2018.09.24  イデオロギーよりアイデンティティだ
    韓国通信NO571

小原 紘 (個人新聞「韓国通信」発行人)

翁長氏急逝に伴う沖縄県知事選は氏の遺志を受け継ぐ玉城デニー氏と佐喜眞淳氏による事実上の一騎打ちとなった。
翁長氏が辺野古基地に反対し続けた理由は基地を当然のように押し付け、基地公害を放置する政府に対する怒りからだった。かつて「捨て石」にされた沖縄が本土復帰後も戦前と同様に差別され続けてきたことへの怒り。彼はすべてのウチナンチュー(琉球人)にこの不条理を訴え続けた。「オール沖縄」の主張は保守政治家の翁長氏だから強い説得力を持ちえた。

翁長氏の「イデオロギーよりアイデンティティ」という訴えは、貶められている差別にかかわらず、沖縄が不毛な議論を続けることへの危機感から生まれた。
 かつて私が勤めた職場は「差別のデパート」と言われた銀行だった。仕事は二の次にして、会社は労働組合と組合員いじめに狂奔した。結果、金融再編の荒波に呑みこまれ、職場は藻屑と消えた。差別される側もする側も不幸になることを身に染みて学んだ。
今年の6月23日沖縄慰霊の日、翁長知事は朝鮮半島非核化に触れて、基地政策の変更を求めた。国際情勢の変化にもかかわらず、アメリカ従属のイデオロギーにしがみ続けるわが国の姿から、かつて私の職場が消えたのと同じ危うさを感じる。

イデオロギーよりアイデンティティ(その2)
福島原発事故で私たちは多くのことを学んだ。避難地区を次々に解除して高濃度の放射能汚染地区に帰郷を勧め、戻らない人たちを「自主避難者」として支援から切り捨てる。責任逃れとオリンピックのための「偽装」がますます露骨になっている。これを容認するイデオロギーはありえない。

17日、東京・代々木公園で開かれた「さよなら原発」集会の参加者は少なかった<主催者発表8千人>。再稼働運転中の原発は既に9基(内2基は点検中)、再稼働申請中は東海第二を含めて17基という事態をどう考えたらいいのか。
原発ゼロ・脱原発の可能性として原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)の運動に注目したい。小泉元首相が実質の言い出しっぺである。彼は大学の恩師、故加藤寛氏の「遺言」で「開眼」、脱原発論者になった。都知事選で脱原発を掲げた細川元首相を担いで惨敗したことは記憶に新しいが、その後も脱原発の講演行脚を続け、脱原発には「右も左もない」と愛国的心情を吐露しながら独自の運動をすすめてきた。その活動が中核となり昨年結成された原自連には既存の多くの団体・個人が参加し、今や脱原発運動の中心になりつつある。原自連の「原発ゼロ」の主張は立憲民主、共産党、社民、自由各党に支持され、今年「原発ゼロ基本法案」が国会に提出された。

なかでも原自連の会長に就任した前城南信金理事長の吉原毅氏の活動は目を見張るものがある。講演活動を中心とする小泉氏とは対照的に市民運動との連携、反原発の集会に欠かせない存在となった。とかく「反体制」「左翼」と見られがちな反原発運動に「脱イデオロギー」、「右も左もない」立場から有言実行する姿はこれまでにない運動の可能性を感じさせる。11日の経産省前の抗議集会)、15日の我孫子の講演会、17日の「さよなら原発」集会と一週間のうちに彼の話を3回も聞く機会を得た。

講演会に参加した高校生たち
15日、我孫子市の市民団体が主催した吉原氏の講演会に約120名の聴衆が集まった。金融マンがあれほど「おしゃべり」なのは意外だった。そういう私に「あなたも相当おしゃべり」と言われてしまった。確かに預金を集め、融資する仕事は口が達者でなければできない。私は社長にならなかったが。
2時間に及んだ講演会は、自然エネルギーが経済的にも安全性からも断然有利なことを中心にわかりやすく、とても好評だった。
主催者を喜ばせたのは当日参加した三人の高校生たちが感想を寄せてきたこと。全文を紹介できないのが残念だが、あらましを紹介したい。


「これまで、原発について深く考えたことはなかったが、話がスッと頭に入ってきてとても楽しく学ぶことができました」「『原発問題に右も左もない』という吉原先生の言葉を強く受け止めました」
「東日本大震災の原発は不幸中の幸いで何とか日本壊滅を免れたことを聞いて、今度こんなことが起きたら間違いなく日本は壊滅してしまうのに、国で働いている大人たちが対策を練ろうとしないのだろうか、原発をやめようとしないのかと思いました」
「お堅いイメージがあるように見えたのですが、とてもわかりやすくまとめられていて経済や歴史など幅広く触れながらテンポよく話してくれるので気軽に参加しやすいし、話の幅も広く、様々な考えを聞けて飽きない時間でした。


素直で素晴らしい感想だ。吉原氏の話が高校生たちの胸にしっかり届いたようだ。

「とめよう!東海第二原発首都圏連合会」が取り組んでいる自治体への請願活動が急速な広がりを見せている。この活動が注目されるのは、地域の地道な署名活動によって改めて原発への関心を呼び起こしている点だ。草の根運動によってすそ野が広がり新たな展望を拓きつつある。<次回号へ続く>
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