2018.11.24 トランプ、“サウジ皇太子の関与は不明”と声明
―在トルコ・サウジアラビア総領事館でのジャーナリスト殺害

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ米大統領は20日、10月2日にトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館内でサウジの世界的に著名な現役ジャーナリストで、ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、ジャマル・カショギ氏が、サウジ当局者の手で殺害された殺人事件について、631語の特別声明を発表。サウジの事実上の最高指導者ムハンマド皇太子が殺害を指令したかについて「皇太子がこの悲劇的事件について、十分知っていたかどうかは、おそらくそうかもしれないし、あるいは、そうじゃないかもしれない。」「われわれはカショギ氏の殺害をめぐる事実のすべてを知ることは決してないだろう」「いずれにせよ、われわれはサウジアラビアと共にある」と述べた。
 この事件では、当初、サウジアラビア当局は、「カショギ氏は結婚証明書を受け取るために総領事館には来たが、用件を済ませたのち、館外に出た」と説明した。しかし、トルコのメディアが相次いで、トルコ捜査当局の情報として、カショギ氏が館内で殺害され、遺体は処分された、と報道。サウジ当局も、「館内で喧嘩し、死亡した」と館外退去の説明を一転して発表。しかし、遺体の処理については説明しなかった。
 しかし、エルドアン・トルコ大統領が10月23日。トルコ国会で「事件は事前に計画された殺人だった」と断定する発表を行い、「1日から2日にかけてイスタンブールに入った18人のサウジ人がカショギ氏を殺害した」と詳細に明らかにした。一方サウジ政府も、カショギ氏が殺害されたことを認め、殺害に関わった18人のサウジ人の逮捕を発表した。遺体は消え失せたが、トルコのメディアは、遺体は館内で薬品処理され、館外に廃棄されたと伝えている。
 カショギ氏は、主として米国で活動してきた、国際的にも最も著名なサウジ人ジャーナリスト。(本文末尾に、日本の中東専門誌への寄稿を紹介)。しかしジャーナリストとしての立場は、サウジで独裁的に政権を支配するムハンマド皇太子には批判的で、ワシントン・ポストをはじめ、世界のメディアで人権、民主主義の立場から発言してきた。これだけ著名な自国民のジャーナリストを、しかも自国の外交公館内で殺害する事件は、少なくとも主要国では聞いたことがない。
 この犯行が、ムハンマド皇太子の指令あるいは承認によって行われたことは、疑いない。トランプ大統領は、サウジ、トルコ両国の発表直後、「ずさんに実行され、その隠ぺいは歴史上最悪だ」と非難したが、注意深くムハンマド皇太子の名前を出さなかった。
 しかし、11月中旬、米国の主要メディアが、米中央情報局(CIA)はムハンマド皇太子がカショギ殺害を命じたと断定したと、相ついで報道。
 これに対して、トランプ大統領は11月20日、特別声明を発表、CIAはカショギ氏の殺害について調査を実施したが、ムハンマド皇太子の関与について決定的な証拠は得られなかった、と説明。同皇太子の責任追及も、サウジ政府への責任追及も行わず、サウジは米国の偉大な同盟国だと強調した。
 この中でトランプ大統領は、「イランに対するトランプ政権の強硬姿勢をサウジアラビアが強く支持していることこそ、サウジアラビアの事実上の支配者モハンメド・ビン・サルマン皇太子を米政府が強く支持している理由だ」と述べた。
 さらに、特別声明のなかでトランプ大統領は「サウジアラビアはイスラム・テロ過激派に対する戦いに何十億ドルも投資、することに同意した。昨年、私のサウジアラビアとの交渉旅行では、米国に4千5百億ドルも使用、投資することに合意した、これは米国への外国の支出としては過去最大だ・・・」と説明した。

 以下にカショギ氏が、イラク戦争・フセイン政権消滅後の2002年9月発行の季刊「アラブ」102号とのインタビュー「中東の劇的な民主化を願う ジャマール・カショギ、アラブ・ニュース紙編集長」の最終章を転載させてもらいます。彼のご冥福を祈りますー
=問(イラクの)ポスト・フセイン政権は民主国家を実現できるだろうか。それはアラブ諸国に受け入れられるか
 ―カショギ 中東には多くの独裁者が存在する。アラブ社会のシステムが独裁者を生むのだ。クーデターと戦争が繰り返された歴史のために、政権を握ったものは治安・諜報網を強化して反対勢力を排除しようとしてきた。独裁政権を欧米が支援してきたのも民主化が遅れた原因の一つだ、だが中東は変わらなければならない。
 イラクの新政権は、中東地域で最も進んだ民主システムを作ることができるだろう。多数派のシーア派が一人1票の選挙を望んでいることも民主的な国を築く上での推進力だ。レバノンのような、要職を宗教勢力に割り振るシステムより進んだ、中東では最も進んだ民主国家が誕生するだろう。
暗殺されたカンギ氏写真

写真説明
イスタンブールのサウジアラビア大使館内で10月2日に暗殺された、同国の国際的ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏。11月21日の英BBC電子版から転載。





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