2018.04.17 トランプ政権安全保障担当補佐官にボルトン就任
極め付きの右派、米朝首脳会談に悪影響

坂井定雄(龍谷大学名誉教授)

トランプ米大統領の国家安全保障政策の策定・実施に最も大きな影響力を持つ担当補佐官3代目に9日、ジョン・ボルトン元国連大使が就任した。その4日後の13日、米国は英国、フランスの参加を得て、シリアへの軍事攻撃を行った。軍事介入の拡大に慎重だった前任者のマクマスター補佐官に代わって好戦派のボルトンが就任するのを待っていたようだ。
▼決まっていた国際機関の調査を待たず攻撃
米国防総省によると、地中海東部に展開する原子力潜水艦などの艦船から105発の巡航ミサイルを発射、シリアの化学兵器関連施設3か所を攻撃した。アサド政権は昨年も反政府勢力の支配地域を化学兵器で攻撃したことが確認されており、反政府勢力やその支配地域への残虐な攻撃で、多数の一般市民まで殺傷してきた。3月以来、反政府イスラム武装勢力が支配を続けてきたダマスカス東郊の東グータ地区を激しく攻撃・破壊して、数千人の一般市民を殺傷。ロシアの仲介で、一般市民の大半が北部の反政府勢力支配地域に向け退去したところだった。残った反政府勢力と一般市民に対して7日、政府軍は化学兵器を使用して、多数の死傷者が出た。現地医療機関の訴えで、世界保健機関(WHO)が調査、11日、5百人から有毒化学物質によるとみられる症状が確認されたと発表した。さらに化学兵器禁止国際機関(OPCW)が14日から本格的な調査を実施することになっていた。その調査を待たず,国連安保理での決議もないまま(ロシアの拒否権が予想されるにせよ)トランプ政権は、英、仏の参加を得て攻撃を実行したのである。
▼トランプ以上の右派好戦派
ボルトンは右派好戦派、ネオコン(新保守主義派、本人は否定)、アメリカ第一主義者、親イスラエル、イスラム嫌い、対イラン・対北朝鮮では武力攻撃による政権転覆を公然と主張したことがある。極端な右派としてのあらゆる批判、嫌悪が浴びせられてきた国務省育ちの政治家だ。政策的には、トランプと酷似している、あるいはそれ以上の右派だ。ボルトンの就任が5月に予定されている米朝首脳会談にどんな悪影響を及ぼすのか、予断を許さないとしかいえない。
▼イラク戦争への大量破壊兵器でっち上げ
2003年、米国のブッシュ政権(2001-2009年)は、フセイン政権下のイラクが大量破壊兵器を保有していると強硬に主張。調査を進めてきた国連が調査継続を主張するのを無視して、英国なども参加させてイラク戦争を開始した。3週間でフセイン政権は打倒された。当時、米国務省の次官だったボルトンは、イラク戦争への偽の“証拠集め”、開戦へと米国内と世界を扇動するために、力を注いだ。停戦後、米軍は徹底的な捜索をイラク全土で行ったが、核兵器、化学兵器をはじめ大量破壊兵器は全く見つからなかった。「イラクの大量破壊兵器」は存在せず、開戦するための米国のでっち上げだったのだ。米国がイラク国民に、そして世界に謝罪することは全くなかった。しかし米国は、その後の反米勢力との戦いを長く続けなければならず、さらに現在に至る中東全体に広がる悲惨な内戦の原因を作り出した。
▼ネオコンとボルトン
2001年の9.11米同時多発テロ事件、アフガニスタン戦争を発足第1年目に経験したブッシュ政権は、好戦的なネオコンが安全保障政策を支配する政権だった。大統領ブッシュ(息子)以下チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ボルトン国務次官、ウォルフォウイッツ国防次官らがその中枢で、とくにウォルフォウイッツとボルトンがネオコン的政策で政権をリードした。ただしボルトン自身は、ネオコンの思想的なリーダーたちが旧左翼からの転向組であり、「自分はネオコンではない」と主張している。いずれにせよ、ボルトンを含むこの顔ぶれが、米国と世界をイラク戦争とその後の中東の戦争、内戦、テロの拡大に引きずり込んだのだ。
▼トランプ政権で解任、辞任は約30人
昨年1月にスタートしたトランプ政権の初代国家安全保障担当補佐官フリンは、大統領選中のロシア大使との接触はじめロシアとの近い関係が露見してわずか1か月で辞任。その後任のマクマスター補佐官は軍歴豊富な陸軍中将で、右派、アメリカ第一主義のトランプに対して穏やかにブレーキをかけてきたが、トランプとの不一致が次第にあらわれ、トランプの不快感が深まって解任に至ったと、米紙は伝えている。トランプはボルトンを補佐官にするチャンスを待っていたと見ていいだろう。
一方、ボルトン就任翌日の10日、トランプ政権の米国内安全保障担当補佐官トム・ボサートが辞任した。彼の役割は国内治安とくにテロ対策の担当だった。これで、トランプは政権発足以来、30人近い政権内の補佐官など幹部が辞任ないし解任された。
この結果、ボルトンで代表されるような、トランプ好みの右派、アメリカ第一主義に政権がますます偏向したことが確かだろう。経済、貿易、外交、環境、などすべてにわたる国際条約・協定からの米国の脱退、不参加、非協力がどれほどの害悪を世界全体に及ぼしているのか、さらにどれほど広げるのか。
いま世界で無批判にトランプ政権への支持を表明、ゴマをすり続けているのは安倍政権下の日本だけだ。北朝鮮問題では「日米韓」「最大限の圧力」と念仏のように唱え続けるだけ。恥さらしもいい加減にしてくれ。

Comment
管理人にだけ表示を許可する
 
TrackBack