2016.07.04 若者たちよ!平和と民主主義、自由と権利のために選挙に行こう!

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

 参議院選挙の投票日が近付いた。今度の参院選は、巨大な人数の人命が、日本でもアジア諸国でも犠牲になった太平洋戦争が終わり、戦後日本の今に至る平和と民主主義、自由と権利の土台となった新憲法を守れるかどうかの、最も重要な参院選挙だ。この、平和と民主主義、自由と権利の恩恵を最も受けるのは、君たち若者だ。だいぶ傷つけられているとはいえ、その、世界に誇れる日本人の宝物を守ってきた憲法を、安倍政権は憲法改悪(「改正」と称しているが)で大きく傷つけようとしているのだ。安倍首相は憲法改悪の内容について、再三にわたり「自民党員として」自民党の改正憲法草案を想定していることを明言している。
自民党の改正憲法草案は、現行憲法と対比させた分かりやすい解説が出版物やネットで、読めるので、未読の人はぜひ調べてほしい。重要な改悪条項はー
(1) 前文の冒頭。現行憲法が「日本国民は」で始まり、自民党草案は「日本国は」で始まることがすべてを示している。現憲法は近代立憲主義に基づき、国家権力を制限して人権を保障し、国民が国家に法を遵守させる基本法。一方、自民党草案は、「公益及び公の秩序」による人権制限を認め、「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚」することを要求。「ねばならない」「しなければならない」などと国民に求める義務を大幅に増やしている
(2) 日本の平和主義を世界に示した現憲法の第9条の2の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」を自民党草案では削除し、「自衛権の発動を妨げるものではない」とし、そして9条の2を5項目に増やして、「内閣総理大臣を最高司令官とする国防軍を保持する」とし、国内でも国外でも、地域的な制限なしに軍事力を行使できるようにしている。
(3) 現行憲法にはない「緊急事態の宣言」条項を自民党草案は第98条、99条で新設した。
武力攻撃、内乱などによる社会秩序の混乱、地震など自然災害などの事態で、閣議決定によって緊急事態を宣言できる。宣言の下で内閣は、国会の審議なしに法律と同一の効力を有する政令を制定することができる。宣言の下では、何人も、国その他の公の機関の指示に従わねばならない。「緊急事態の宣言は事前又は事後に国会の承認を得なければならない」という条項もあるが「事後}とはいつのことか。緊急事態を発動して、政府がやりたい放題の手法には、ナチスのヒトラーが最大限に利用し、国家権力を支配し、国会を無視し、戦争へ国民を総動員、ユダヤ人を集団虐殺までやった、歴史的教訓がある。
 
安倍政権は真意を隠そうとしているが、この選挙の最大の争点は、憲法改悪の賛否であることは、君たちをはじめ国民の多数が理解しているはずだ。
もし、この参院選で自民、公明など4党の改憲勢力が、非改選を含め3分の2に達すれば、安倍政権は3年後の参院選までに、できるだけ急いで憲法改正の発議を国会で可決して、国民投票にかけようとするだろう。国民投票では、賛成過半数で憲法改正が成立する。
 しかし、今回の選挙で、改憲4党が3分の2に達しなければ、改憲発議はできない。3年後の2019年参院選挙では、改憲4党が現有議席を確保するのはさらに難しい。3年前13年の参院選では、2012年に不評だった野田民主党政権が総辞職し、続く衆議院選挙で大敗、圧勝した自公両党がその勢いを維持していた。このため、自公は精一杯の議席を獲得できたのだが、2019年の参院選では、その再現はありえないだろう。
これまで、どの自民党政権も、憲法改正の国民投票発議を現実的には考えたことがなかったはずだ。衆参両院で発議可決に必要な3分の2を改憲勢力で占めることができなかったからだ。また、与党自民党内部にもリベラルな有力議員も少なくなく、戦後日本の復興の土台となった憲法の意義をそれなりに評価し、その改正を持ち出して国民を分断することを避けようとしたことも理由のひとつだった。
しかしいま、自民党内には、リベラル派、あるいはハト派の有力者はほとんどいない。自民党と政権を支配することに成功した安倍首相とその取り巻きたちは、国民の「知る権利」を制限する秘密保護法を強行成立させ、さらに、憲法学者の大多数が国法の土台である立憲主義に違反していると断じているにもかかわらず、安保諸法を強行成立,実施した。
それによって、これまで戦後のどの政権も憲法違反として否定あるいは避けてきた集団的自衛権を容認し、世界のどこででも同盟国アメリカの要請があれば、自衛隊が参加して戦闘に加わることを可能にした。
だが、安倍政権は有力憲法学者と国民各層から、立憲主義違反と断定されたことが、よほど応えたに違いない。憲法そのものを自民党の憲法改正草案に沿って変え、自衛隊を国防軍として強化、世界のどこででも、「国際的協調」の看板のもとで、戦争をできるようにしたいのだ。
戦後、新憲法のもとで、わたしたちが世界に誇ってきた平和国家日本をこれ以上壊してはならない。そのために、選挙に行こう!

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