。どれほど過酷な戦闘だったのだろうか。
残る最大のIS支配都市は、14年6月にISが占領した北部のイラク第2の都市モスル(2015年国連推計人口169万人)。イラク政府は年内に奪還作戦を開始すると宣言している。ISは最近、イラク北部で、イラクでもシリアでもISと敵対している少数民族クルド人の町や村を攻撃する際、化学兵器を使いだし、住民とくに子供たちの犠牲が増えているという。おそらく猛毒マスタードを装填した砲弾で、シリア政府軍の隠匿兵器を奪った可能性もある。イラク人スンニ派主体の政府軍部隊に対して化学兵器を使うかどうかはわからないが、クルド人部隊やシーア派民兵部隊に使う可能性がある。モスルは最大で最後のIS支配都市。一般市民を「人間の盾」とすることを含め、ISはあらゆる手段を使ってモスルを死守しようとするだろう。モスルは大都市だ。ISが占領した際には、ISの旧イラク軍、バース党幹部出身者がモスル駐屯の政府軍幹部や宗教指導者、部族長ら市の有力者に事前工作をして、ほとんど無血占領した。今年末か来年初めに始まる政府軍のモスル奪還作戦を前に、現地の有力者たちが市民の生命を守るために、どのような役割を果たせるだろうか。(続)
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