2018.09.25 韓国民が高く評価する文大統領の北訪問
  ―不信・疑惑に偏った朝日新聞の報道

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

今回の文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領の北朝鮮訪問、南北首脳会談が成功に終わったことを心からお祝いしたい。
韓国の多数の国民も喜び、支持している。韓国の有力世論調査会社リアルメーターが21日に発表した世論調査によると、18~21日に開催された文大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の首脳会談について、肯定的な評価が71.6%、否定的な評価が22.1%だった。
また、有力調査会社のギャラップが同日発表した18~20日に実施の世論調査(対象1001人)によると、文大統領の支持率61%、不支持率30%で直前に行われた調査に比べ支持率が10ポイント上昇、不支持率は9ポイント下落した。今回の調査で文大統領を支持する最も大きな理由は「北朝鮮との関係改善」26%、「南北首脳会談」14%、「対北朝鮮・安全保障政策」12%、「外交」8%、「最善を尽くしている、頑張っている」が5%だった。
しかし日本の主要メディアは、「非核化前進と言えず」「「文氏のすり寄り懸念 韓国世論 経済協力に抵抗感」「「対北包囲網」ほころび」という朝日新聞(「和解の機運を広げたい」を見出しにした社説は別として)をはじめ、首脳会談とその共同声明、軍事分野合意書など発表文書に疑義をはさみ、文大統領が宿願だった白頭山訪問にまで嫌味をつける報道ぶりだった。たぶん記事の量ではもっとも多かった朝日新聞の記事見出しを、以下に記録しよう、紙面は朝刊13版と夕刊。
(9月18日)
▼文大統領平壌を初訪問―南北会談、非核化など議題
(9月19日)
▼正恩氏に新たな決断促すー南北首脳2人だけで会談
▼非核化案の提示 説得かー文氏、正恩氏と会談
▼南北首脳 融和ムードー夕食会・公演 互いに「歓迎」「友情」
(9月20日)
▼寧辺核施設廃棄の用意
 南北合意 米の相応措置条件
▼解説 非核化前進と言えず
▼時時刻々 核の新提案 米の出方探るー北朝鮮、交渉再開狙いか 核施設申告なし、米は不信感
▼米軍の脅威削減・外貨獲得-南北合意 北朝鮮の意向反映
▼融和先行に日本懸念
▼もてなす北朝鮮 韓国抱きこむ策略(国際面1ページ特集)写真4枚
▼平常共同宣言の要旨
▼南北首脳 共同会見の要旨
▼南北軍事分野合意書の要旨
▼文氏のすり寄り懸念―韓国世論 経済協力に抵抗感
 ▼「対北包囲網」ほころびー南北合意 中ロ「歓迎」鮮明
 ▼考論 慶応大学准教授 磯崎敦仁氏 「非核化へ前進評価できる」
     元韓国統一次官 金千植氏 「根本的な解決可能か疑問」
 ▼社説 南北首脳会談 和解の機運を広げたい
 (9月21日)
 ▼文大統領、白頭山登山―金正恩氏同行―体制宣伝の「聖地」
(この見出しは自宅に配達された13版。ところが図書館に配達された同じ13版の朝日新聞の見出しは「南北首脳 白頭山登る 観光開発狙い正恩氏が誘う」に変わっていた。印刷のわずかな時間差の間に、えげつないサブ見出しを取り換えたのだろうか)
 両首脳は夫人とともに白頭山に登山した。4人の写真を各紙、テレビとも報道した。朝日の紙面は写真、地図付き4段で、次のように締めくくっていた。3日間の報道では、もっとも文大統領に暖かい記事だったー「文氏は19日夜、平壌で正恩氏とともにマスゲームを鑑賞し、会場を埋めた北朝鮮市民ら約15万人の前で演説した。文氏は「白頭からかハッラ(済州島の山)までの美しいわれわれの山河を、永久に核兵器と核の脅威のない平和の地にして子孫に譲り渡すことを(正恩氏と)確約した」と述べて拍手を受けた。民族心を刺激し、非核化の重要性を市民に訴えた」

断っておきたいが、わたしは日本の新聞で最も朝日新聞を信頼し、同紙以外には定期購読したことがない読者だ。だが、朝鮮半島報道だけは、北朝鮮嫌い、不信感が目立ち、信用できなかった。朝鮮報道事情に詳しいジャーナリストたちに聞くと、たいてい「朝日はねー」と言葉を濁したり、渋い顔をする。そして彼らの返事に共通しているのは、対北朝鮮政策と情報工作を担当する韓国の統一省や情報機関に歴代朝日特派員が有力な情報源を持ち、引継ぎ、北朝鮮情報に強くなるが、それとともに反北朝鮮に偏った報道をするようになるーというのだ。
このことは、朝鮮半島担当のジャーナリストたちは誰でも知っていながら、口を閉ざしているようだが、朝鮮半島情勢の大きな変化の中で、朝日新聞に十分信頼出来る報道を願って、書かせてもらった。
  白頭山
 白頭山を訪問し、カルデラ湖「天池」で手を上げる北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長
 (中央左)と韓国の文在寅大統領(同右)。両側は同行した双方の夫人=20日(平壌
 写真共同取材団)
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