2017.04.11 中東への軍事介入を急拡大する米国
アハマド・ラシッド「中東のトランプー新たな野蛮」から(2)

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

本稿(1)を書いていた4月4日、シリア北西部の反政府勢力支配地域イドリブ州を政府軍機が爆撃、致死性猛毒サリンの化学兵器を投下し、子供27人、女性19人を含む少なくとも84人以上が死亡、546人が負傷した。そして本稿(2)を書いている7日午前、米海軍は地中海東部の艦艇から巡航ミサイル・トマホーク59発を発射、シリア空軍基地を攻撃した。
トランプ大統領はオバマ前政権の中東政策を変更するとして、和平解決のために必ずしもアサド政権の辞任を求めない、という方針を示した。オバマ政権は、民主化を求めて2011年からアサド政権と戦ってきた反政府勢力を一貫して支持し、国連が仲介する和平交渉でも、アラブ諸国、西欧諸国とともに、アサド大統領の辞任を要求し続けた。
アサド政権を支援し続けてきたロシア軍の空爆支援の下、昨年12月、反政府勢力が支配してきたシリア第2の都市アレッポがを政府軍が制圧。反政府勢力の主な支配地域は、トルコ国境地域のイドリブ県だけとなっていた。このため、政府軍の新たな攻勢が予想されたが、2014年に国連機関の監視の下で国外搬出、全廃したはずの化学兵器をひそかに保有しており、また使用するとは、米、ロでさえ想定できなかったはずだ。
しかし、アサドはトランプが政権の維持を認めるシグナルを発したと受け止めて、化学兵器使用で、反政府勢力に対しとどめを刺そうとしたに違いない。


アハマド・ラシッド「中東のトランプー新たな野蛮」から(2)

 ニューヨーク・タイムズは、イエメンの3州に、米軍が一般市民の死傷と経済インフラの破壊にかまわず、自由に戦闘できる地域に設定された、と報じた。ソマリアの一部もそのリストに間もなく加わる。ブリュッセルの複数の西側外交官は、アフガニスタンでタリバンの活動が強い地域も、それに加わるだろうと述べた。このような、無差別攻撃を活発化させる方針は、疑いなく何千人ものイスラム過激派を生みだし、人道救済活動を妨げ、経済再建の希望を打ち壊す。
そうではなく、外交、経済支援、紛争解決、支援国づくりを含む総合的な対応こそ必要なのだ。しかしトランプは、米国が慣れ親しんできた世界各国との交渉、協議ではなく、危険な軍事力依存に戻った。イエメンに対して、軍事力以外になにかトランプ政権の戦略はあるのか?国連によるイエメン政府とフーチ反政府勢力との間の和解交渉を、支持するのか?いま米国防総省はイエメンに対する武器禁輸を解除しようとしているが、それが紛争になにを意味しているのか?この地域の対立、紛争の拡大に対して、トランプ政権はどのような外交的努力をしようとしているのか?イエメン紛争に対しての政策は政権内のどこが責任を持つのか、国務省なのか、国家安全保障会議(NSC)なのか?これらの疑問に対して。なんの回答も、説明もない。
しかしイエメンの重要度は、シリアに次ぐ問題だ。シリアでは米軍の爆撃で一般市民が犠牲になり続けている。3月22日にも33人の一般市民が米空軍主導の学校爆撃で死亡した。トランプは、ジュネーブでのロシア主導での国連和平交渉を支持するのか?米国は、イスラム国(IS)に対する、より強力なアラブと西側の同盟結成に関心があるのか?米国はアサド大統領が居座る場合に対応する用意があるのか?なお増え続けるシリア難民への食糧支援と再建の費用をどこが負担するのか?これらの問題に対して、トランプのホワイトハウスは問いかけようとさえしてないように見える。
トランプ政権は、国防予算を540億ドル増やす一方で、国務省予算と国際開発局の予算500億ドルの3分の1を削減しようとしている。3月4日、ホワイトハウスの行政管理予算局長は「劇的な対外援助の削減」を明言した。これらの予算支出増減案に対して、米議会の反対勢力、援助団体、メディアなどから、幅広く反対の声が上がっている。
(続く)
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