2017.06.25  「デリック」と聖職者
          小山の教育通信 [2017.6月-2]

小山和智 (グローバル化社会の教育研究会事務局長)

6~7月の英国は過ごし易く、花々も咲いて、ビールも美味しい季節です。この時期に英国にいられる人が、羨ましいですね。

ロンドンのオクスフォード街の西端に 「Marble Arch」という凱旋門があります。その裏手からハイドパークの角にかけては、昔の「タイバーン処刑場」(=土壇場) だったところで、死刑囚が 最後のスピーチを許された場所 (⇒ Speaker's Corner) でもあります。いわば「言論人の聖地」です。
ここで T・デリックという死刑執行人(17世紀初め) が、斜めに取り付けた腕木(jib) を支えにして 受刑者を吊り上げる処刑 を行っていたことから、後に考案される“ジブ起重機 (jib-crane)”は 「derrick」と呼ばれます。

しかし、クレーン関係者以外が 「derrick」を耳にするのは、野球の試合ぐらいでしょう。選手交代が、吊り上げ処刑に喩えられるのです。なお、選手交代は 「lift」(引き揚げる)、「send ~ to the showers」(~を着替えさせる) ともいいます。

大昔から、教鞭を執るのは 聖職者(Clergy) の仕事の一部でした。キリスト教の「Missionary」は、「牧師 (Pastor)/司祭 (Priest)」と「伝道師 (Evangelist)」とに分けられます。ただし、「使徒継承」を受けて牧師の資格を得ても、教会を担当せずに 街頭に立ったりして 宣教活動をする場合は、伝道師と呼ぶようです。
聖職者が身に着ける“立ち襟”は「ローマ襟 (Roman/clerical collar)」ですが、首の後ろで留めるので「犬の襟 (dog collar)」とも呼びます。人間は 怒りでカッカする時、首の付け根辺りが 熱くなるのだそうで、「get hot under the collar」の熟語もあります。聖職者たる者は、怒りを現わにしてはならない という戒めなのでしょう。

「学校の事務職員は聖職者ではない」という誤解は、日本の教師の独善から生じたものです。事務職でも、生徒の個人情報管理から精神的な支援まで、教育現場の重要な部分を担っていますから、グローバル社会では「clerical (聖職)」とされます。

なお、「Evangelist」には、元々学識経験者という意味もありました。最近は“自社製品を熱心に勧める担当”という職名としても使われます。反対語は、やはり「俗人たち (laity, laymen)」(=専門外の人, 素人) ですね。 近代民主主義の社会においては、専門家は 素人に対して「compliance (法令遵守&説明責任)」があります。 もし「忖度したか?」と疑われたら、吊るし上げられる前に説明責任を果たすべきです。

それでは、例によって他のニュースも。
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第60回グローバル化社会の教育研究会(EGS)

日 時  6月30日(金)午後2時~4時半
場 所  聖学院中学校・高等学校 (東京都北区中里3-12-1)
テーマ  『聖学院の21世紀型教育の現状--- 思考力を育てる取り組み』
      話題提供:伊藤 豊 (聖学院中・高 高等部長。国語科)
※ 基礎教科でのアクティブ・ラーニングの指導法改革でも 先進的な学校です。児浦良裕先生の数学の授業も参観させてもらいます。
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映画『原発なくても大丈夫(日本と再生)』と講演の集い

日 時  6月29日(木) 午後6時半~8時半
場 所  立教大学 7号館 (東京都豊島区西池袋3-34-1)
内 容  映画上映上映、河合弘之監督の講演
※ 監督の河合弘之氏は 脱原発の訴訟に関わる弁護士。『日本と原発』(2014年)、『日本と原発 4年後(2017年)も製作・監督されています。
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英国には、カトリック教徒を大量に処刑してきた 暗い歴史があります。土壇場で最後のスピ―チを許すのは、処刑者の中に聖職者も多くいたため、暴動の引き金になるのを避ける計算もあったのでしょう。

中国語の「五色経済」は、黒 (汚職/腐敗の権威交易)、灰 (偽物の製造/販売)、白 (麻薬取引)、黄 (風俗産業)、青 (密輸)の五色……「バレなければ 立派な副業」の感覚です。もちろん 潔癖な人もいないわけではありませんが、中国語の「合規」に“説明責任”は含まれません。

6月6日(火)、茨城県の日本原子力研究開発機構の施設で、被ばく事故が起こりました。徒らに怖がったり目をそらしたりしないで、原発が核のゴミを出し続けていることを 真剣に考えましょう。

早くも真夏の陽気となっています。皆様、お身体を大切に。
ごきげんよう。

小山 和智 ( OYAMA, Kazutomo)
 http://www.toshima.ne.jp/~kyoiku/
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(過去のニュースは 下記をご覧ください。)
 http://www.toshima.ne.jp/~kyoiku/shijo-news.htm
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