2016.11.01  「日本の常識は世界の非常識」―霍見芳浩ニューヨーク市立大学名誉教授
          韓国通信NO508

小原 紘 (個人新聞「韓国通信」発行人)

 10月27日、水道橋の「たんぽぽ舎」で霍見芳浩(つるみ・よしひろ)さんの講演を聞いた。霍見さんはアメリカ在住の研究者として日本を観察するレポートで知られる。アメリカの大統領選挙と安倍政権について語るという講演に期待した。

 <ブッシュ前大統領は失敗作>
 ニューヨーク市立大学はアメリカの大学の名門。彼が教えた生徒のなかにはブッシュ前大統領、トヨタ自動車の現社長などがいる。教え子のブッシュが大統領になるとは夢にも思わなかった。その不明を謝罪したいと語り会場を沸かせた。

この日の講演会は、反原発の市民運動の依頼に多忙な霍見氏が応じた小集会といってよい。アメリカ大統領選挙の話が中心となったが、話題は憲法問題、原発事故、司法問題など多岐にわたった。それは以下の講演会資料からも明らかだ。
 「元A級戦犯被害者被疑者の祖父を敬愛し、『戦前』を取り戻そうとする安倍晋三政権は“御用メディア”を使って人民を騙し、国政選挙に4連勝。自民総裁任期を延長し、壊憲を目論んでいる。経済政策に行き詰まり、福島原発「事件」を”アンダーコントロール”と云い張って原発再稼働を強行し、沖縄の民意を圧殺する現政権を放置できない。11月米大統領選挙(両候補ともTPP反対)で選ばれる次期大統領の新政権が日本に与える影響は?原発と人類は共存できるのか?『日本の常識は世界の非常識』『日本には住民はいても市民はいない』。この閉塞した社会をどうたて直すべきか」

<ヒラリー・クリントン候補の苦戦>
 差別主義者にして人格破綻者である共和党のトランプ候補の主な支持層は白人貧困層である。彼は共和党の中枢からも見放され、3回の討論でも明らかに劣勢であるにもかかわらず、州ごとの代議員総取り方式によって勝つ可能性が残されている。
ヒラリーが有能な政治家だと多くの人が認めるが、彼女ほど長期にわたって中傷され続けた政治家も珍しい。まるでメディアリンチである。
ウェルズリー大学の卒業生総代として行ったベトナム反戦スピーチで注目され、弁護士として子供の人権問題で活躍した。有能であるが故に批判する人も多い。しかし「トランプもヒラリー」も「どっちもどっちだ」という世論が作られているのは心配だ。接戦が予想されるが、トランプが大統領になったアメリカは想像に絶する。同時に行われる上院・下院選挙も民主党が勝たないとアメリカの民主主義は危険な状況になる。トランプ陣営はカルト集団化しており共和党は分裂の危機にある。ヒラリーと競ったサンダースはトランプ阻止のために奮闘している。

<安倍首相の評価>
一般のアメリカ市民は安倍首相のことはあまり知らない。しかし米国内のエスタブリッシュメントたちは平和憲法改憲の動きに危機感を募らせている。しかし国と国の関係では国益の擦り合わせが優先されるので、米国が改憲にどう関与するかはわからない。
 日本の憲法をアメリカによる「押し付け」という主張が聞かれるが、実態は日米合作、特に憲法9条は幣原首相の発案であることは間違いない。日本の憲法学者も市民ももっと勉強して欲しい。
アメリカの国民は最高裁判事の名前をよく知っている。大統領の権力と対等にわたりあえる力があるからだ。日本の最高裁が政府に従属しているのとは大違いだ。戦後の民主化は司法に手を付けなかった。悔やまれるが自分たちで改革するしかない。アメリカの民主主義にも問題はたくさんあるが、国民は政治に無関心ではない。議論で相手を打ち負かすディベイト(Debate)文化が民主主義を支えている。残念ながら日本にはない。

2時間の講演の前半はアメリカの大統領選挙の最新情報。残り時間が会場からの意見、質問に費やされたため話が分散。期待していた「新大統領が日本に与える影響」について掘り下げた話が聞けなかったのが残念。ニューヨーク在住。交友関係も広く、鋭い観察力が評価され、報道番組にも度々出演、週刊誌などでよく知られてきた霍見教授も81才である。老いてますます壮健。大切にしたい論客、研究者である。
講演後、「最近、先生の文章を読む機会が無いようですが…」と声をかけたら、「声がかからなくなりまして…」。当日、司会をしていた浅野健一氏が横から「干されているんです」と補足してくれた。

NHKからネットによるアンケートの依頼が来た。12月中旬に放送予定のNHKスペシャル「不寛容社会Ⅱ」の資料にするらしい。番組の趣旨は次のように説明されていた。
「弱い立場にある人たちへのバッシングの背景には何があるのでしょうか?社会の“寛容さ”を取り戻すには何が必要でしょうか?皆さんから寄せられたご意見や具体的な事例を踏まえ、考えていきます」。アンケートの項目は多く、弱者へのバッシングの原因、解決策を皆で考えようという真面目な内容だった。最後の設問に困った。弱者に対してバッシングする風潮の原因は何だと思うかと聞いてきた。以下私の回答である。「一言で説明することは難しいが、社会のリーダーたちが『云いたい放題』という風潮が原因かも知れない。そのリーダーの中にはNHK籾井会長も含む」と書いた。放送受信料の支払いをストップしている私にアンケートを求めてくるのは立派なものだが、さて採用されるかどうか楽しみだ。

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