2018.11.01  「社会運動情報センター」の設立を
運動を広げ、力強くするために

岩垂 弘 (ジャーナリスト)

 「社会運動の情報センターみたようなものが必要ではないか」。以前からからそう思ってきたが、そうした思いを一層強くする機会が先ごろあった。9月17日(月・祝日)に東京・代々木公園で開かれた「いのちをつなぎ くらしを守れ フクシマと共に 9・17さようなら原発全国集会」での見聞である。

 私は、「さようなら原発全国集会」が代々木公園で開かれるたびに、そこへ出かけてゆく。取材のためだ。
 会場に行くルートも決まっている。JR山手線の原宿駅で降りると、前方に五輪橋が見える。それを右に渡ると、真っ直ぐの歩道が伸びる。それを進み、2つ目の信号のところで道路を渡ると、公園の入り口だ。遠方に野外ステージが見えてくる。集会は野外ステージ前の広場で行われる。

 いつもそうだが、五輪橋の手前あたりから、2つ目の信号までの歩道の両側、それに公園の入り口付近に、チラシや機関紙を抱えた人たちが立っていて、集会会場に向かう人たちをつかまえる。手渡されたチラシや機関紙を受け取る人もおれば、受け取らない人もいる。
 私は、出されたチラシや機関紙をすべて受け取ることにしている。もっとも、今回は左手で手提げ袋を下げていたので、右手のみでそれらを受け取らざるを得なかった。しかも、なにしろおびただしい数なので、右手でつかめきれなかったチラシや機関紙があった。
 家に帰ってそれらを数えてみたら32枚あった。現場で受け取れなかったものがあり、それに私が通ったコースと別な場所でも配っていたから、この日、会場周辺で配られたチラシや機関紙は膨大な数だったろう。

 ところで、私が手にした32枚のチラシや機関紙の内訳は、反原発・脱原発関係11、改憲・安保関連法反対関係5、沖縄・辺野古新基地関係2、三里塚の農地強制収用関係2、共謀罪関係1、武器輸出関係1、731部隊関係1、慰安婦関係1、ベトナム反戦運動関係1、社会主義関連1、冤罪関係1、政治団体・宗教団体の機関紙5。政治団体・宗教団体の機関紙を除けば、大半が集会、講演会、映画の上映会などの開催を知らせるチラシであった。

 とりわけ印象に残ったのは、ほとんどのチラシが、全国レベルの大組織がつくったものでなく、市町村レベル、あるいは地域の小さな団体が作成したものだったことである。これらの団体には宣伝力がない。そこで、「さようなら原発全国集会」には大勢の人がやって来るに違いないと、チラシを抱えて集まってきたのだろう、と私は思った。

 正直言って、私は驚いた。地域にはこんなにも多彩な政治的課題を掲げた小さな運動団体・グループが多数存在していることに、である。その人たちが、自らチラシを配る。その熱意に心打たれた。と同時に、これまで半世紀以上にわたって社会運動(大衆運動)を見てきた私には、以前から気になっていたことが甦ってきたのである。「気になっていたこと」とは、日本の社会運動が1980年代以降、大同団結に向かうよりは、むしろ、細分化への道をたどってきたことだ。
 
 社会運動とは、自立した個人、個人が共通の目標に向かって行動を共にすることである。しかし、その共同行動が少人数にとどまっていては、運動は力を持ち得ない。つまり、多数の人びとが参加する運動になって初めて世論を動かすことができるのだ。それゆえ、個人の自主性を尊重しながらも小異を捨てて大同団結することが社会運動に求められる原則なのだ。その場合、まず、求められるのは、それぞれの組織を解体して新しい組織をつくるという組織的統一ではなく、それぞれの組織を維持しながら、共通の課題で統一行動を推進することだと言ってよいだろう。

 しかるに、1980年代以降続いてきたのは、分裂と細分化であった。これには、1980年代半ばに起きた原水爆禁止運動の再分裂が濃い影を落としている。
 もっとも、近年、安倍政権があまりにも性急に軍事化を進めたため、関係団体間に危機感が高まり、集団的自衛権行使容認の閣議決定、安保関連法、共謀罪に反対する運動や改憲阻止運動では、全国レベルでの団体共闘が成立した。脱原発運動の面でも団体間共闘が行われるようになった。が、草の根レベルでの団体共闘も進んではいるものの、まだ全国化していない。

 だから、32枚のチラシや機関紙を目の前にして、私は改めてこう思ったのである。
 「多種多様な社会運動団体が発する情報を集め、それらを全国に発信することができれば、個々の運動団体が発する情報が多くの市民に届き、多くの市民がそれらの情報を共有することができるはず。そうなれば、各種の運動がもっと拡大し、大きな流れをつくることができるのではないか。そうなれば、政治への影響力も増す」
 「そのためには、各社会運動団体が発する情報を集め、発信するセンターが必要だ。世はインターネット全盛時代。それを駆使すれば、そうカネをかけなくてもセンター設立は可能ではないか。要はインターネット練達の士の協力を得られるかどうかだ」
 センターの名称は「社会運動情報センター」としたらどうか。
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