2017.07.01  安倍内閣支持率急落、「信なくば立たず」、政権の大義が失われた
広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

 6月23日に告示された東京都議選は早くも終盤を迎えている。序盤戦に行われた各紙の世論調査(6月24、25日実施)では、小池知事率いる「都民ファーストの会」の優勢が伝えられているが、投票先を決めていない有権者が4分の1から半数近くもあるなど、勝敗の行方はまだ定まっていない。選挙情勢が不透明になった背景の一つには、都議選直前(6月19日)に発表された各紙の世論調査で安倍内閣の支持率が急落し、その影響がどれほどの範囲まで及ぶか見極められないことがある。それに内閣支持率も、読売49%、日経49%、朝日41%、毎日36%と10%前後の差があって、どれが本当の姿に近いのか戸惑う人も多い。

 結論的に言えば、読売・日経は「重ね聞き」をするので支持率が高くなり、朝日・毎日は1回だけの質問なので支持率が低くなるのである。ちなみに「重ね聞き」とは、まず内閣の「支持」「不支持」を二択で求め、次に「言えない、わからない」と回答した人に対しては、さらに「どちらかといえば(お気持ちに近い方は)」と「重ね聞き」をして回答を促す調査手法のことだ。「重ね聞き」は、1回目の回答と重ね聞きの回答の両方を足して支持率、不支持率を算出するので、重ね聞きをしなかった場合(1回目だけ)に比べて数字が増える仕組みになっている。「支持」「不支持」とも増えるので結果は一見同じように思われるが、通常は「支持」が「不支持」を上回っている場合が多いので、支持率の伸びが大きくなるのである。

 この調査手法の最大の問題は、1回目の明確な支持・不支持(これを「確かな支持・不支持」という)と2回目の重ね聞きの支持・不支持(これを「なんとなく支持・不支持」という)が等しい重みで足し算されてしまうことだ。普通、「確かな支持・不支持」を1とすれば、「なんとなく支持・不支持」はその半分程度の重みしかもたない。「なんとなく弱い支持・不支持」2人分で1人分と数えるのであればまだしも、両者を量的に等しくカウントするとになると、これは明らかに「水増し統計」になる。事実、今回も読売・日経の内閣支持率は、朝日・毎日に比べて一段と高かった。読売・日経が調査手法を変えないのであれば、1回目と重ね聞きの内訳を記事の中で明確に区分し、読者を「誤解」させたり「誘導」(印象操作)したりしないようにしなければならない。

 前置きはさておき、今回のテーマは各紙の調査手法の違いを分析することではなく、安倍政権を支え続けてきた読売の世論調査においても支持率が急落した原因と背景を解明することにある。これまでの安倍内閣支持率は、安保法制の強行採決や閣僚の不祥事などによる一時的な支持率低下はあったにしても、その都度不思議にも回復し、内閣支持率は全体として高止まりしてきた。とりわけ、今年に入ってからというものは、内閣支持率が「森友疑惑」が発覚した3月を除いて全て60%台に乗せ、安倍首相が「何をやっても下がらない」と勘違いするほどの高支持率が続いてきた。

 読売の世論調査は、内閣の支持・不支持の理由として6つの回答を用意している。これをグルーピングすると、およそ3つのグループに分かれる。
 〇第1グループ、支持政党やそれらに対する相対的評価を基準にして内閣の支持・不支持を決める回答。「自民党中心の政権だから(支持する、支持しない)」「これまでの内閣よりよい、これまでの内閣の方がよい」がこれに該当する。
 〇第2グループ、内閣の政策やそれを担う閣僚に対する評価を基準にして支持・不支持を決める回答。「政策に期待できる、できない」「閣僚の顔ぶれがよい、よくない」である。
 〇第3グループ、首相個人の人格・能力に対する評価を基準にして支持・不支持を決める回答。「首相が信頼できる、できない」「首相に指導力がある、ない」である。

 これらの調査結果は、「支持する」「支持しない」の内訳および「支持する理由(計100%)」「支持しない理由(同)」の内訳が表されるので、読者は支持・不支持それぞれの場合の理由の重みを知ることができる。しかしここでは調査結果の全体構造を分析するため、回答数全体を母数(100%)にして6回答(支持理由3、不支持理由3)が回答全体に占める割合を算出し、その分布範囲(最低%~最高%)を示すことにする。たとえば、支持率60%、不支持率30%の世論調査の場合は、支持理由の「政策に期待できる」の全体に占める割合は〈支持率60%×支持理由16%=9.6%〉となり、不支持理由の「政策に期待できない」の割合は〈不支持率30%×不支持理由26%=7.8%〉になる。

