2016.07.27 安倍政権の支持率はなぜ高いのか(2)
―「ファシズムに回帰する日本」という米評論―

半澤健市 (元金融機関勤務)

 グローバリゼーション時代の今、「ヒト・モノ・カネ」は、国境を越えて世界を自由に飛び回っている。情報も当然そうである。人はそう考えている。しかし事実は違う。国境は、そんなに低くはないのだ。

《簇生する「日本会議」論考から一つ》
 「日本会議」報道に関しての一つの事例でそれを示そうと思う。
この数ヶ月、日本会議に関する書物の出版は雨後の筍のようである。
それらの書物を読み始めた。そこで驚いたのは「日本会議」のイデオロギーの極端な戦前回帰主義である。想定していなかったわけではない。しかし、戦後半世紀経って遊就館を見たとき以来の驚きである。
大東亜戦争の国定(こくてい)イデオロギーを文章化した『国体の本義』や『臣民の道』が、彼らの依拠するテキストである。会員の多くは「日本神話」を歴史的事実として確信しているらしい。私は以前に、三原じゅん子参院議員の「八紘一宇」論に、批判的な文章を書いた。それでも彼女の発言は、ネット右翼に支持された、少数派だと思っていた。
しかし、2016年7月10日参議院選挙番組で、三原はジャーナリスト池上彰の質問に答えて、神武天皇の実在を信じてもよいのではないかと答えている。三原は確信犯であり、しかも少数派ではないのだ。

2016年6月10日現在、安倍内閣の閣僚数は20名であるが、その中に「日本会議国会議員懇談会」会員が10名、「神道政治連盟国会議員懇談会」の会員が17名いる。「日本会議内閣」である。
「日本会議」会員の総数は、約38000人で、「日本会議国会議員懇談会」には、全ての国会議員の42%にあたる、約300人が党派を超えて、参加している(数字は山崎雅弘著『日本会議―戦前回帰への情念』、集英社新書、2016年7月刊、による)。

《天皇は短波放送を聴いているだろうか》
 山崎書によれば、安倍政権と日本会議の関係を大きく報道をしたのは、『東京新聞』(2014年7月14日)が、初めである。その後、『朝日新聞』、『神奈川新聞』などの日刊紙、一部の週刊誌が続いたが、「日本の大手メディアは事実上、安倍政権と日本会議との密接な関係についてほとんど報じてこなかったのです」と山崎はいう。
対照的に、海外の主要メディアは2012年12月の第二次安倍内閣誕生以来、国家主義的・軍国主義的な政権として批判的な報道を続けている。
山崎は次のように書いている。(■から■、同書58頁)

■第二次大戦中、昭和天皇は実際の戦況を知るために、外国の短波放送に耳を傾けていたといわれています。日本の新聞とラジオは軍の統制下にあり、軍人は天皇に対してすら、自分の所属組織(陸軍・海軍)に都合のいい情報しか伝えなかったからです。(略)現代に生きる日本人も、ある種の分野においてはすでに、正確な情報を得るためには「日本国内のメディア」よりも「外国のメディア」に頼らなくてはならない時代に入りつつあるのかも知りません。■

海外メディアは私も断続的には見てきた。しかし管見の限り、今まで安倍政治を「ファシズム」と書いたものはない。

《Japan Reverts to Fascism》
 ところが最近、ついに"「ファシズムに回帰する日本」Japan Reverts to Fascism”という文章が現れた。National Review という、1955年創刊の米国保守系雑誌の(2016年7月16日電子版)の論考である。要約すると次の通りである。

・参院選で改憲派が三分の二の議席を制した。
・自民党は、「押しつけられた憲法」は改訂すべきと改憲を重要課題の一つとしてきた。 現行憲法は西欧的な人権思想に拠っているのを改訂せよというのである。
・信じ難いこの「原理転換」は、安倍内閣閣僚の多くが「日本会議の国会議員メンバー」 であることから説明できる。
・日本会議は、「自虐史観」を排し、「大東亜戦争」の正当性、東京裁判の不当性を強調し、南京虐殺や慰安婦の存在を否定している。
・自民党の改憲草案は、天皇の元首化、国防軍への昇格、戦争放棄の廃止、表現の自由の 制限をうたっている。現に表現の自由は安倍による言論統制人事により進行中だ。この 5年で、日本の報道の自由度世界ランキングは、11位から72位まで転落した。
・日本人は、自分の手足を縛る政策が実現可能となるという不条理な選択をしたのである。
 自由世界第二位の経済大国であり、アジアにおける最重要の同盟国が、「ファシズム」 に回帰するのを、米国は黙視すべきでないだろう。

こんな具合である。我々は既に言論統制下にある。それは、統制と自粛の合作である。我々が、見たり、聞いたり、決めたりしていることは、国内政治というカベの中で行われているのである。

