2016.07.02 望みなきにしもあらず
護憲派は最後の決戦に全力を

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 7月10日の参院選まで10日を切ったが、新聞各社の世論調査によれば、改憲勢力が3分の2をうかがう情勢である。世論調査通りの選挙結果となれば、改憲に意欲を燃やす安倍首相はいよいよ衆参両院での憲法改定発議に乗り出すだろう。その後に来るのは国民投票だ。投票日までの限られた期間で、護憲派は改憲勢力の勢いを押し返すことができるかどうか。まさに、日本国憲法(平和憲法)を守り切れるがどうかの、天下分け目の決戦である。

 6月24日付の新聞各紙には、各社の世論調査に基づく参院選序盤情勢が載った。主見出しを見ると、朝日新聞は「改憲4党2/3うかがう」、毎日新聞は「改憲勢力2/3うかがう」、読売新聞は「与党 改選過半数の勢い」である。が、読売は記事の中で「参院選では、憲法改正に前向きな勢力が改正の国会発議に必要な参院の3分の2(162)に達するかどうかも焦点だが、自民、公明、おおさか維新、こころの4党で、必要な78議席をうかがう情勢となっている」と書いており、同紙の調査結果が、朝日・毎日と同じだったことが分かる。
 つまり、主要全国紙3社の世論調査結果は、参院選で改憲勢力が3分の2を獲得しそうであるとの予測で一致していた。

 これは、護憲派にとって衝撃的なニュースであったと思われる。私にとっても意外であった。なぜなら、1人区の全ての選挙区(32)で、民進、共産、社民、生活の野党4党と市民団体の共闘が成立し、統一候補がかなり善戦しているとの情報が伝わってきていたからだ。それで、私としては、ぎりぎりのところで野党4党の候補と野党4党をバックにした無所属候補が、改憲阻止に必要な3分の1を獲得するのでは、とみていたわけである。

 全国紙の記者をしていた経験からすると、全国紙による世論調査に基づく国政選挙の予測はよく当たる。1960年代には、予測が外れ、世論調査の結果と逆の選挙結果になることもあったが、最近では、そんなことはほとんどない。それだけに、私は今度も序盤の情勢がそのまま投票日まで続くのでは、との杞憂を抱かざるをえない。
 
 しかし、望みなきにしもあらず、である。各社の世論調査によれば、投票先を決めていない人がまだかなりいるからだ。朝日新聞は「投票行動を明らかにしていない人が選挙区で5割、比例区で4割おり、情勢が変わる可能性がある」と書き、毎日新聞も「投票先を決めていないと答えた人や無回答が選挙区で約4割に上り、投開票日までに情勢が変わる可能性がある」と書く。読売新聞は「投票態度を明らかにしていない有権者は選挙区選で約35%、比例選で約20%おり、情勢は終盤にかけて変化する可能性がある」としている。
 であれば、護憲派がこうした「まだ投票先を決めていない人たち」に死ぬ気の奮闘で働きかければ、序盤の情勢を変えることができるのではないか。

 そうした可能性を裏付けるデータがある。それは、今年に入ってから行われたいくつかの新聞社・テレビ局の憲法に関する世論調査結果で、それによると、国民の半数以上は改憲を望んでいないという事実だ。

 まず、朝日新聞の「憲法に関する全国世論調査」(3月16日~4月25日)の結果。「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか」との質問に対しては、「変える必要がない」55%、「変える必要がある」37%。「憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか」との質問に対しては、「変えないほうがよい」68%、「変えるほうがよい」27%。
 次は、日本経済新聞社とテレビ東京による世論調査(4月29日~5月1日、18歳以上が対象)で、憲法について「現在のままでよい」が50%。「改正すべきだ」が40%。
 さらに、読売新聞が行った「憲法に関する全国世論調査」(1月下旬~2月下旬)では、憲法を「改正しないほうがよい」は50%、「改正するほうがよい」は49%。
 
 加えて、興味深いデータがある。
 まず、朝日新聞が参院選序盤情勢調査と同時に実施した世論調査によると、安倍政権のもとで憲法改正を実現することへの賛否を尋ねたところ、賛成は31%で、反対の48%が上回ったという(6月24日付同紙朝刊)。
 また、毎日新聞は参院選の序盤情勢をさぐった世論調査で、参院選後、憲法改正の手続きを進めることへの賛否を聞いたところ、「反対」との回答が45%で、「賛成」の36%を上回ったという(6月24日付同紙朝刊)。
 
 要するに、国民は安倍政権下の改憲作業など望んでいないのだ。にもかかわらず、各紙の序盤情勢に関する世論調査で改憲勢力優勢の結果が出たのは、自民党が改憲を目指しながらも選挙戦でそれを明確に打ち出さず、むしろ「経済政策推進」を前面に押し出すという「争点隠し」に徹し、それが功を奏しつつあるからだろう。
 
 以上のような国民意識を踏まえた護憲派が、これから先「まだ投票先を決めていない人たち」に自民党の「争点隠し」の狙いを明らかにし、同時に護憲の必要性を強く訴えれば、この人たちを護憲派の方に引きつけることができるのではないか。
 おそらく、「まだ投票先を決めていない人たち」の多くは無党派の人たちと思われる。だから、これからは、とくに無党派層への働きかけに力を注ぐことが求められるというものだ。

 戦後71年。戦争か、平和か。今度の参院選は、文字通り今後の日本の命運を決める歴史的な決戦と言ってよい。それだけに、日本国憲法をこれからも堅持したいと願う者は、その願いを今度の参院選に反映させねば、と切に思う。
 個人でも選挙運動はできる。「 友人・知人に投票の依頼をする」「自分の家や店に来た人に投票の依頼をする」「電話で投票を依頼する」などだ。

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