2016.11.24   2016年、塩尻・旧牛舎へのクマ出没は?
林 秀剛(信州ツキノワグマ研究会)


(筆者紹介)久しぶりの林秀剛さんのツキノワグマ・リポートです。林さんは信州大学在職中から、ツキノワグマの生態調査、人間との共存、保護、被害軽減に取り組む「NPO法人信州ツキノワグマ研究会」の中心メンバーの一人です。本稿は同研究会発行の「信州ツキノワグマ通信70号」からの転載です。同号は16ページ、最新のツキノワグマ情報が満載です。(坂井)
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 2016年春は、前年のドングリ豊作を受け、冬眠明けの子グマ連れのクマの出没が多いのではないかとの予測から始まった。
 5月末から6月初旬に秋田県鹿角市の衝撃的な死亡事故が続発。それに呼応するかのように、旧牛舎周辺での出没騒動。人身事故が気がかりで、旧牛舎にセンサーカメラを設置し、撤退宣言をひるがえして、監視することに。
2016年、塩尻・旧牛舎へのクマ出没は?
写真 1. 作業者にこん棒やナタを装備

 6月3日カメラを設置。設置場所は、旧牛舎中央通路に2台、北側山林への獣道上に1台。旧牛舎は、奈良井川左岸の段丘上に位置し、南側奈良井川河畔には畑が、北側には山林が続く。(注;牛舎は2012年に経営は停止されたので、<旧牛舎>と表示する。)カメラ設置の際、畑に足跡が。住民のNさんに出会う。作業車には、武器満載の重武装。夕方のTVニュースでは、塩尻駅裏を走るクマの映像が。偶然の一致に驚く。6月6日、クマ研にTVクルーが取材に。
2016年、塩尻・旧牛舎へのクマ出没は?
写真 2. 6月25日撮影されたクマ(7月6日長野朝日放送)

 7月6日、TVでのクマ報道。檻の前に仕掛けたカメラに、6月25日撮影された大きなクマの映像。6月30日には、地元新聞が、“塩尻、熊の目撃相次ぐ洗馬地区猟友会おり設置”の記事。センサーカメラには、6月26日、7月1,3,13日に撮影されていた。
その後、しばらく、センサーカメラに映像が映らない日が続いたが、8月に入り、出没が頻繁となる。とはいえ、大量出没の2014年と比較すればけた違いではあるが(通信No.67参照)。
2016年、塩尻・旧牛舎へのクマ出没は?
写真 3. 北側山林の獣道に大きな個体が

 8月15日には、北側の山林入口の獣道のカメラに大きなクマが。数日後、Nさんの案内で、周辺を見て廻る。サクラにクマ棚が。サクラの実がいっぱいの糞を採取。周辺にはハチの巣の破片も。明らかに、夏期の餌事情が厳しいことを物語っている。しかし、この時期、周辺でのクマ目撃情報は、新聞などにはほとんどないことは興味深い。8月のセンサーカメラにクマが写った日は、8月3,5日、14,18,23,24日、それに、28,29,31日。
2016年、塩尻・旧牛舎へのクマ出没は?
写真 4. 8月31日。今年最後の出没

 8月末、31日でカメラに映るクマは終了した。Facebookに、31日にゲットした動画とともに、下記を投稿した。「9月26日、長野県は、ツキノワグマ出没予測を発表。ドングリ類の実りはまあまあであり、集落への大量出没の可能性は低いと。信州クマ研として、今年も出没状況をカメラでモニタリングしていますが、8月中はボチボチと顔を見せていましたが、8月31日を最後に、ピタリと。それ以後、9月27日までは、まったく姿を見せません。このところの偶数年に大量出没する、という伝説?は、今年はなかったようですね。とりあえず、よかった!」
 非常に特殊で、少数のデータであるが、周辺の目撃情報などとの対応は、よいように感じられる。日常的なモニタリングとして利用可能ではないか?
 (追記1)最近、北信地域では、出没情報が頻繁であり、人身事故も何件か発生している。県の予報でも、堅果類が凶作ないしは不作の地域もあるとのことなので、非常に特殊な“旧牛舎”でのモニタリングが、どれだけ一般性があるかは、検証の必要がある。
 (追記2)今年の秋は、柿が大豊作。2014年の大量出没の際、11月に入っても、柿の実を食べに来たクマが人身事故を起こしたことが思い出される。それと、8月末に写ったクマが痩せていること、サクラの木にクマ棚があったこと、などなど。少々気がかり。8月のクマが太っているはずはないので、心配はないとは思うけど・・・

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