2017.01.26 知覚動詞 その 2
知覚動詞は実際に「できた」ことを could で表現できる

松野町夫 (翻訳家)

知覚動詞は助動詞の canと相性がいい。感覚動詞(see, hear, feel, smell, taste)は特にそうだ。感覚動詞には can や could が頻繁に使われる。たとえば、

You can see Mt. Fuji from here. ここから富士山が見えます。
I could see Mt. Fuji from here yesterday. 昨日はここから富士山が見えました。
I could see she was upset. 彼女が狼狽しているのがわかった。

Can you hear me? No, I can't hear you. (電話で)聞こえますか? いいえ、聞こえません。
He could hear a dog barking. 犬がほえているのが聞こえた。
No one could hear what she said. 彼女が言ったことは誰にも聞こえなかった。

I can feel a stone in my shoe. 靴の中に石が入っているようだ。
She could not feel her legs. 彼女は両脚の感覚がなくなっていた。
He could feel her watching him. 彼は彼女が自分を見ているのを感じた。

You can smell cheese. チーズのにおいがするでしょう。
I can't smell anything. 何もにおわないよ。
I could smell alcohol on his breath. 彼の息はアルコールのにおいがした。

You can taste the garlic in this stew. このシチューはニンニクの味がします。
I can't taste anything with this cold. この風邪で、何の味もわかりません。
You could taste the fear in the room. あなたはその部屋で恐怖を味わった。

上記の例文で注目してほしいのは could(できた)である。とくに肯定文の could に注目してほしい。知覚動詞は、過去のある特定のときに実際に「できた」ことを could で表現できる。たとえば、
I could see Mt. Fuji from here yesterday. 昨日はここから富士山を見ることができた。
= I was able to see Mt. Fuji from here yesterday.

can と be able to
can や be able to は能力や可能性を表す。両者とも「できる」(~することができる)という意味。

彼女はフランス語を話すことができる(話せる)。
She can speak French.
= She is able to speak French.

しかし厳密に言うと、can と be able to は全く同じ意味ではない。一般に can は身に備わった能力を表し、be able to は一時的な能力を表す。感覚は身に備わった能力なので感覚動詞と can はとくに相性がいい。また、能力や可能性があるからといって、それを実行するとはかぎらない。 be able to はあることが実際にできるかできないかを問題にするが、can は気持ちのうえでできるかどうかを問題にする。いずれにしろ、現在形の can や be able to は日本語の「できる」と意味も用法もほぼ同じなので間違える人はまずいない。「できる」= can = be able to

しかし過去形のcould は、日本語の「できた」(~することができた)と意味も用法もかなり異なるので注意が必要だ。能力や可能性があったからといって、それを実行したとはかぎらない。日本語の「できた」は、能力や可能性があり、それを実行したことを意味し、 was [were] able to と同じ。 「できた」= was [were] able to

私たちは正午に出発できた。
We were able to leave at noon.(この意味ではWe could leave at noon. はダメ)

去年の夏、新しい友達を作ることができた。
I was able to make new friends last summer.(*I could make new friends ...はダメ)

肯定文の could は能力や可能性があること、または、あったことを述べているにすぎない。実行したかどうかはわからない。たとえば、

A: What time shall we start? 何時に出発しようか?
B: We could leave at noon. 正午に出発することもできるね。
(= We can leave at noon.)

この場合、could は過去形ではあるが、その意味は現在形の「できる」に近い。このように肯定文の could は日本語の「できた」とはかなり異なる。「できた」 ≠ could

しかし否定文の could not (= couldn’t) は能力や可能性がなかったわけだから、当然実行できなかったことになる。これは日本語の「できなかった」と同じ。 couldn’t = 「できなかった」。

We couldn't leave at noon. 正午に出発できなかった。 → 否定文
= We were not able to leave at noon.

では疑問文の could はどうだろうか?
Could you sleep well last night? ゆうべはよく眠れましたか?→ 疑問文
= Were you able to sleep well last night?
last night(ゆうべ)という語が過去を明示しているので、とくに問題はなさそうだ。

しかし、次の例文はどうだろうか?
Could you leave at noon? 正午に出発できましたか? → 疑問文
= Were you able to leave at noon?
Could you leave at noon? 正午に出発してくれませんか? → 依頼文
= Can you leave at noon?

この例文では、たまたま at noon が過去とも未来とも解釈できるので状況によっては「正午に出発できますか」とか「正午に出発してくれませんか」という依頼の意味に解釈されるおそれがある。誤解を避けるには、過去を明示するような語句、たとえば yesterday を末尾に追加するとか、could の代わりに were able to で表現したほうがいいと思う。

まとめ
could は can の過去形なので過去時制で使用できる。否定文や疑問文なら問題はない。しかし肯定文の could は仮定法で使うことも多く、とても紛らわしい。そこで「できた」と言いたいとき迷ったら、could ではなく、was [were] able to を使用するのが無難である。

肯定文の could が「できた」の意味で使用できる場合:

■感覚動詞と共に用いるとき
We could see the moon last night. ゆうべは月が出ていた(月を見ることができた)。
As soon as I walked into the room, I could smell gas.
部屋に入るやいなや、ガスくさいにおいを感じた(かぐことができた)。

■過去の事実・能力・可能性・傾向・許可などを表す場合
When he was young, he could run fast. 若い頃、彼は速く走ることができた。
She could be very rude at times. 彼女は時々とても無作法になることがあった。
We were totally free. We could do whatever we wanted.
私たちは完全に自由だった。やりたいことはなんでもできた。
The car cost more than I could afford, so I bought a cheaper model.
その車は私が工面できる金額を越えていたので、もっと安い型式を購入した。

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