 2017年1月から5月までの5回分及び2017年6月分調査の支持・不支持理由の結果(最低%~最高%)は以下の通りである。
【支持理由、1~5月→6月】
 〇「自民党中心の政権だから」最低4.3~最高7.2%(以下同じ)→5.9%
 〇「これまでの内閣よりよい」23.2~27.5%→22.5%
 〇「政策に期待できる」7.3~9.8%→5.4%
 〇「閣僚の顔ぶれがよい」0~0.7%→0.5%
 〇「首相が信頼できる」6.2~8.5%→7.3%
 〇「首相に指導力がある」8.5~13.4%→6.4%

【不支持理由、1月~5月→6月】
 〇「自民党中心の政権だから」5.3~6.9%→8.6%
 〇「これまでの内閣の方がよい」0.6~1.3%→1.2%
 〇「政策に期待できない」5.8~9.6%→6.6%
 〇「閣僚の顔ぶれがよくない」2.2~4.3%→2.9%
 〇「首相が信頼できない」5.3~10.7%→20.0%
 〇「首相に指導力がない」0.8~1.6%→0.4%

 支持理由からすると、安倍内閣は今年1月から5月にかけては「これまでの内閣よりよい(まし)」と思う「ソフトな保守支持層」(26%前後)と「自民党中心の政権だから」と考える「ハードな保守支持層」(6%前後)に支えられ、3割を優に超える安定した支持基盤を維持してきた。これに「政策に期待できる」(8%前後)、「首相に指導力がある」(11%前後)、「首相が信頼できる」(7%前後)と評価する「保守系無党派層」(26%前後)が加わり、全体としては6割を超える強固な支持基盤を築いてきたのである。しかし、支持率が急落した今回の6月調査においては、「ソフトな保守支持層」(23%)がやや減り、「政策への期待」(5%)が急減し、「首相の指導力」(6%)が半減したことの影響で、「保守系無党派層」(20%)が相当縮小したことが注目される。

 不支持理由に関しては、1月から5月にかけては「自民党中心の政権だから」(6%前後)、「政策に期待できない」(8%前後)、「首相が信頼できない」(8%前後)など、20%前半に低迷していたが、6月調査になって「首相が信頼できない」(20%)が一挙に跳ね上がり、全体として40%を超えるまでに増大した。不支持理由は、政策や閣僚、首相の人格や能力について敏感に反応するのが特徴で、「首相が信頼できない」「政策に期待できない」はその指標と言える。これに「自民党中心の政権だから」と拒否する「ハードな革新支持層」(6%前後)を加えた2割強がこれまで「アンチ保守層」を形成していた。ところが、支持率が急落した6月調査では不支持理由に一大変化が生じたのである。

 これまでの調査では、「首相が信頼できない」「政策に期待できない」が常に1位、2位を占めてきたが、今回は「首相が信頼できない」がダントツ1位で20%に達し、2位は「自民党中心の政権だから」(9%)、3位は「政策に期待できない」(7%)と続いた。これは内閣支持・不支持のメルクマールが「首相の人格」に1点集中的にシフトしたとも言える劇的な変化を示すものだ。この背景には、これまで安倍内閣を支持してきた「ソフトな保守層」や「保守系無党派層」の一部が不支持に転じ、その受け皿になったのが「首相が信頼できない」という不支持理由だったことを窺わせる。先程の支持理由の分析と併せて言えば、安倍内閣支持層の本体はまだ崩れていないが、その表層部分である「ソフトな保守層」や「保守系無党派層」の一部が首相の人格に見切りをつけて離反しつつあることを示しているのである。

 東京都議選に関する世論調査を6月26日に発表した読売新聞は、小池知事率いる「都民ファーストの会」の優勢を伝えると同時に、安倍内閣の支持率の行方に関しても次のような結果を記している。「自民党は、加計学園問題などで世論の批判にさらされるなかでの選挙になった。都内有権者を対象とした今回の調査では、安倍内閣を『支持する』と答えて人は前回調査から9ポイント下落して39%、『支持しない』と答えた人は50%だった。『支持する』と答えた人の投票先でも自民党候補は46%にとどまっており、浸透し切れていない」。全国世論調査で安倍内閣の支持率が30%台になったことはこれまでないが、その予兆が東京であらわれたというわけだ。

 おまけに、豊田真由子衆院議員(自民、埼玉4区選出、当選2回、女性、42歳)の秘書暴行事件が都議選告示日前日の6月22日、怒号と罵声の録音入りで発覚して日本中を駆け巡った。稲田防衛相も負けていない。6月27日夕、東京都板橋区で行った都議選の自民党公認候補の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛大臣、自民党としてもお願いしたい」と呼びかけた。防衛相が自身の地位に言及して所属政党の公認候補への支持を呼びかけるのは、明らかに自衛隊法違反で自衛隊の政治利用そのものだ。稲田氏は同日深夜、「誤解を招きかねない発言があった」として撤回したが、例によって辞任はおろか発言の責任も取っていない。国政選挙の前哨戦とも言われる東京都議選の選挙結果が待たれる。
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