2018.01.18  朝日新聞がおかしいー「韓・米・日の結束強化」を主張して南北合意を攻撃する社説と紙面

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

1月9日板門店で行われた南北閣僚級協議は、1か月後の2月9日に開幕が迫った平昌冬季オリンピック大会に、北朝鮮が選手団、応援団、芸術団、テコンドー模範演技団、記者団を派遣し、韓国が必要な便宜を保証することで合意。韓国側は南北合同での開会式入場と応援団、文化行事を提案、北側は賛意を示した。南北は2000年シドニーなど3回の五輪と2002年の釜山アジア競技会の開会式にも、合同選手団で入場式に参加、多くの人々が大歓迎した。今回も同様だろう。また両国は、緊張緩和のための軍事当局者の会談の開催についても合意した。両国の指導者、政府だけでなく、大多数の国民も喜んでいるに違いない。政府が対立していても、どちらも選手団を派遣し、国際ルールの下でともに競技し、信頼と友好に役立てるのが、オリンピックの精神であり、歴史なのだ。
トランプ米大統領も、安倍首相も一応、好意を表明したが、文在寅韓国大統領の北への和解姿勢に強い警戒感を示し、北の核開発を放棄させるための日米韓の結束に変わりはないことを強調した。朝日新聞は11日の社説で「平和の祭典への参加表明は、ひとまず朗報といえよう」と一言書いたとはいえ、同社説も紙面の1,2面も、南北協議・合意への批判、非難を散らばせた記事ばかり、まるで安倍首相が露骨に言えないことまで代弁して、文政権を説教しているかのようだった。朝日新聞がおかしい。トランプと安倍政権に膝を屈したのか。
まず、南北協議の翌日1月11日の社説を見よう
南北朝鮮対話―冷静に非核化へ誘導を
「(南北対話の合意を受け)韓国の文在寅大統領は(中略)条件さえ合えば南北首脳会談にも応じる考えを明らかにした。
まさに問題はその『条件』である。南北対話の歩を進めていくうえでは、北朝鮮の軍事的脅威の低下に確実につなげる環境づくりが欠かせない。
その点でなお不安が残る。今回の協議で韓国側が非核化に向けた対話を求めたところ、北朝鮮は強く反発したという。
さらに合意には、南北関係をめぐるすべての問題を『南北が当事者として』交渉を通じ解決する、と盛り込まれた。
北朝鮮が米国を排除する意図を込めたのは明らかだ、これを盾に米韓合同演習の中止や在韓米軍の撤退を求め、米韓の離反をねらうことが予想される。
北朝鮮は国際的な孤立から逃れるためにまず、もっとも手っ取り早いと考える南北関係の改善に手をつけようとしている。五輪に選手団だけでなく高官や応援団を送るというのも、そのための戦術と見ざるをえない。」
「南北対話と五輪の成功で国内の支持固めを図りたい文政権の胸の内も、平壌は熟知しているはずだ。」
「だからこそ、文政権は内向きな思惑で拙速に陥ってはなるまい。南北の和解自体は好ましいが、ムードに流されて無原則な対北支援に走れば、国際制裁の効果が損なわれる。
北朝鮮の出方を一つずつ吟味し、米国と日本との調整の下で交渉の進め方をじっくり組み立てる慎重さが必要だ。
北朝鮮とのすべての対話を、朝鮮半島の非核化と北東アジアの安定に導く。その目標として韓国、米国、日本が一層結束を固めるべき時である。」
朝日社説は、南北協議の成功と北朝鮮の五輪参加を歓迎する韓国、北朝鮮のおそらく大多数の人々の気持、意思を踏みにじる、思い上がった、南北合意への攻撃だと思う。

さらに10日付の南北協議報道から引用しようー。
 1月10日朝刊13版1面準トップ(トップ記事は「慰安婦合意『再交渉せず』」
▼北朝鮮、五輪参加を表明 南北協議 軍事会談でも合意
「9日、北朝鮮と韓国の軍事境界線上にある板門店の韓国側施設『平和の家』で開かれた南北閣僚級協議は、平昌冬季五輪への北朝鮮代表団派遣で合意した共同報道文を採択した。韓国側は南北合同での開会式入場や応援、文化行事を提案し、好感触をえたという。五輪参加を機に南北関係改善と孤立脱却を狙う北朝鮮の意向が色濃く反映された内容になった。両国は緊張緩和のための軍事当局者会談の開催でも合意。報道文に『南北関係から生まれるすべての問題を、当事者として対話と交渉を通じて解消する』との文言が盛り込まれた。米国の影響力排除を望む北朝鮮の意図が反映されたとみられ、米側の反発を呼びそうだ」

 同2面のほぼ全面を埋めた解説記事
▼五輪の陰で核の策略―北朝鮮 抑止要請に譲歩なし
「昨年だけで20発の弾道ミサイルを発射し、『国家核戦略の完成』を唱えた北朝鮮が9日、平昌冬季五輪への代表団派遣で韓国側と大筋合意した。融和姿勢の背景には、南北対話に積極的な韓国の文在寅大統領への歩み寄りを足場に国際的な包囲網に穴を開けながら、核・ミサイル能力を完成させる時間を稼ぎたい狙いが透ける。」(ソウル=牧野愛博、ワシントン=峯村健司)
「板門店の協議会場と平壌は回線で結ばれ音声はリアルタイムで送られている。(李北朝鮮代表の)今回の柔和な態度も、周到に準備された演技とみられる」
「北朝鮮関係筋は『9日の参加表明は既定路線。親族に問題ない人だけを派遣する作業に既に入った』と語る。」
「ソウルの情報関係筋によれば、平昌五輪への応援団や芸術団の編成の指揮を執るのは、金正恩朝鮮労働党委員長の実妹、金与正党政治局員候補だ。党宣伝扇動副部長を務める。」
「情報関係筋は、『北朝鮮に親近感を抱かせ、制裁や武力行使が正しくないと思わせる懐柔策だ』と話す。南北は00年シドニー五輪など3大会で合同入場した。また、02年の釜山アジア大会など韓国での国際大会に北朝鮮が派遣した女性主体の応援団は人気を集めた。こうした手法が韓国世論を軟化させるのに有効だと踏んでいるとみられる。」
韓国 対話、圧力に影響も
米国 同盟ほころび警戒

南北対話を強調する文在寅政権と同じ進歩(革新)政権の金大中、廬武鉉政権両元政権は、緊張緩和の有効策としてスポーツ交流を推進した。ただ北朝鮮は金大中政権期にも弾道ミサイルを発射、蘆政権期には初の核実験。スポーツ交流の陰に隠れて核・ミサイル開発を進めてきた現実がある。」「韓国政府内には五輪で北朝鮮代表団にできるだけ支援をすべきだとの意見も強い。北朝鮮の意向を踏まえて米韓合同軍事演習の統合や縮小を模索する声さえ上がりはじめている。9日の共同報道文も『南北朝鮮を主体とした解決』など、北朝鮮の主張に配慮した内容が目立った。「(トランプ米政権は)韓国政府が南北協議を重ねることで、米韓合同演習の全面中止などに応じることを警戒。北朝鮮への圧力政策にほころびが出ることを懸念している」 
 なお、これらの記事には、「ソウルの情報関係筋」とか「北朝鮮関係筋」とか出てくるが、いずれも韓国の情報機関と思われる。(了)
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