《不愉快ではあるが・・》
 戦争に明け暮れる「覇権国」から、しかも奇矯な人物が大統領候補となる「同盟国」から、説教されるのは不愉快である。いくらなんでも日本が、中国や北朝鮮のような不自由国家とは思わない。しかし、安倍政権の支持率がなぜ高いのかを問い続ける人間としては、さまざま見方と言説に目を通していきたいのである。(2016/07/22)

Comment
「ナショナルレビュー誌の原文」http://www.nationalreview.com/article/437950/japans-new-fascism

「内田樹氏による翻訳」http://blog.tatsuru.com/2016/07/18_0943.php

「半澤の〈八紘一宇〉論」http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-3120.html#comment
半澤健市 (URL) 2016/07/27 Wed 08:54 [ Edit ]
安倍政権の支持率はなぜ高いのか(1)
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-3638.html#comment
半澤健市 (URL) 2016/07/27 Wed 11:22 [ Edit ]
安倍政権の支持率なぜ高いかを分析することは、安倍政権の暴走を止める側の課題です。経済政策が、破綻しかけていても、憲法違反の声が強い安保法を強行採決しても、国民の権利を縛る改憲案がちらちら見えていても、それでも、支持率が下がらない。戦前に回帰したいとは思っていなくても、野党よりも自民党が、まだましだと国民の目には映っています。

安倍を支えるグループの巧妙なやり方とともに、国民の意識(職場にもある差別を肯定する意識、アジアに対する優越感、「失敗の本質」にあるような企業/組織トップの無責任な体質、政治や現実を避ける精神的弱さ)、野党の弱さ(国会議員であることに安住しているだけの人・組織もあるように思われる。)をも考える必要があると思っています。これからも半澤さんのブログを読ませていただきます。
haru-san (URL) 2016/07/27 Wed 17:03 [ Edit ]
筆者の主張「情報は国境を越えて世界を自由に飛び回っているとは言えない」、「我々は既に言論統制下にある」を裏付ける卑近な事実を、恥かしながら、ご披露させて頂きます。知識階級に所属していると自認している私が「日本会議」の存在を今回初めて知ったことです。私は現役を退き田舎に引き籠って20年近くになりますが、世の中の動きについては、毎日欠かさずアクセスしているインタネットとテレビの報道番組や教養番組で最新情報に精通しているとの自信を持っていました。今回知った「日本会議」に関しては、強く興味をそそられ、わざわざググって詳細を検索した程で、その主張には理解できる点が多いにも拘わらず、「日本会議」という言葉に無知であったこの事実こそ筆者が懸念されている「知らぬ間に日本会議が日本の政治に深く浸透している」事情を説明しているのではないでしょうか。
戸松孝夫 (URL) 2016/07/27 Wed 17:44 [ Edit ]
ナショナルレビュー興味がでてきて少し調べてみました。
http://www.nationalreview.com/
、、政治関連のジャーナリストの投稿サイトのようで(今、米国大統領選挙関連で賑わっていますね)
そのナショナルレビューの"論考”として紹介されたこの記事は米国(を代表する)メディアの社説というような位置づけでもなく、単にJOSH GELERNTERさんという米国在留の若いジャーナリスが寄稿した”コラム”であることが分かます。

また、JOSH GELERNTER いう人はそのNational ReviewのWeeklyコラミストとして今回の投稿とは別にその他、度々投稿しているようですが
http://www.nationalreview.com/author/josh-gelernter

今年に入ってからの約30件の投稿では 今回の記事を除いてすべて日本とは関連のない投稿ばかりで日本の事情や政治には詳しいようにはとても思えません。

それにも関わらずこのようなしっかりとした記事がかけているのは日本人が書いた記事の英訳版をもとに投稿しているように見受けられます。(代理投稿)
その日本人が誰かまではわかりませんが、もしそれが内田樹さんだとしたら、手の込んだ対米プロパガンダ、対日本政府プロパガンダの一環かもしれません。
、、いづれにしても
「同盟国」から、説教しているというものでもなく不愉快に思う必要もないようにあります。

半澤さんもその事が分かっていて今回のこの記事を投稿したのかどうかわかりませんが、単に海外のメディアがこういっているといって、それを鵜呑みや、我々は既に言論統制下にあるとかの 自論を展開するのはどうかと思います。

海外メディアも含めて沢山の情報を得ることはいいことかもしれませんが、偏った情報から自らを見失なってしまうことのないよう、くれぐれもご注意の程を!。
名無し (URL) 2016/07/28 Thu 05:20 [ Edit ]
■コメントを送信していただいた皆様へ
様々な角度からのご意見有り難く拝読しています。
あと数回書いて(必ずしも連続ではなく)、最終回に私の結論を示したいと考えています。
半澤健市 (URL) 2016/07/28 Thu 16:46 [ Edit ]
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