2016.07.16 褒めているのか、くさしているのか
――八ヶ岳山麓から(191)――

阿部治平(もと高校教師)

中国の国家インターネット情報弁公室は、6月22日までに、ネットの書き込みが「有害情報」をまき散らしている、ネット空間の「浄化が必要だ」などとして、検閲や削除を強化する方針を打ち出した(共同・産経2016・6・23)。
国家の安全を危うくするとみられる情報を盛り込んだり、「社会主義制度」や「国家利益」を批判した書き込みの削除に力を入れるそうだから、これからは中国のネットで「社会主義制度批判」や「国益を損なう意見」を見ることはいままで以上に少なくなる。では「有害情報」を「浄化」したのち残るのは何か。その典型?をここにお目にかける。
拙訳ではなはだ失礼ですがご一読あれ。作者は聴風、「馮站長之家」ネットhttp://www.zdxb.zju.edu.cn/articleに掲載されたもの(2016・7・2)。
タイトルは「なんとすばらしき中国共産党の功績よ!」である。

きみ!!世界で一番すごい会社、もっとも多くの人の運命を変えることのできる会社、世界構造を変えることができる会社はどこか知っているかい?
アップルか、ボーイングか、トヨタか、パナソニックか、いやメルセデス・ベンツか、シーメンスか?……そうじゃないよ。
その会社は1921年7月1日、船の上ではじめて結成されたんだ。
事務室も営業許可も正式な職員労働者もいない。マルクスの営業計画書によって、ソ連の無償の投資を得たけど、何回も破産の危機に陥った。だけど、ついに(貴州省)遵義で天才的CEO を選び出した。これが会社を率いて1949年10月1日北京で上場を宣言したのだ。
その後、この会社は何回も構造改革をやって、いまや市価は10兆ドルを突破して世界第二位となり、労働者の数は8千万、世界第一になったんだぜ。13億人の生活と運命を変え、今まさに世界新秩序を樹立しようとする、そいつはいったい何者か。その名も高き中国共産党である。

1921年から2016年まで95年間共産党は何をやったか、何を改造したのか。はたまたどんな歴史を描いてきたのか、少し話してやろうか。
1840年以来、中華民族は絶えず列強の侵略をこうむってきた。「(1900年)八ヶ国連合軍が侵入するや、彼らは片っぱしから人を殺し、あらゆる悪事を働いた。殺人を楽しみ、民衆を刺殺し、生皮を剥ぎ、強姦をし、やりたい放題をやった……」
1931年九一八事変(柳条湖事件)以後、日本は全面的に中国を侵略し、南京大虐殺をやって30万の無辜の生命を奪った!!占領地域は日本兵の首切り競争、輪姦競争の場とされ、731部隊の恐怖の生体細菌実験、生体解剖をやられた。

1949年、毛沢東が天安門で「中国人民はここに立ち上がった」と叫んでから 、どの国家が敢えてわが国境を侵そうとしたか?どの国の軍隊が敢えて中国で焼き尽くし殺しつくし奪い尽くそうとしたか?
誰も何もできなかった。中国共産党は中華民族の屈辱の命運を変えたのだ!
あの建国式典のときはね、飛行機が決定的に不足していたんだよ。少しましなP-51ムスタング9機、小型爆撃機・輸送機・練習機など17機しかなかった。だがあのとき飛んだ飛行機は24機だった!なぜかわかるかね?周恩来の考えで同じ飛行機を2回飛ばしたからさ。
外国メディアが伝えるところによれば、2015年中国の戦闘機はすでに3000機、世界第二、実に200倍!しかも第一代・第二代の戦闘機だけじゃない、数多くの第三代も、無人機も、給油機なども持っている。中国共産党は実力で自国の空域を守っているのだ!

建国したばかりのとき、焼けこげた荒野のほか何にもなかった。 このときアメリカは17ヶ国をあつめて、断然朝鮮戦争を始めた。砲火はすぐにわが鴨緑江岸に達した。ところが人民義勇軍は旧式歩兵銃で、大量の飛行機と大砲を持った米軍を阻止したんだ。やがて停戦協定が調印されたが、すぐに原子爆弾が大問題になった。我々にはこれがなかったからね!!
国共内戦は終わった。国外の戦争も終わった。だが兵隊たちは父さん母さんに会うこともなく、まっすぐ大西北へ行った。国際的に有名な研究者は名前を隠してゴビ(砂漠)で数十年仕事をし、ついに原爆を爆発させることに成功した。ついで水爆にも成功し、わが中国は数少ない核保有国の仲間入りをしたのだ!中国共産党は祖国防衛能力をさらに強め、わが人民の守りはさらに強固になった!!

