2017.02.20  急がれる核兵器禁止条約、核兵器の近代化進める米ロ

隅井孝雄(ジャーナリスト)


核兵器廃絶に向けて、新たな動きプラス、マイナス
 3.1ビキニデーが目前。1954年3月1日、福竜丸など日本の漁船が、太平洋ビキニ環礁近辺で、原爆実験によって被災して63年になる。今年は世界の多くの国が核廃絶のために行動するという特別な年だ。だが同時に米ロが新たな核近代化競争を始めるという状況も生まれた。特にアメリカがオバマ政権からトランプ政権に代わり、終末時計の針も2分30秒前に迫った。
 国連の動きは心強い。昨年12月23日、国連総会の全体会合で、核兵器禁止条約についての会議を17年3月に開始することを決議、113ヵ国が賛成票を投じた。核保有国のうち、米、英、仏、ロは反対したが、中国、インド、パキスタンは棄権に回った。残念ながら日本は反対票を投じたが、賛成はこれまでの核関連決議で最多だ。
 決議では「核兵器を禁止し、廃絶につながるよう法的拘束力のある国際条約の成立」を目指している。ニューヨーク国連本部で3月27日~31、6月15日~7月7日国際機関、市民組織の代表も参加して開催される。大いなる成果を期待したい。

核兵器近代化すすめるアメリカ
 ところで、米露仏英など核保有大国は、核兵器の近代化を進めている。昨年12月10日に放送された「核なき世界の行方、核兵器の近代化とアメリカ」(制作NHK、放送NHKBS1 ) は大いに触発される番組であった。
 アメリカは現在核兵器開発を凍結しているのだが、旧型の性能を向上させる近代化を進めている。60年代に開発された小型核兵器B61近代化をはかり、850億ドルの予算措置も講じている。
 B61タイプ12は戦闘機や爆撃機の機体に搭載する300 Kgの誘導弾。尾翼を遠隔操作して、目標の30メートル以内に落とせる。地中を貫通して地下爆発も可能だ。現在ネバダ砂漠で投下実験中。爆発も最大50キロトンから4段階、最小0.3キロトンに抑えられる(広島のリトルボーイは爆発力12キロトンだった)
 旧型はNATOに配備されて、180発がオランダ、ベルギー、ドイツ、イタリア、トルコにある。これが小型化されれば、被害を敵だけに抑えられる、という口実になる。

アメリカ4賢人による核廃絶提案 
 2001年以降、テロリストが核兵器を手にする可能性があると、アメリカでも廃絶の動きが進んだ。ヘンリー・キッシンジャー、ジョージ・シュルツ、サム・ナン、ウイリアム・ペイリーが「核兵器なき世界」という論文で核兵器廃絶を提案、彼らは4賢人と呼ばれるようになった。
 提案は次の4項目からなっている。1.核戦力の大幅縮小、2. 米の包括的核実験禁止条約批准、3.核分裂物質の生産の禁止、4.同盟国への戦術核の全廃。
 これに賛同して大統領に当選したのがバラク・オバマだった。ペイリーは小型だからと一国が使用すれば、たちまち全面核戦争が起き、人類は破滅すると、危機感を抱く。
 しかしヨーロッパではロシアが国境沿いに戦術核を展開し、アメリカもB61-12の配備を急いでいる。
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アメリカ新大統領、核兵器近代化進める
 アメリカの新大統領ドナルド・トランプは就任前の12月22日、「世界が核について良識を取り戻すまで、米国は核兵器を強化すべきだ」とツイッターで語った。同じ日プーチンも戦術的核戦力の軍事能力を強化する必要があると発言、ウクライナ紛争で、核使用も検討したと述べている。トランプ大統領は就任後「米軍再建」の大統領令に署名(1/27)し、核兵器の近代化を含めた装備強化をはかるよう指示した。
 国連による、核兵器禁止条約の成立は、人類にとって喫緊の課題であるといえよう。
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