2016.11.15  「正義は最後には勝利する」
          国連総会におけるキューバ外相の演説

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 国連総会は10月26日、キューバが提案した、1962年から続く米国の対キューバ経済封鎖の解除を求める決議案の採択を行ったが、賛成191、反対ゼロ、棄権2(米国とイスラエル)で採択された。国連総会では、同趣旨の決議案がこれまで毎年、24回にわたって採択されてきたが、反対ゼロになったのは初めてだった。これまで「反対」票を投じてきた米国とイスラエルが棄権に回ったからである。まさに画期的なことだったが、同総会で行われたブルーノ・ロドリゲス・キューバ外相の演説要旨が、11月4日、駐日キューバ大使館から発表された。

 同外相の演説内容は、今回の決議案採択をキューバ政府がどう受け止めたかを理解する上で一つの判断材料を与えてくれると考える。さらに、国際政治では、当事者をして「正義は勝利する」と言わしめるケースは稀である。加えて、この演説にはキューバ政府の内政、外交両面にわたる政策の基本が示されていると思われるので、外相の演説要旨を紹介したい。
 演説の要旨は次の通り。

・(キューバに対する経済)封鎖はその明らかな域外適用の性格により、国連に加盟する諸国にも直接的な害を及ぼしている。
・米国の孤独の票の訂正に24年かかった。それは米国政府の孤立と失敗の24年であり、我が国の国民の英雄的抵抗の68年であった。
・今、私は我が国の国民に、フィデルに、ラウルに、そしてこの栄えある長い闘いを受け継ぐ若者に思いをはせる。
・何故また国連総会にこの決議案を提出するのかと聞かれた。国連総会が世界の諸国民に送る強力な政治的倫理的メッセージを過小評価できないからだ。正義は最後には勝利する。

・米国の棄権票は、米国とキューバの今後の関係改善のうえで間違いなく前進の一歩となる。
・米国大統領と他の米国政府高官は、封鎖は時代遅れであり、米国の利益に役に立たず、失敗であり、無意味で非現実的、市民に負担を課し、キューバ国民に害を与え米国を孤立させるものであると述べている。
・封鎖を形成する法規や法律の大半はその効力を保っており、米国政府の機関によって今のこの瞬間まで厳密に適用されている。

・米国政府によってとられた行政上の方策は前向きの歩みであったことは認めるが、その効力と範囲は極めて限定的であった。米国大統領は未だ使っていない広範な行政上の権限を持ち、それによって封鎖の実施と人道主義的、経済的影響を実質的に変えることができるはずである。今回の投票の変化は、決断力をもってそれらの権限を活用することを意味するのであろうか。
・だから事実によって判断することが必要である。重要で具体的なことは、封鎖の解除であって、それが演説やメディア発表、さらにこの議場での代表団の投票よりも重要である。繰り返すが、事実から判断することが必要である。

・封鎖によって生まれた人的被害は計り知れない。その影響を受けないキューバの家族や部門は一つもない。医療、教育、食料、サービス、物価、給料、年金、すべてである。
・差別的で不利な条件の押し付けが封鎖の抑止効果と結びつき、食糧の輸入、および薬品、試験薬、医療機器部品などの米国市場からの輸入を制約している。
・2015年4月から2016年3月の期間、封鎖によってキューバが蒙った直接的な経済的な被害は時価で46億8000万ドルに上る。これは慎重かつ控え目に行った厳密な計算から出た数字である。
・ほぼ60年間の累積被害額は、金の下落を考慮すると、7536億8800万ドルになる。時価で計算すると、1250億ドル強となる。

・キューバ国内のことは主権にかかわることであり、唯一キューバ人だけの管轄である。
・キューバは真に独立した国である。それは自分自身によって独立を勝ち取り、いかなる犠牲とリスクを代えてもそれを守り抜いて来たし、これからも守り抜くからである。我が国の国民ははるか以前に自分の手によって権力を勝ち取り、日常的に主権的な権力である人民権力を行使していることを彼らは知らなければならない。唯一そのことがキューバ革命が存在し続け、その真実を守り続けていることの説明である。
・我々は自分達の歴史と文化を誇りに思う。それは最も価値ある宝である。そして、決して過去を忘れない。それが決して過去に戻ることのない方法だからである。我々はすでに将来の道を決めている。それが長く複雑な道であることを知っている。しかし、無邪気さによっても、誘惑によっても、過ちによっても、我々はその道からはずれることはない。それを我々に忘れさせることの出来る力は世界にない。
・我々は多くの夢を実現した。その夢は他の諸国民と共通のものもあった。我々にはこれから実現したい夢が沢山ある。しかし、それは我々自身のものである。我々の文化と歴史に関係ない夢は必要ない。

・封鎖の撤廃は米国との関係正常化を目指すための重要な要素である。封鎖撤廃が、今まで進めてきたことに意味をもたせ、深め、強化することになる。
・封鎖は不当であり、非人間的、非倫理的、不法である。即時に一方的に終了すべきである。
・今サマンサ・パワー米国大使が発表した投票の変更は将来的に有望なサインである。それが現実に反映されることを期待する。米国大統領には未だ活用していない多くの行政権限が残されていることは明確であり、知られている。今回の投票の変化は決断力を持ってそれを活用することを意味するのであろうか。

・我々はすでに自由であることを理解しなければならない。何故ならばまさに1959年にアメリカ帝国主義から解放されたからである。
                             ◇                             

  なお、演説中に出てくる「米国政府によってとられた行政上の方策」とは、米国とキューバが昨年7月に国交を回復した後、米国のオバマ政権が実施した経済封鎖の緩和措置を指すものと思われる。
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