2018.07.04 野党共闘の大義と党勢後退の狭間に揺れる共産党のジレンマ、野党共闘と党勢拡大は両立するか(上)

広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)

                 
 このところ、共産党の機関紙『しんぶん赤旗』の紙上では、連日悲鳴にも似た党勢拡大の訴えが続いている。全国各地での様子が日々克明に報道され、その日の成果が即時に報告される。このような紙面を見るとさぞかし党勢拡大が進んでいるようにも思えるが、その一方、月末の集計では決まって機関紙の後退(減紙)が告げられるのだから、各地での奮闘が必ずしも全国的な動きには結びついていないらしい。

 2017年11月総選挙では、結成されたばかりの立憲民主党がご祝儀相場もあってか、前回の民主党比例票978万票(得票率18・3%)を130万票も上回る1108万票(19・9%)を獲得した。その一方、共産はその煽りを喰って606万票(11・4%)から440万票(7・9%)へ166万票(3割減)を失う大打撃を受けた。それ以降、共産は2019年参院選では850万票・15%以上の比例票を「自力」で獲得するため、昨年総選挙で獲得した比例票の約2倍、前回参院選の比例票の約1・4倍を確保することを目標に掲げ、党勢拡大が至上命令となったのである。

 ところが今年6月11日に開催された4中総(第4回中央委員会総会)では、「党勢拡大は、全国の党組織・党員の奮闘にもかかわらず、党員では10カ月連続で後退し、『しんぶん赤旗』日刊紙では5カ月連続で、日曜版でも8ヶ月連続で後退が続いている」という容易ならぬ事態が明らかになった。このため、前回参院選の党勢(党員、日刊紙読者、日曜版読者)を回復・突破するための「特別月間」を当初の7月末から9月末に延長し、党員1万6千人、日刊紙読者1万6千人、日曜版読者8万3千人以上の拡大をやり切ることが改めて提起された。ただし、この目標はあくまでも「中間目標」であり、来年参院選までには党員も読者も「前回比3割以上」というのだから、気の重くなるような大きな数字だ。

 2016年参院選の日本の有権者総数(18歳以上)は1億660万人だった。次回参院選の有権者総数を1億800万人、投票率を55%前後と仮定すると、投票総数は5940万票、比例票15%は890万票(以下、数字は比例票)になる。共産が目標とする850万票はおよそこんな計算に基づいているのだろうが、参院選以降の政党支持率の推移をみると、共産支持率は3%前後に低迷していて変化の兆しはうかがわれない。選挙直前になると支持率は5%程度に若干上がるとはいえ、有権者総数の5%は540万票だから、共産支持者の全員が投票に行ったとしても目標の850万票には遠く及ばないのである。

 ちなみに、共産の比例票は2012年総選挙が369万票、2013年参院選が515万票であり、およそこの範囲の数字が共産の「固定票」と言えるのではないか。得票の内訳は、支持者の3分の2(下限)から4分の3(上限)が投票したとして360~410万票、これに浮動票が加わって全体の得票数になるという勘定だ。しかし、最近の2014年総選挙と2016年参院選では、比例票が600万票の大台に乗った。この結果は、2014年は「二大政党の破綻=自共対決路線の勝利」、2016年は「野党共闘路線の成果」だと総括されているが、自共対決路線と野党共闘路線はもともと正反対の政治路線だから、600万票獲得の原因はもっと別のところにあるはずだ。

 おそらく両選挙における100~200万票の浮動票の上積みは、政策支持によるというよりは「第3極(維新、生活)崩壊」の敵失効果によるものであろう。700万票近い大量の浮動票が第3極の崩壊で行き場を失い、その一部が共産に流れ込んだのである。しかし、浮動票は移ろいやすい。2017年総選挙ではその浮動票の大半(166万票)を立憲に持っていかれ、共産の比例票は元の姿(固定票+アルファ)に戻った。

