2018.07.05 野党共闘の大義と党勢後退の狭間に揺れる共産党のジレンマ、野党共闘と党勢拡大は両立するか(下)

広原盛明 (都市計画・まちづくり研究者)
                 
 一般的に言って、政党支持率は「固い支持」と「柔らかい支持」および「気まぐれな支持」の合計としてあらわれる。「固い支持」は如何なる政治情勢においても当該政党を支持する党員・シンパ層の支持、「柔らかい支持」は当該政党に好感を抱く無党派層の支持、「気まぐれな支持」はその時々の空気で動く浮動層の支持である。共産の党勢拡大方針は「固い支持」の回復を追求しながら、野党共闘路線の推進によって「柔らかい支持」の拡大を目指すものと言える。問題は、野党共闘がいっこうに本格化しない現情勢の下でそれらが両立するかどうかということだ。

 まず、党員と機関紙を増やす党勢拡大は、党本部の𠮟咤激励にもかかわらず分厚い壁にぶつかってなかなか進まない(それどころか、却って後退している)。党綱領の正しさを説き、共産党を「丸ごと」理解してもらおうとする「昔さながら」の拡大方針は、組織内部の事情と外部環境の変化の両側面からブレーキがかかり、なかなか進まないのが現実の姿なのである。このような現実を直視しないで、(旧日本陸軍のように)いくら号令をかけても効果が上がらないことは目に見えている。

 内部組織の問題としては、党員の高齢化によって活動力が著しく低下していることがある。集会にしても選挙運動にしても見かけるのが高齢者ばかり―、こんな光景が最近ではごく普通のことになった。しかしそれ以上に深刻なのは、これまで「固い支持」を支えてきた党員・シンパ層がいま急速に減少しつつあることだろう。党員の年齢構成が公表されていないので正確な数字はわからないが、党員数30万人、65歳以上6割(あるいはそれ以上)、活動停止年齢80歳と仮定すると、15年後には18万人(年平均1万2千人)が第一線から物理的に退くことになる。党員30万人の現状を維持するには(離党者による目減り分は別としても)毎年少なくとも1万2千人以上(月平均千人以上)の入党者を迎えなければならない。しかし現実は殊の外厳しく、今年1月からの党勢拡大月間の入党者数は月平均300人台に止まり、現状維持水準には程遠い。このような状態が継続すれば、共産は遠からず党員10万人規模(現在の3分の1)の少規模政党に縮小することは避けられない。

 一方、外部環境の変化としては、社会問題や政治問題に関心を持っていても組織に束縛されず自由に活動したいと思う価値観とライフスタイルが社会全体に広がっていることがある。このような時代に党組織について「丸ごと」の理解を求め、入党してもらうことは至難の業と言わなければならない。もちろんそのような生き方を選択する人はどの時代にもいることはいるだろうが、それを現在の党勢拡大の「基本方針」に据えるとなると、時代錯誤の感は否めないし、組織拡大もままならないだろう。第一、現在党組織がこれほど高齢化しているのはこれまで若者が参入してこなかったからであり、これまでの拡大方針が「適切でなかった」ことを証明している。そのことをわかっていながら「昔さながら」の拡大方針を今でも繰り返すのだから、誰もが「気が知れない」と思っているのではないか。

 それでは、志位委員長が「起死回生」の手段と位置づける野党共闘をめぐる情勢についてはどうか。いつも思うことだが、共産の政策は上意下達の体質を反映して極端に変わることが多い。昨日まで「自共対決」を唱えて他の野党をミソクソにけなしていたかと思うと、ある日突然「野党共闘」に変身して天まで持ち上げる―、こんなことの繰り返しなのだ。これが衆議一決の結果ならまだしも、「上御一人」のご判断となると誰も異議を唱えられなくなる。野党共闘といってもその形態は地域によって千差万別なのに、日本国中の政治情勢が昨日と今日で180度変わったような情勢分析が支配的となり、今度は何が何でも野党共闘を推進すると言うことになる。

 その結果、これまで地域で地道に活動してきた候補者が「野党共闘の大義」と称して一方的に降ろされることになると、選挙区での活動量が落ちるのは当然のことだ。いくら「主戦場は比例区」だと叫んでみたところで、一般の有権者にはそんな区別はつきにくい。野党共闘を推進すればするほど自らの足元を掘り崩すことになり、結果は「トンビに油揚げをさらわれる」ことにならざるを得ない。来夏の参院選1人区で候補者を一本化することは野党陣営の共通目標だとしても、野党の思惑は目下のところ千差万別だ。立憲をはじめとして「相互支援・共通政策の合意が条件」という共産の申し入れを各野党が受け入れそうにない以上、野党共闘にこれ以上の過度の期待を掛けることは危険なのではないか。共通政策と相互支援の原則を曖昧にしたままで「候補者の棲み分け」が進めば、有権者には却って野党の姿が見えにくくなる。

 最近の日経新聞の連載に、『世論調査考、安倍内閣 強さともろさ』という興味深いシリーズがある。2回目(2018年6月27日)は「無党派層」の動向に焦点を当てた分析で、次のような傾向が指摘されていた。
「無党派層の内閣支持の動向をみる。今月の調査で無党派層の内閣支持率は24%、不支持率は63%だった。12年12月の政権発足直後は支持率30%、不支持率45%、無党派層のなかで内閣を支持しない人の割合が5年半で増えた。(略)15年4月の無党派層の内閣支持率は29%、不支持率は47%、17年11月は支持率が28%、不支持率が50%だ。今月は両調査より不支持率が10ポイント以上高い。以前に比べ、最近は無党派層が不支持をはっきり表明するようになったと考えられる」
「支持率でみても政策への賛否でみても無党派層の政権批判は色濃い。明治大の井田正道教授(計量政治学)は『いま無党派層に残っているのは、安倍1強の自民党政治を批判する野党的な考えを持ちつつ、野党勢力の分断で新しい野党を信頼できない人たちが多いのではないか』と話す。来年夏の参院選で野党は統一候補を模索する。与野党一騎打ちの構図になれば、政権に批判的な無党派層が野党候補に投票する可能性もある。無党派層の野党化が進めば、安倍政権のリスク要因になり得る」

 私は井田教授の分析に全面的に賛成だ。安倍政権に批判的な無党派層は「信頼できる新しい野党」を求めているのであって、野党共闘が進めば批判勢力が自動的に大きくなるとは思っていない。すでに支持率が低迷する国民民主は、立憲との違いを際立たせるために独自の行動をとり始めている。先日の働き方改革法案の審議をめぐっては、国民民主は参院厚生労働委員会の委員長解任決議に同調せず、野党共闘から離脱した。今後は自公与党が維新、希望と共に衆院に共同提出した国民投票法改正案を巡っても、国民民主が与党に同調する可能性は大きい。野党共闘は既に「第2幕」に入ったのであり、いつまでも「第1幕」の余韻に浸っているのは危険すぎる。

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