その昔、我々は日本の新幹線がうらやましかった。いま中国の高速鉄道は1万9千キロを越えて世界高速鉄道の60%以上。発展速度はさらに速く規模最大の国家になった。しかも、よその国に高速鉄道をつくってやろうというのだ!!

以前我々は釣魚島(尖閣諸島)に手も足も出なかった。いまや、漁業監視船が釣魚島海域を航行するのが日常あたりまえになった。かつて南シナ海のサンゴ礁に他国が人工島を建てたとき、抗議しかできなかった。いま、我々は数日で南シナ海最大の人工島を建設することができる。しかも世界中を驚かす速さで!
以前、我々は世界500の大会社をうらやんでいた。だがいま、世界500の大会社のうち100社は我国のもので、しかもその数は日本をはるかに越えて、アメリカに次ぐ世界第二位となった。
昔を思えば遅れたところはいくらでもあった。今を見れば誰もが高々とこの国を誇れるのだ!見よ、アジア投資銀行、一帯一路の構想、航空母艦、長征7号(最近打ち上げられた人工衛星)、最近の中露共同声明などを!
世界レベルにないものはどれだ?95年前に比べてどこかまずいところがあるか?
けれども、我々の党、我々の国家のすべてが完璧だとはいえない。依然問題はあれこれあるし、その挑戦を受けてもいる。だが、それがなんだというのだ。我祖国は依然国民を率いて困難を克服し、勇気を奮って前進し、国民の安全を図り、福祉を追求している。なっ、そうじゃないか?

というわけだから、ここでネット上に広く流れているひとくだりを紹介しよう。
――ああ、党の誕生日よ。ほんとにこの年月は容易ではなかった。国力をアメリカと比べ、福祉を北ヨーロッパと比べ、環境をカナダと比べ、製造業をドイツと比べ、さらに華為(インターネット・プロバイダー関連企業)をアップルと比べ、聯想(コンピューター関連企業、LENOVO)をIBMと比べ、長城(家電関連企業)をトヨタと比べ、C919をボーイングと比べたら?……いや、一国の製造業を全世界の最先端と比べてみてもしかたがない。だけど、どこの国が建国70年で、自分の力だけで中国の高みに達したというのか!
誰をほめようとも誰をくさそうとも思わない。ただ思うことはひとつだ。人に完全な人はいない、なにごとも完璧なものはない!国家も同じことだ。
良いことばがあるじゃないか。「中国の武器は遅れていても君を守る。外国の武器はよいものだとしても君をやっつける」と――
これ以上は言うまい。中共の誕生日おめでとう!
いまこそ党を、中国を、偉大な中国人民をほめたたえよ。

さて、この一文は、中国人が過去を振り返りあらためて現在を見たとき、一般に何を数えるかよく示している。だからこの著者は都市失業者でも、「城管(街頭警察)」に追われている行商人でも、農民工でも、学校へ行けない農村の子供でも、働けなくなった高齢の農民でも、もちろんゴミの山から宝を探すホームレスでもない、まさにインテリである。
著者はもの知りのようだが、見え透いたおべんちゃらの連続で、中国でもこの文章に「いやな感じ」を受けた人は少なくないだろう。
ところが、今どきのこの手の文章には「文化大革命の礼賛」が必ずあるものだが、ここにはそれがない。「大国崛起(興隆)」という経済・軍事の高度成長を誇るきまり文句もない。そのかわり、いささか場違いの習近平とプーチンの「中露共同声明」などがある。

中国では昔も今も、権力に対する批判を直接文字に書いたり口にしたりすればさしさわりが生まれる。魯迅が軍閥政治に鋭い批判を浴びせたのは、あの時期わずかながら言論の自由があり、北京と地方の権力の間にすきまがあったからだ。いま中共支配は隅々まで行き届いている。魯迅のようにやったらたちまち拘束されてしまう。
「なんとすばらしき中国共産党の功績よ!」のほめちぎりの裏には、なにか思うところが隠されてはいないか。読む人が読むと、ひねりにひねった中共上層部への嫌味、ほめ殺しの連続になっているのかもしれない。そうだとすると、書いたのはよほど知恵のある人物だ。
「なんと素晴らしき中国人民の批判精神よ!」

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