2017.03.03 脱原発団体が連続的な集会へ
東電福島第1原発事故から6年

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 国民の約6割は原子力発電所の再稼働に反対する。なのに、世界に衝撃を与えた原発事故はまだ収束せず、そればかりか核燃料サイクルはすでに完全に破たんしたにもかかわらず政府と電力業界は原発の再稼働を急ぐ。これが、この3月11日で東電福島第1原発の事故から6年を迎える日本の現実である。こうした状況を迎えて、脱原発を目指す諸団体は今年も「3・11」前後に脱原発を訴え、再稼働に抗議する行動を展開する。

 2月21日付の朝日新聞朝刊によると、同紙が同月18、19両日の全国世論調査で原発の運転再開への賛否を尋ねたところ、「反対」57%、「賛成」29%だったという。2011年3月11日の東日本大震災にともなう東電福島第1原発の事故直後の国民の間の「脱原発志向」は6割だった。それから6年経っても、国民の「脱原発志向」はいささかも風化していないということだろう。

 しかも、日本政府の原子力政策の破たんは、誰の目にももはや明らかである。
 まず、事故を起こした東電福島第1原発では、放射能に汚染された水の処理が進んでいない。原子炉建屋に流入し、放射能に汚染された地下水は捨てる場所がない。地下水の流入を阻止するための決め手として凍土壁をつくる策が試みられたが失敗、増え続ける汚染水はタンクで保管されているが、もう限界である。安倍首相は、東京オリンピック招致にあたって「汚染水は完全にコントロールされている」と演説したが、首相はこうした事態を今、どうみているのだろうか。
 さらに、同原発2号機格納容器でこの2月に検出された放射能は、毎時650シーベルトという衝撃的なものだった。調査ロボットも手が出せない天文学的高濃度の放射能で、人が浴びれば1分弱で死亡するとされる。このため、いまや廃炉作業のメドも全くつかない状況だ。

 政府の原子力政策が立脚している「核燃料サイクル」も今や、事実上破たんしていると言える。プルトニュウムとウランを燃料にして、消費した以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」とされた高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、1兆円以上の事業費を投じたにもかかわらず事故続きで稼働することが出来ず、政府は昨年暮れ、ついに廃炉に踏み切らざるをえなかった。
 青森県六カ所村の核燃料再処理工場も「核燃料サイクル」を続けるためには不可欠の施設だ。原発から出る使用済み核燃料から再利用できるウラン、プルトニュウムを取り出すための工場で、1993年から2兆円以上を投じて建設が進められているが、2009年から本格稼働という予定がトラブル続出で23回も延期され、工場の完成は2018年度にずれ込むと発表されている。

 日本を代表する大企業の一つである東芝は、今、深刻な経営危機に陥っている。なぜ、そんな事態を招いたのか。それは、東芝が2006年に買収した米国のウェスチングハウス(WH)が、米国での原発建設事業で7000億円を超える損失を出したからである。
 2月25日付の朝日新聞は「東芝の自己資本は今年3月末時点で1500億円のマイナスとなって債務超過に陥る見通し。半導体事業の過半売却で1兆円超を調達し、来年3月末には自己資本を大きく回復させる方針だが、このままなら今年3月末時点で債務超過を解消できない公算が大きい」と報じている。このままでは、東芝株は東証1部から2部へ降格するのでは、との報道もある。
 原発事業は、大企業の屋台骨をゆるがし、果ては倒産に追い込みかねないほどのリスクを伴うことが明らかになったのだ。

 こうした事態にもかかわらず、安倍政権が2014年4月に閣議決定した「エネルギー基本計画」は、原子力を「エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけ、前政権(野田政権)が目指した「原発ゼロ」目標を取り下げ、原発の新設・増設も否定しない、というものだった。
 これをきっかけに、安倍政権と電力業界は原発の再稼働に躍起だ。日本は東電福島第1原発の事故後の2013年9月以降、全ての原発が停まるという「原発ゼロ」の状態が続いていたが、安倍政権は2015年8月に九州電力の川内原発(鹿児島県)1号機を再稼働させ、次いで、川内原発2号機、関西電力の高浜原発3、4号機(福井県)、四国電力の伊方原発(愛媛県)3号機を再稼働させてきた。
 さらに、近く九州電力の玄海原発(佐賀県)3、4号機を再稼働させる方針だ。

 本来なら、「脱原発」を願う国民世論を受けて野党第1党の民進党が「脱原発」を掲げて安倍政権と対決すべきだと思うのが、同党の蓮舫代表が、これまでの党公約の「2030年代原発ゼロ」を「2030年原発ゼロ」に前倒ししようとしたところ、支持母体の連合がこれに猛反発、前倒しを断念せざるをえなかった。

 「国会内がそうした状況ならば大衆運動を盛り上げて安倍政権と対決する以外にない」と、脱原発を掲げる各団体は、3月4日(土)から、それぞれ次のような行動を繰り広げる。
 ◆原発をなくす全国連絡会は、4日(土)13:30から、東京の日比谷野外音楽堂で「全国大集会 原発ゼロの未来へ 福島とともに」を開く。メインスピーチは元宇宙飛行士・ジャーナリストの秋山豊寛氏。14:45から銀座をパレード。
 ◆たんぽぽ舎、テントひろばなど市民団体は、11日(土)14:00から、東京・新橋の東電本店前で「東電福島原発事故から6年、東電は責任をとれ 原発事故被害者の住宅を奪うな!東電本店合同抗議」。
 ◆首都圏反原発連合は11日(土)17:00から、国会正門前と首相官邸前で「反原発!国会前大集会+首相官邸前抗議~福島・祈りを超えて~」を行う。
 ◆原発のない福島を県民大集会実行委員会は、18日(土)13:10から、福島県郡山市の開成山陸上競技場で県民大集会を開く。
 ◆「さようなら原発」一千万署名市民の会は、20日(月、春分の日)11:00から、東京・代々木公園で「いのちを守れ! フクシマを忘れない さようなら原発全国集会」を開く。13:30から作家の落合恵子、ルポライターの鎌田慧氏らが発言。15:00からデモ行進。

 各団体が独自の行動を繰り広げるというのでは、運動は吸引力に欠けるとの見方もあるが、脱原発運動では諸団体が共闘する統一集会がこれまで何度も開かれてきただけに、これからも統一集会が追求されるはずだ。
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