2018.09.12  ワシントンのパレスチナ代表部を閉鎖へ
 ―トランプ政権、和平案交渉拒否に報復

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

米国のトランプ政権は10日、ワシントンのPLO(パレスチナ解放機構)代表部の閉鎖要求を通告したと発表した。米国務省によると、その理由は、(1)トランプ政権がイスラエルとPLOに提示している未公表の最終的和平提案に基づく直接交渉を、PLOのアッバス議長が明確に拒否した(2)PLOが国際司法裁判所に対して、イスラエルが占領下パレスチナのヨルダン川西岸地区とガザで行っている住民とその資産に対する人権侵害について、国際法違反として告発をしているーを挙げている。
このうち、(1)のトランプ政権がそれに基づく直接交渉を求めている和平提案は、未公表ながら米国のメディアがほぼ同じ内容で半年前から報じている。その要点は本欄でも書いているが、イスラエルが占領しているパレスチナのうち、67年戦争直後にイスラエルが併合宣言をした東エルサレムに加え、イスラエルが入植地を拡大しつつあるヨルダン川地区の3分の1強をイスラエル領として併合、パレスチナは残りのヨルダン川西岸地区とガザを領土として独立することを認め、このパレスチナの2国分割で最終的に和平解決するのが骨子だという。
パレスチナ側を代表するアッバス議長は、トランプ政権からの公式な提案があったことは認めていないが、提案内容とそれに基づくイスラエルとの直接交渉については、メディアに対して明確に拒否を表明している。
第2次大戦後、パレスチナ紛争の解決を目指す交渉に、1947年の国連総会パレスチナ分割決議、1993年にワシントンで調印されたパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)をはじめ、米国は中心的な役割を果たしてきた。米国の歴代政権の立場は、イスラエル支持に比重を置きながらも、パレスチナ側も受け入れ可能な合意に努力して来た。しかしトランプ政権は、5日の本欄でも詳論した通り、イスラエルが熱望しながらも歴代米政権が見送ってきたエルサレムの首都公認を宣言し、今年5月には大使館をテルアビブからエルサレムに移転。さらに、国際社会が現在530万人に達しているパレスチナ難民の教育、医療、貧困対策をUNRWA(パレスチナ難民救済事業機関)の事業予算の3分の1を占める米国拠出を全額停止した。
それに続く、今回のワシントンのパレスチナ代表部閉鎖なのだ。ニューヨークの国連本部には、パレスチナ自治政府代表部があり、それまで追い出すことはできないが、ワシントンの代表部閉鎖で、PLO と米国の政界やメディアとの接触も不便になるだろう。
親イスラエル一辺倒をますます明確にしたトランプ政権は、パレスチナ紛争解決への役割をもう果たせなくなった。それはイスラエルの入植地拡大、抵抗するパレスチナ人への軍事行動強化を後押しする危険がある。(了)
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