 2017年総選挙で共産の比例票が大きく減ったのは、共産が野党共闘を継続するために大義を貫き、選挙区の多くで立候補を取りやめたから―、というのが通説になっている。しかし京都選挙区の結果をみると、この通説は必ずしもそうとは言えない。京都では民進党議員がすべて希望の党に移り、立憲は「候補者ゼロ」になった。代わって共産は全ての選挙区で候補者を擁立し、自民・希望と対決して選挙区で21・1万票(20・0%)を獲得した。それにもかかわらず、比例票は15・0万票(14・1%)に止まり、6万票(3割)を失ったのである。その前の2014年総選挙の共産票は、選挙区19・4万票(18・7%)、比例区19・4万票(18・6%)でほぼ同じなので、2017年総選挙では共産の候補者擁立の有無にかかわらず、大量の比例票が立憲に流れた事実を認めなければならないだろう。

       比例区(A)        選挙区(B)    (A)-(B)
自民 33.2万票(31・2%) 43.1万票(40・7%) △9.9万票
公明 11.2万票(10・6%)      ―        11.2万票
希望 15.2万票(14・3%) 35.6万票(33・6%)△20.4万票
立憲 19.3万票(18・1%)      ―        19.3万票
共産 15.0万票(14・1%) 21.1万票(20・0%) △6.1万票
維新 10.7万票(10・1%)  1.7万票( 1・6%)  9.0万票 
社民  1.2万票( 1・1%)      ―         1.2万票

 現在、共産は野党共闘と党勢拡大の狭間で大きく揺れ動いている。この間の事情を報じた朝日新聞(2018年6月22日)は、「野党共闘 共産に危機感、政権批判票は立憲に・党員10カ月連続減、参院選へ調整難関」との見出しで、野党共闘と党勢拡大のジレンマに悩む共産の姿を描いている。産経新聞(6月25日)も同様の内容だ。来夏の参院選1人区で候補者を一本化することは野党陣営の共通目標だが、「相互支援・共通政策の合意が条件」という共産の申し入れは受け入れられそうにない。立憲の枝野代表は「候補者の棲み分け」を進める立場で、政策協定や相互支援は受け入れない方針だといわれる。また、共産が今年1月に呼びかけた相互支援に向けた野党間協議も半年近く放置されたままだ。

 共産の志位委員長は、「共産党が参院選で伸びることが、野党共闘の最大の推進力と貢献になる。共闘と共産党を伸ばすことは決して二律背反ではない」と強調している(朝日、同上)。理論的にはその通りだろう。共産は野党共闘の約束を守っているし、国会論戦でも森友疑惑に関しては最も鋭い論戦を展開している。共産によって次から次へと暴露される内部文書は、安倍政権の喉元に突き付けられる「匕首のようだ」という政府関係者もいる。それなのに、なぜ党勢拡大が進まないのか。

 野党共闘の推進を前面に打ち出した2017年1月の第27回共産党大会が閉幕した翌日、京都新聞(2017年1月19日)は野党共闘路線への傾斜に関する興味深い分析記事を掲載した。見出しは「『共闘』傾斜 ちらつく財政難」「共産 党員減少、高齢化に直面」というもので、共産の「野党共闘」への傾斜を党存立の基盤である財政面から分析している。「共闘への傾斜には、党員減少や財政難に直面する苦しい台所事情がちらつく」というのが分析視点だ。理由は、「党員数は約30万人で、この20年間で約7万人減少。収入の柱である機関紙『赤旗』の発行部数(日刊紙と日曜版の合計)も20年前に比べると半減した。党員の高齢化も進み、運動員の確保も課題となるほか、衆議院の265小選挙区全てに公認候補を立てるのに必要な9億円近い供託金の工面も重荷になっている」というもの。つまり「自共対決」を掲げて全選挙区で候補者を立てて戦うことはもはや財政的にも難しく、コスト・パフォーマンスが余りにも悪すぎるというのである。

 正確な数字は読み取れないが、記事の中に掲載されている党員数と機関紙読者数のグラフからその推移をみると、日刊紙と日曜版を合わせた読者数は、1979年(第15大会)の350万人をピークに2017年(第27回大会)には110万人となり、実に3割の水準にまで落ち込んでいることがわかる。また、党員数は1987年(第18大会)の50万人をピークに2017年では30万人へと6割に減少している。民間企業で言えば、売上高が7割減、従業員数が4割減という数字は「経営危機」そのものであり、「倒産寸前」と言ってもいいぐらいだ。共産の台所事情はそれほど深刻であり、危機感も並大抵のものではないだろう。(つづく)
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