2017.07.28 安倍支持率急落―改憲を断念すべきだ
野上 浩太郎 (政治ジャーナリスト)

 都議選での自民党の歴史的惨敗は5年以上も「一強」として政権を維持してきた安倍晋三首相に致命的打撃を与えた。
 50数議席から「23議席」という歴史的惨敗は大ショックだったが、それでも安倍は見て見ぬふりで通り過ぎようとした。祖父の岸信介譲りの憲法改正(特に戦争放棄の9条改正)を究極的ターゲットに,周辺に「お友達」右翼勢力をひきつけながら記録的な長期政権を存続させるーという安倍改憲戦略である。
 どうやらこの戦略は限界を露呈した。都議選の惨敗は「首都東京とはいえ大規模な地方議員選挙に過ぎない」という右翼独特の暴力的論理で乗り切ろうとしたが、そこは幼稚園から大学まで家庭教師の助けで成蹊を過ごした「甘さ」がマイナス方向に作用した。
 右翼思想団体の「日本会議」に内側を固めさせながら、首相官邸に通産・財務・外務などから秀才官僚を集め、各省の幹部人事まで安倍官邸が取り仕切るーという異例の采配である。派閥の力の均衡を政権運営のてことする、長く続いた自民党のやり方はこれまで成功してきた。安倍本人は育ちの良いソフトなイメージが周囲の抵抗感を緩和するが、ほとんどあらゆる事柄を取り扱う内閣官房長官は、若き日に秋田からリュックを背負って上京してきた菅義偉氏が持ち前のこわもて方式で守り抜いた。
 吉田茂・元首相の孫の遊び人,盟友麻生太郎副総理兼財務相が「安全パイ」として支える。こちらは、自らの政権運営には失敗したものの、安倍が一期目の総理ポストを投げ出した際の難病「潰瘍性大腸炎」が再発する可能性に期待しており、早めの退陣があれば「スワ」と老体に鞭打って政権を引き継ぐつもりだ。そのため,祖父吉田茂が固めた軽武装・経済成長路線を保守本流として引き継ぐ宏池会の大同団結を図った。そのために宮沢喜一、河野洋平、加藤紘一らリベラル色の強い人脈を排除し、無色透明の岸田外相を後継者のリーダーに据えた。みずからは不良老人であるから80歳すぎの政権バトンタッチならこなせる、と内心期待している。
 だが都議選惨敗直後、安倍にとって予想を上回る事態が続いた。50-60%を堅持してきた内閣支持率がすさまじい速さで低落し、一部は26%台(毎日)にまで下がった。都議選で圧勝したのは小池ゆり子都知事が巧みに釣り上げた「都民ファースト」の素人集団だが、素人集団が自民党を叩き落としたパワーは安倍への都民の不満がすさまじく鬱積していることを示した。続いて地方都市でも同じ現象が起きていることを示したのが仙台市長選である。(了)

筆者紹介:
元共同通信社政治部長。著書に、中公新書「政治記者」、中公新書ラクレ「現代政治がわかる古典案内」


Comment
管理人にだけ表示を許可する
 
TrackBack