2017.03.20 fact と truth
事実と真実のちがい

松野町夫 (翻訳家)

fact(事実)と truth(真実)は似たような意味をもつが、まったく同じというわけではない。
日本語の事実と真実はどちらも「本当のこと」を表すが、「事実」は実際にあった本当のことを意味するのに対して、「真実」は現実には起きていなくても嘘偽りのない本当のことや、理論的・観念的に正しいこと(=真理)をも意味する。この意味で、「事実」は客観的だが、「真実」は判断を含むので主観的で人により異なる。

英語の fact と truth も似たような意味をもつがまったく同じというわけではない。fact は something that has really happened(現実に起きたこと)、truth は something that is true(本当のこと)を意味する。英語の場合、名詞には常に、数えられるか、数えられないかという問題がつきまとう。これは私たちが最も苦手とする難問だ。おおざっぱに言うと、fact は可算名詞 [C]で、truth は不可算名詞 [U] と考えてよい。普通の和英辞典には、「本当のこと」= the truth; a fact と記載されている。truth(真実)に定冠詞 the が付くのは、truth は全体をひとかたまり(=数えられない名詞)と見ていること、また、fact(事実)に不定冠詞 a が付くのは、fact はひとつ、ふたつ、みっつと数えられる名詞であることを示している。

ただし正確に言うと、fact [C, U] も truth [U, C] もいずれも可算・不可算両用の「二元性名詞」である。つまり、fact は本来 可算名詞 [C] だが、意味により、文脈により、あるいは慣用句として不可算 [U] となる場合がある。同様に、truth(真実)は本来 不可算名詞 [U] だが、可算 [C] となる場合がある。詳しくは以下の例文を参照してください。

fact [C, U] [fǽkt] ファクト(事実)

[C] something that has really happened 事実
I want hard facts.
確かな事実が知りたい。
I know this for a fact.
このことを事実として知っている。
Is that a fact?
(相手の言ったことに驚いて)本当なのか?
Is it a fact that you won first prize? 
あなたが一等賞をとったというのは事実ですか?
My failure is due to the fact that I was lazy.
私が失敗したのは怠けたせいです。
The book is full of interesting facts about plants.
その本は植物について興味深い事実が満載されている。
It is a scientific fact that the earth revolves around the sun.
地球が太陽の周囲を回るというのは科学的事実である。
The police were interested in finding out the facts of the accident.
警察はその事故の事実の発見(=事故原因の究明)に関心をいだいていた。

[U] something real, not fiction 事実
Fact is stranger than fiction.
事実は小説よりも奇なり。
The novel is based on fact.
その小説は事実に基づいている。
It’s important to distinguish fact from fiction.
事実とフィクションを区別することは重要だ。

in fact 実際に; それどころか
as a matter of fact 実際のところ

truth [U, C] [trúːθ] ツルース(真実)

[U] the actual facts about something 真実(しばしば the truth)
Truth will out.
真実は必ず明らかになる。
Truth will always prevail over lies.
真実は常に嘘にまさる。
Please tell me the truth.
本当のことを話してください。
She taught her children to tell the truth.
彼女は子供たちに真実を話すことを教えた。

[U] the state of being true 真実性
I doubt the truth of it.
それが本当かどうか疑わしい。
There is no truth in the rumors.
うわさに真実はない。

[C] an important fact or idea that is accepted as being true 真理・原理
An Inconvenient Truth
『不都合な真実』 2006年のアメリカ映画
Einstein discovered an important truth.
アインシュタインは重要な原理を発見した。
The experience taught me a few basic truths about human nature.
それを経験したことで、私は人間性の根本的真理をいくつか学んだ。

fact とtruth は類義語である。以下のウェブサイトは英単語の類義語のちがいに焦点をしぼり、それだけを専門にを解説しているので、興味のある方は参照してください。

DiffereceBetween.net
http://www.differencebetween.net/category/language/

fact とtruthについて、このサイトの説明を一部抜粋し、筆者の抄訳を付けて紹介する。

Difference Between Fact and Truth fact とtruth のちがい
http://www.differencebetween.net/miscellaneous/difference-between-fact-and-truth/

1. Facts are more objective when compared to the more subjective truths.
(fact は客観的、truth は主観的)
2. Facts are more permanent when compared to the more temporary truths.
 (fact は永続的、truth は一時的)
3. Facts exist in reality, whereas truths are usually the things that one believes to be true, or the things that are true in the current situation.
 (fact は実在することだが、truth は本当と信じられていることや、現状において本当のこと)
4. Facts can also answer the ‘where,’ ‘when’ and ‘how’ questions, whereas truths answer the ‘why’ question.
 (fact は「いつ」「どこで」「どのようにして」の質問に回答できるが、truth は「なぜ」に答える)

この説明でひとつだけ納得できないことがある。それは「fact は永続的、truth は一時的」という点である。私のなかでは、「fact は実在的なものであり、個体的・経験的なもの、たとえば、若気の過ちなどをも含むのでまさに一時的なものであり、truth は本当のこと、永遠の真理などを意味するので永続的なもの」と感じている。

事実と真実のちがいについて、皆さんはどのようにお考えでしょうか。
Comment
「真実」が、「判断を含むので主観的で人により異なる。」という物言いはいかがなものでしょうかね?
この主張には、「判断」というのは「価値判断(価値認識)」を含み、価値認識には主観性が伴うというような「三段論法」が胚胎しているように思いますが、ちょっと粗雑だと思いますよ。
そう、価値認識(価値判断)には主観的なものと同時に客観的なものも存在するのです。
そして「価値認識の客観性」では、「価値の客観性」が「価値の実在性」と異なるということも詳論、解明しなければなりませんが、ともかく、価値や価値判断は単なる主観性ではないと思います。でなければ、「価値観の共有」や「価値の普遍性」の説明がつかない。

問題は、多くの人において、客観性と実在性の等置・混同があることから生まれるのでしょう。
両者の混同は、機械的唯物論の所産なのです。
一方、「価値(観)=主観」説は、相対主義を経由して不可知論に至ります。
バッジ@ネオ・トロツキスト (URL) 2017/03/21 Tue 11:25 [ Edit ]
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