2018.11.29 トランプ、サウジ皇太子によるカショギ氏暗殺承認をさらに曖昧化

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 トランプ米大統領は27日、イスタンブール(トルコ)のサウジアラビア総領事館内で行われた、サウジアラビアの国際的ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏暗殺について、「ムハンマド皇太子が、カショギ氏の殺害を命令したと、米中央情報局(CIA)が結論した」との米メディアの報道について、「CIAは単に“フィーリング”(感触)を持っただけだ」と改めて強調した。同大統領はトルコ政府が強力な内偵をして総領事館内でのカショギ氏殺害を公表した後の20日に、「皇太子がこの悲劇的事件を十分知っていたかどうかはわからない」と特別声明を発表していた。(24日本欄)
 このトランプの特別声明に対しての世界のメディアの報道の一例として、英公共放送BBC電子版の報道を挙げておこうー「BBCの安全保障担当記者フランク・ガードナーは“国の情報機関はしばしば確率で推測した表現で発言をするが、100%の結論だということはめったにない。しかし今度の場合、この殺人は皇太子の承認が必要だったと、当局者たちは信じている”と述べている」
 今回のトランプ再声明は、世界中のメディアが皇太子の指令あるいは承認による暗殺だったとみなしていることを懸念し、公的には沈黙のCIAの結論を「フィーリング」だとさらに弱めようとしたのだ。なぜ、そこまでサウジ皇太子をかばうのか。
 前稿で書いたように、先の特別声明でトランプは「昨年、わたしのサウジアラビアとの交渉旅行では、米国に4千5百億ドルも使用、投資することに合意した、これは米国への外国の支出としては過去最大だ・・・」と強調している。
 だがそれだけではない。まずサウジは、米国のイランに対する、厳しい制裁に協力する最大の同盟国だ。イランの核開発を厳しく制限するため、米、英、仏、独、ロシア、中国の6か国とイランは2015年7月、イラン核合意を結んだ。以後、国際原子力機関(IAEA)が合意の実行を査察、イランはほぼ忠実に合意を実行した。その結果、イランの原油輸出は急速に回復、イランの経済、国民生活も改善した。その一方で、イランは、イスラム教シーア派のシリア・アサド政権やレバノンの政治・武装勢力ヒズボラ、イエメンの反政府勢力フーシ派などの支援を強めた。
 サウジアラビアの南に隣接するイエメンでは、2011年以来、サウジアラビアが支援するイスラム教スンニ派の政府勢力とイランが支援するフーシ派武装勢力が激しく対立し内戦状態になり、フーシ側が優勢になった。このため、サウジが激しい爆撃で政府軍を支援、死傷者が激増している。スンニ派のリーダー・サウジアラビアとシーア派のリーダー・イランが、イエメンで悲惨な代理戦争をつづけているのだ。国連によると、サウジが空爆で直接介入して以来の3年間で、人口2千8百万人のこの国で、一般市民5,970人が死亡、9,290人が負傷。2千2百万人が人道援助を必要とし、とくにコレラが蔓延して百万人が罹患しているという悲惨な現状だ。
 もう一つ重要なことがある。それは、トランプ政権下、サウジアラビアとイスラエルが、秘密裏に接近していることだ。サウジはアラブの大国で、イスラエルと敵対してきた。しかしトランプ政権下、米国は米大使館をテルアビブからエルサレムへ移転、国連のパレスチナ支援の中心であるパレスチナ難民救済機関(UNRWA)から脱退、UNRWAの年間予算の3分の1を占める拠出を打ち切った。これらにサウジアラビアは強い反対も抗議も示さず、トランプ政権の親イスラエル行動を黙認した。
 トランプ政権下の米国、ムハンマド皇太子の独裁体制下のサウジアラビア、イスラエルの3国秘密同盟など考えたくもないが、監視続けなくてはなるまい。カショギ氏の暗殺とトランプのムハンマド皇太子支援の背景は深い。

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