2017.03.09  北朝鮮への先制攻撃の危険が現実的になった
坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ政権下米国が北朝鮮に先制攻撃を行う可能性が、現実的になった。核ミサイル開発・製造関連施設に限定する攻撃にできるか、半島全体に広がる戦争になるかの検討は、スタートしたばかりの米国家安全保障会議の中枢で始まっている。もし全面的な戦争となれば、何十万あるいはそれ以上の人々が死亡する残酷な戦争になってしまう。それは、現実に起こりうる事態だと、世界の人々は、考えなければならないと思う。なんとしても、その戦争を防がなければならない。そのためには、北朝鮮の生存を辛うじて支えている中国に、より多くの努力をしてもらわねばならないだろう。北を締め付けるだけでは、破局的な破壊を防ぐことはできない。今年も3月1日から始まった米韓合同演習は、“過去最大規模”などと宣伝して、北朝鮮を刺激し、最大限の対抗策を取らせるような挑発をするのではなく、必要ならば静かにこの年次演習をやるべきだ。
 オバマ政権下、米国の北朝鮮政策は、あくまで国連安保理の北朝鮮制裁決議の枠内で、加盟各国とともに、厳しい制裁を実施してきた。しかし、北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を阻止することはできなかった。トランプ政権は、オバマ政権の北朝鮮政策は失敗だったとして、あらたな政策を検討している。それを見越したうえで北朝鮮は6日、今回の弾道ミサイル4発の発射実験を行い成功した。北朝鮮の朝鮮中央通信は、朝鮮有事の際に在日米軍基地への攻撃を任務とする朝鮮人民戦略軍火星部隊の訓練だと報じた。4発のうち3発は日本の経済水域に落下したが、発射角度の調整で、在日米軍基地まで届くだろう。
 北朝鮮が、有事の際の在日米軍基地への攻撃意図を明言したことは、初めてではないかと思うが、なぜ、米新政権に対して、まるで先制攻撃を挑発する公式報道をしたのか。
 トランプ政権側は、マティス国防長官がすでに3日「北朝鮮による核兵器のいかなる使用も、効果的、圧倒的な報復を受けるだろう」と述べ、実験後の日本時間6日には「北朝鮮の増大する脅威に対処するため、あらゆる能力を用いる用意がある」(国務省報道官代行)などの同様な発言を、政権側は繰り返した。北朝鮮対応は検討中ということだが、米紙ウオールストリート・ジャーナルによると、トランプ政権は“北朝鮮が核実験や弾道ミサイル発射の準備をしていることが分かった場合、米軍が関連施設を先制攻撃することを含む、軍事手段のカードが盛り込まれる見通しだ”という。
 そのトランプ政権の政策が決定され、明らかになった場合、日本の安倍政権はどうするのか。先制攻撃に賛成するのか。私は、あくまで国連安保理の決議を尊重、遵守して、先制攻撃に反対し、平和的・外交的な解決に努力しなければならないと思う。
Comment
管理人にだけ表示を許可する
 
TrackBack