2017.02.12  日米首脳会談、世界に見せた大統領と安倍首相との“いちゃつき”

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ大統領と安倍首相の日米首脳会談が終わった。会談は約1時間、半分は通訳が約30分だから、二人の実質的な会談は約30分。会談後、二人の記者会見とおそらく日本側の高官たちの説明によると、実質的な合意内容は(1)安全保障関係では、双方が同盟関係の強化に努力。尖閣諸島は安保条約第5条の適用範囲と確認。沖縄普天間基地の辺野古へ移転を確認(2)自動車や為替など経済関係はすべてペンス副大統領と麻生副総理の会談で協議するーなどだった。

 閣については、オバマ前政権下でも「日本の施政権下のすべての場所に」安保条約は適用されるという表現だったから、実質的には同じことだが、今回、日本側は「尖閣」の固有名詞を入れることに強くこだわり、「尖閣に安保」を会談前から会談後の共同声明にいたるまで、繰り返し記者団に強調した。いうまでもなく、日本国民へのPRだ。
 国家間の首脳会談は短時間で、実質的な重要協議は、政府間の事前事後の協議で、同行する大臣や局長間で行われることに不思議はない。しかし、今回のように、難しい外交、経済問題が山積しており、日本国内では政府側の発言やリーク(意図的な情報漏出)でメディアの報道がやかましかったのに、首脳会談が短時間で終わった例は少ないかもしれない。そして、会談、記者会見の後、すぐ両首脳は大統領専用機でフロリダのトランプの別荘に飛び、夕食2回とゴルフを楽しみながら、親しく話し合うと首相は誇った。

 もかく、今回の日米首脳会談が全く異例だったのは、二人が恥ずかしげもなく見せた、ベタベタとしか言いようのない親しさだ。見せたというより、本心からと言うべきかもしれない。トランプは、中東・アフリカ七か国のパスポート保持者入国拒否(一時的停止というが実際には無期限)の大統領令を出し、即時実施した。しかし世界各国からも、米国民からも強く反対され、州政府から人種差別を禁止した憲法違反として提訴された。裁判は地裁が違憲として大統領令の執行停止を命令、7か国パスポート保持者の入国が再開。控訴裁でも政権側が敗訴した。米国でも前例が稀な事例。それ以外でも、米日主導で実施寸前だったTPPから脱退し、TPP交渉そのものが崩壊。総工費総額216億ドルと推計されるメキシコ国境の壁を大統領令で建設しようとして、メキシコ大統領から費用分担を拒絶され、首脳会談そのものがつぶれた。最初の首脳会談となった英国のメイ首相も、会談そのものは友好的におわったが、メイ首相は帰国後、トランプ政権の7か国民入国拒否を差別として厳しく批判する始末だった。

 のように、新任大統領として最悪の醜態を米国民と世界に見せ続けた時点での、日米首脳会談だった。各国首脳のなかで、就任前に渡米して、“ごますり”に精を出した安倍首相にトランプは、異常ともいえる親近感を見せたのだろう。首相の方も、都知事選での敗北、TPPの破たん、国会での大臣たちの答弁ミスが重なるなど、過半数与党らしくないごたごたが続いていたなかでの訪米だった。こちらも、大げさな、おそらく本心からの親近感を見せた。双方とも満面に笑顔で、肩を抱き合い、手をにぎり続け、「気が合う」とメディアに漏らした。
 だが、大統領にも、首相にも見逃してはならない事態が起こっている。米下院でジェロルド・ネイドラー議員(民主党)が、トランプ大統領の利権関係の憲法違反すべてにわたり、関係当局に捜査を求める決議案を提出したのだ。下院ですぐ決議案が可決されることはないだろうが、アメリカの信頼できる電子ニュース「Common Dreams」は10日の報道で「弾劾へのステップ・ワンか?」の見出しで報じている。
 トランプ弾劾の可能性については、来年の上下両院選挙の前にすべきだという主張、動きがすでに始まっている。議会への決議案はこのネイドラー決議案が初めてだ。(了)
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