2018.11.06 オ~寒っ  ソウルの最低温度は0度
    韓国通信NO576

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 仁川空港へ向かうバスのテレビが、新日鉄住金に原告各人に1億ウォン(約1千万円)の支払いを命じた大法院(最高裁)判決を速報で伝えていた。 
 テレビ各局が特集番組を組むくらいに韓国では国民の関心は高かった。これまでの流れから見ると、紆余曲折はあったが強制徴用された原告の勝利は十分に予想されていた。日本政府もそれを見越して韓国政府に「警告」を発していた。政府に圧力をかければ判決が覆ると考えたのは不遜、お粗末としか言いようがない。かつてアメリカが日本の主権を犯して砂川事件の判決を覆えさせたことを思いださせる。
 帰国すると案の定、ニュースは安倍首相、河野外相の抗議、コメンテーターも「国際信義に反する」と非難一色、日本中が怒っているように感じられた。

<何かがおかしい>
 1965年の日韓条約ですべて「解決済み」とする政府の主張が正しいなら、韓国側が個人補償を求めるのは理屈に合わないのは確かだ。対日請求権によって日本側が支払った無償3億ドル、有償2億ドルの資金の他に個人が受けた被害が救済されるべくもない。しかしそう簡単に言い切れるものかどうか。日韓条約締結に至る経過とその後の韓国政府の見解の「揺らぎ」を並べ立てても仕方がないが、従軍慰安婦問題にせよ徴用工の問題にせよ謝罪と補償を求める人たちが存在し、韓国民がそれを支持している現実に変りはない。政府間の対立にまかせるなら泥沼化することは目に見えている。心ある日本と韓国の市民たちは心を痛めているはずだ。

 もう一度37年間にわたった日本の植民地支配とそれを「清算」したとする日韓基本条約と請求権協定について冷静に考える時期なのかも知れない。日韓の交渉内容を不服とする韓国内の勢力(彼らは日本の侵略に対する反省と謝罪を強く求めていた)を抑え込むために朴正煕政権は戒厳令、衛戍令を連発して締結を強行した。あわせて極東戦略の必要性から日韓条約成立を急がせたアメリカの介在を知るなら、日韓条約ですべてが「解決済み」と言い切る日本政府に韓国人が納得していないことくらいは理解できるはずではないか。私たち日本人は日韓、日朝の歴史をあまりにも知らなすぎる。「信じられない」「許しがたい」などと感情的な発言をする前に韓国側の主張にもっと耳を傾ける必要がある。

 韓国を旅行しながら考え続けたのは日韓の未来のことだった。市民レベルでの理解が進んでいるのを感じる一方では、わが国の韓国に対する根強い不信感。それは市民の側の責任というよりアメリカには卑屈なほどに追従しながら韓国を軽視する政治家とマスコミ、エセ学者に負うところが大きい。強制労働による徴用工が20万人もいたこと、性奴隷として貶められた数多くの少女たちの存在。関東大震災時に虐殺された在日朝鮮人の存在。「存在しなかった」、「解決済み」と考えるのは金銭補償の問題以前の、市民感覚としては「恥ずかしい」道義的問題だ。今回の徴用工問題を奇貨として慰安婦問題も「解決済み」に持ち込みたい政府の意図も見え隠れする。
 絶好の天候に恵まれ、素晴らしい紅葉と海を眺めながら、気持ちは晴れなかった。10月には珍しく、韓国旅行最終日29日の朝は氷点下近く、日中も10度を越えなかった。冬の到来には早すぎる。
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