2017.07.07 公文書について考える
        小山の教育通信 [2017.7月-1]        

小山和智 (グローバル化社会の教育研究会事務局長)

 7月1日で「公文書等の管理に関する法律」(平成21年法律第66号)の公布から満8年です。
この法律は、行政機関の諸活動や歴史的事実の記録が、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、国民が主体的に利用し得るようにするものです。「将来の国民に説明する責務が全うされるように」と冒頭に掲げられています。

動詞の「book」は“記帳・登録する, 予約・契約する”といった意味です。元はドイツ語の「buch」で、紙のない時代に「ブナ (Beech)」の樹皮や薄板 (注:製材すると白い) に文字を刻んだことに因みます。マレー語の「buku」は“節・関節”ですが、昔は 竹簡 (buku buluh。注:節と節の間) に記録していたので、“本・ノート・経典”の意味にもなりました。

「White book, liber alubus (白書 )」は 表紙が白色の装丁の公式報告書のことですけど、たとえ白い表紙でも、慣習として別の色で呼ぶ公文書があります。
例えば、「Blue book」は 英国では“議会 or 枢密院の報告書”、米国では“政府職員/紳士録”。英国外交委員会の報告書が青表紙だったことに因み、日本でも「外交青書」と呼ぶ慣習になっています。「Red book」は スペインの公式報告書で、英国では“貴族名簿”です。「Yellow book」は フランスの公式報告書。「Green book」はイタリアと英領インドの公式報告書。そして、「Black book」は“閻魔帳, 成績記録簿”です (表紙など付けず密かに保管されるはずですけど…)。

なお、日本の江戸時代の「人別帳」では、犯罪を犯しそうな乱暴者に 付箋 (book-mark) を付けていました。いわゆる「札付き」です。他方、商品に掛値なしの価格を表示する札は「正札」ですが、「正札附き」は(値段に見合った)品質の証明の意味でした。後に“本当のワル”の意味にも使われて、なんともはや……。

6月30日(金)、第60回グローバル化社会の教育研究会(EGS)が、いつもの聖学院中学・高校(東京都北区) で開かれ、同校の伊藤豊 高等部長に『21世紀型教育の現状--- 思考力を育てる取り組み』のテーマで、話題提供をしてもらいました。
学校改革の出発点は「生徒達の持っている力の中に 従来 評価されてこなかった部分があるのでは? 例えば、自分で知識を獲得していく力や仲間の能力を引き出す力など」という問題意識だったとのこと。「21世紀型教育」の柱であるアクティブラーニング(双方向授業)も 課題解決型学習(PBL)も、その評価の元となる「ルーブリック (Rubric)」(学習到達度を示す評価基準の観点を縦軸、尺度<(到達度>を横軸にとった評価表)を策定することが鍵となったようです。

ともすると日本の生徒は自己肯定感が低いといわれ、学年が上がるほど下がっていくといわれますが、それは社会と関わる意識の度合い、接する機会の頻度に関係してもいるそうです。聖学院の教師陣が生徒評価のあり方を見直し、生徒に到達目標を明確に理解させることで、生徒たちの自己評価も大きく改善されていった様子がよく分かりました。
なお、児浦良裕先生の 高3数学の授業も、見学させてもらいましたが、数学があまり得意ではなさそうな生徒も楽しそうに取り組んでいる姿が印象的でした。

それでは、例によって他のニュースも。
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日本旅行医学会 登山医学セミナー 2017年

日 時  7月 8日(土) 午前10時20分~午後4時
場 所  東医健保会館 (東京都新宿区南元町 4)
テーマ  『雪崩の科学--- その実態と現状対策』『アウトドア活動・高齢者における低体温症』 ほか
※ 栃木県の高校生ら8名が死亡する雪崩事故---自然災害ながら正しい知識は必須です。米スタンフォー大の P.S.Auerbach教授の講演は貴重な機会です。翌9日(日)、大阪医科大学(高槻市)でも開催されます。
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国際文化フォーラム 30周年記念事業「学校のソトでうでだめし」第1回

日 時  9月 9日(土)・10日(日)・30日(土)・10/1日(日)の4日間。午前10時~午後5時(10/1は6時半)
場 所  TJF国際文化フォーラム(東京都文京区音羽1-17-14)
テーマ  『ことばの世界を服で表現してみたら?』ナビゲーター:川口 知美(舞台衣装家)
※ 服づくりの経験は不要。詩を味わいながら 高校生同士で“舞台衣装”を作ります。「ことばをモノで表現する ⇔モノで表現したことをことばにしてみる」の試みです。申込み受付:7月12日(水)まで。
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情報公開法の施行 (2001年4月) の前に、大量の行政文書が廃棄されました。当時の日本には、公文書管理法がなく、文書公開請求は「存在する文書」のみが対象だったので、将来に禍根を残さないようにと……。10年後、公文書管理法が施行されましたが、「遅くても、ないよりはまし」です。

『新・海外子女教育マニュアル(改訂版)』が発行されました。渡航前から帰国にいたるまでの教育のあり方について羅針盤の役割を果たしてきた基本書です。
初版(1985年) の制作中に、書名を巡って議論したことを思い出します。「マニュアル」は“品がない”と、財団上層部に極めて不評だったのですが、結局、駐在員家族の皆さんに好評ということで決まりました。

『くまのパディントン』(英1958年)のマイケル・ボンドさん(満91歳)が6月27日に亡くなりました。BBCのカメラマンながら、多くの短編を書かれ、異文化の狭間で揺れる子どもたちを 励ましてくださいました。

幼い頃の夏の思い出と重なる花「ネジバナ(Spiranthes)」……桃色の小さな花が 茎の周りに螺旋状 (spiral)に並ぶので「ねじれ草」と呼んでいました。最近は 滅多に目にしませんね。
「絶滅危惧種」と聞くたびに、いずれなくなるだろう職業のことが気になります。羅宇屋、指物屋、道具屋、荒物屋…… 落語でも滅多に聞かなくなっています。印刷屋、レコード針屋も、風前の灯ですね。

それでは皆さん、ごきげんよう。

小山 和智 ( OYAMA, Kazutomo)

 http://www.toshima.ne.jp/~kyoiku/
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(過去のニュースは 下記をご覧ください。)
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