2016.12.12  主権在民―韓国に学ぼう
伊藤力司 (ジャーナリスト)

10月末から6週間、毎週土曜日に韓国の首都ソウルで展開されたパク・クネ大統領の下野を要求する民衆の大デモは、ついに国会における大統領弾劾決議に結実した。1961年の軍事クーデターから4半世紀続いた軍事独裁政権を倒した1987年の民主化闘争の伝統は生きていた。民主国家における主権者は、国民大衆であることをこれほど如実に示した例は少ない。

われわれ日本人は不遜にも、無意識のうちに韓国より日本のほうが民主主義先進国のように思っていたような気がするが、とんでもない誤解である。ソウル市内を埋めた大群衆が示した民意によって国政が目に見える形で転換したありさまは、日本人にとってまさに模範とすべきである。

日本でも1960年の安保闘争では、大規模な民衆のデモが連日国会を包囲するという民衆の大闘争があった。安保闘争は結果として、岸内閣の退場と予定されていたアイゼンハワー米大統領の訪日を阻止したが、闘争の主題であった日米安保条約の破棄はかなわなかった。結果として日本本土の米軍基地を沖縄に移転させ、今日の沖縄の米軍基地過重負担を招く一因となった。

日本では岸内閣を引き継いだ池田内閣の所得倍増政策による高度経済成長の時代に入り、民衆の反権力闘争はベトナム反戦や学園民主化闘争に転換。そのうちに学生運動が極左化、大衆動員の運動より前衛分子の武闘路線に突き進み、一般国民の支持を失った。最終的には極左武闘路線の結末とも言うべき1972年の浅間山荘事件を経て、左翼大衆運動は完全に生命力を失った。

以後日本は80年代の円高バブル時代、90年代後半以降の長期デフレ時代を体験する過程で「一億総中流化時代」から「貧富の格差拡大時代」に転換しつつある。これに抵抗すべき労働運動は闘う「総評」から労使協調の「連合」に転換する中で民衆からの支援を失った。

かくて「戦後レジームの清算」を唱える安倍内閣が長期政権化する中で、宿願とする憲法9条改変を現実の政治日程に載せようとしている。今夏の参議院選挙を経て安倍内閣の改憲に同調する勢力は衆参両院で3分の2を超えた。

日本は今、安倍内閣の暴走により「主権在民」「基本的人権」「武力放棄」を保障した憲法に基づく平和・民主国家存立の危機を迎えている。われわれは今こそ、韓国民衆の「主権在民」の力に学ばなければならない。
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