2018.03.06 マルタに続きスロバキアでも、政治腐敗追及ジャーナリストの殺害

 隅井孝雄 (ジャーナリスト)


 政治腐敗を追求するジャーナリストが、銃撃などで殺害されるケースが頻発している。今年に入ってからの事件は2件目、東欧スロバキアと南米ブラジルで起きた。

▽政界と犯罪組織の癒着追及取材で、記者殺害、スロバキア
 2月25日、東欧のスロバキアでジャーナリストのヤン・クツィアク記者が自宅で婚約者の女性とともに銃撃されて死亡した。クツィアク記者はスロバキアで人口(550万人)の半分近く200万人の人々が視聴する人気ニュースサイト「アクトゥリアSK」で、調査報道を担当する記者だった。特に最近ではバギ内相とデベロッパー企業の癒着、脱税問題、与党スメル党と起業家の関係などを精力的に取材していた。警察は事件が取材に関係しているとみて捜査していたが、3月1日、実業家らイタリー人3人を含む7人を拘束した。
 クツィアク記者は、拘束された一人、実業家のアントニーノ・バダラ容疑者がイタリアの犯罪組織「ヌドランゲダ」と共謀、スロバニアの政府要人と癒着して、数百万ユーロに上るEUの補助金を不正に取得した疑惑を追及しており、記事は未完であったが2月28日のサイトに掲載された。
 フィッツォ首相は事件を非難し、犯人につながる情報提供に対し100万ユーロ(約1億3千万円)の報奨金を出すと表明。野党は、記者が脅迫されていることを知りながら、守る手段を取らなかったとしてロベルト・カリナク内相らの辞任を要求した。メディア分野を所管するマレク・マダリック文化相は責任を取って辞職した。
 ロイター通信によると、クツィアクさんの死を悼んで、3月2日首都プラチスラバで2万人の市民による追悼集会が開かれ、婚約者は花嫁姿で埋葬されたと伝えている。
 
▽ラジオ番組で政治腐敗追及、ブラジル
 ブラジルで1月17日、ブラジルの中部、ゴイアス州のラジオ記者、ジェファソン・プレッザ・ロペスさんがオートバイに乗った二人の男に銃撃され死亡した。「CPJ(プロテクトジャーナリスト委員会)」によると、ロペス記者はラジオ番組で、地方政治の腐敗を舌鋒鋭く批判し続け、これまでに何度も脅迫を受けていたという。ロペス記者の番組を放送しているローカル局、ベイラ・リオFMの局舎が2017年11月に放火されたことと今回の事件は関係があると、地元警察は見ている。犯人は不明のままだ。
 
▽乗用車運転中に車ごと爆殺、マルタ
 昨年10月16日にはマルタでパナマ文書に関連して、首相、官房長官、首席補佐官らの汚職疑惑を追及していた調査報道ジャーナリスト、ダフネ・カルーアナ・ガリジアさんが、自宅近くで運転中、自動車に仕掛けられた爆弾の爆発によって死亡した。ガリジアさんは9月初め以降「命を脅かされている」として、警察に相談していたという。
10月22日マルタでは市民たちが「正義のための国家的デモ」を敢行、司法の厳正な裁きを求めた。マルタ警察は12月4日、容疑者ら10人を逮捕した。
 
▽2017年、ジャーナリストの死者は65人
 国際的な救援組織「プロテクトジャーナリスツ(CPJ)」によると、2018年に入ってのジャーナリストの死者は、シリア、イエメンの空爆による3人を含め8人に上っている。
 またパリに本部を置く「国境なき記者団(RSF)」によると、2017年に殺害されたジャーナリストは65人。シリアで戦闘取材中が12人、メキシコでの殺害が11人、フィリピンでは銃撃で死亡した記者4人、などとなっている。

マルタに続きスロバキアでも(3/1NHKニュースより) 
 スロバキアでジャーナリスト殺害(3/1NHKニュースより)
スロバキア首都プチスラバでの追悼集会(3/2CPJ特集より) 
スロバキア首都プチスラバでの追悼集会(3/2CPJ特集より)

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