2017.03.14 やめられないとまらない――チベット・モンゴル高原の環境汚染(1)
      ――八ヶ岳山麓から(214)――
                 
阿部治平 (もと高校教師)
 
産経は3月9日、「大気汚染解消へ都市ランキング公表へ、結果責任で必罰化」という見出しで中国の環境汚染対策を報じた。今回の人民代表大会(全人代)で、「深刻な状況が解消されず国民の苛立ちが高まる中、危機感を抱く当局は実績を上げられなかった地方政府の責任を追及する“成果主義”を導入する構えだ」
李克強首相は5日の政府活動報告で「空気の質の改善を急ぐことは人民大衆の切実な願いだ。合格をもらえる結果を出さなければならない」と危機感を示し、冬季の暖房について石炭燃料から電気・ガスへの転換を急ぐ考えを示したという(2017.03.09)。――いかにも遅い。30年遅い。

中国でもっとも空気も水もきれいだと思われているのは、チベット高原である。この実態をお話ししましょう。
数年前チベット自治区主席は、毎年2000億トンの水を産出しつづければ、1トン当たり0.1元として毎年200億元の収入が得られる。自治区政府が優遇条件を出せば水関連企業を引きつけ、「好水資源」開発ができるという皮算用をやった。このチベット自治区開発の優遇政策に飛びついたのが、食品飲料メーカー「娃哈哈(ワハハ)集団」である。
理事長宗慶後は1987年浙江省の杭州に「娃哈哈公司」を設立し、あっという間に中国最大の食品飲料メーカーに成長した。現在世界第5という大企業である。宗慶後は2009年2300万ドルを投下して、ラサに「西蔵水」を生産する工場を建て、瓶製造・瓶詰・包装の一貫したオートマチック生産をやる計画だった。
ところが去年の全国人民代表大会のとき、全人代代表の宗慶後は、突然「娃哈哈公司」は高原水資源開発の大計画を放棄したと発表して人々を驚かせた。「娃哈哈集団」はチベットに技術人員を送り、独自の実地水質検査をやった。結果、これぞという水源は軒並み重金属に汚染されていた。いま宗慶後はチベット高原には環境基準値に合格した新しい水資源はまったくないとみている。
世界の屋根の氷河を水源とする「西蔵好水」はなぜ重金属が超過したのか?汚染はどこから来たか、汚染のレベルはどのくらいか、汚染はどういう広がりを見せているか。

中国でも飲用水の重金属には基準値規定がある(以下1ℓ当たり㎎。括弧内は日本の基準値)。ヒ素0.1(0.01)、カドミウム0.05(0.003)、6価クローム0.05(0.05)、鉛0.01(0.01)、水銀0.001(0.0005)である。
チベット高原の水調査をした科学者には、この数値を超過する実態がわかっている。だがこれは中国でいう「敏感的問題」である。彼らは政治的圧力を恐れて全体像を明らかにしない。かろうじて特定の汚染現象にふれるだけで、水質調査の結果は「基本的に合格」と発表するのである。

1980年代初めNHKテレビのチベット紹介番組には砂金採りの漢人集団が登場した。中国では砂漠・草原は無主地と見なされるから、草原の砂金も早い者勝ち、勝手次第である。これら漢人は「わがなきあとに洪水は来たれ」式に牧民の放牧草地を掘りかえした。ついで企業家が低価格で地方政府から鉱産資源開発権を買い取った。草原は広範囲に破壊され、そのあとには大量の残滓と廃水とがのこされた。
その後チベットには四大鉱脈が発見され、金・銅・ホウ素・リチウム・クロウム・亜鉛・モリブデン・アンチモン・鉄・プラチナなどの埋蔵量が多く、開発は容易とされ、内地企業の注目の的となった。青蔵鉄道開通後、チベット高原の資源開発は一層拡大した。水と土の大規模汚染が始まった。

砒素による大規模汚染の例をあげましょう。
1976年チベット自治区の温泉名所・羊八井(ヤンパージャイン)に、はじめて1000キロワットの地熱発電機が設置され、77年10月に動き出した。1985年李鵬が視察に訪れ、この年発電能力は1万1000キロワットとなった。1990年江沢民が視察したとき発電能力は1万9000キロワットとなり、ラサ電力の40%を供給した。
地熱発電は元来持続可能なエネルギー源である。地熱貯留層に井戸を掘り、地熱流体を取り出す。セパレータで流体を蒸気と熱水に分け、熱水は還元井から地下に戻す。蒸気でタービンを回転させ、発電し終わった蒸気は復水器で冷ました後、蒸気の冷却に使用する。使用ずみの水は還元井から地下に戻すという循環方式をとるのが一般的である。

Comment
 やれやれですね。そうやって「一帯一路」計画を非難することに何か意味があるのか。
 別に中国が各地の資源開発に乗り出さなくても「どこかの国が開発には乗り出す」でしょう。「中国国内ならともかく」、中央アジアの鉱山開発で環境破壊が起きたとしてそれは「中央アジア各国政府の責任」でありそんな政府なら欧米や日本の企業でも環境破壊は起こりうるでしょう。
 そもそも「中国やロシアの今日の開発方式」と言う物言いもかなり問題で、ならば欧米や日本の企業はいわゆる公害輸出をしてないのか。その鉱山開発には何の問題もないのか。小生もそうした方面には全く無知ですがおそらくそんなことはないでしょう。結局阿部氏とリベラル21は環境問題をまともに考えてるのではなく単に「大嫌いな中国やロシアをけなしたいだけ」なのでしょう。くだらない連中です。
■「悪夢は日本企業から始まった」、エクアドルで鉱山開発による環境破壊と人権侵害が深刻化
http://dev-media.blogspot.jp/2015/04/blog-post_14.html
などのような「鉱山開発一般について論じること」をせずただの中国非難「だけ」をやって一体何の意味があるのか。「鉱山開発一般を論じる能力も意思」もないのか。阿部氏とリベラル21は安倍政権によって悪化してる中国敵視の風潮を助長してるだけです。阿部氏とリベラル21の愚劣さには心底呆れます。
bogus-simotukare (URL) 2017/03/15 Wed 21:48 [ Edit ]
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