2019.03.16 問題が多い中休勤務と勤務間インターバル
休憩時間は単にあれば良いというものではない

杜海樹 (フリーライター)

  一般には知られていないが運輸業界に特有な勤務体系、特に路線バスや電車の勤務体系として「中休(ちゅうきゅう)勤務」というものがある。どういうものかと言うと、路線バスの運転手などの場合では、朝夕の通勤時間帯が繁忙時間帯であり猫の手も借りたい忙しさとなるが、日中などは乗客が少なくなり人手が余ってしまう。そこで、勤務としては、例えば午前5時に出勤して午前9時で一旦退社、午前9時から午後3時までは中休、午後3時から午後7時まで再出勤、午後7時から午後8時まで1時間残業して1日の業務を終了し帰宅するというような勤務体系のことだ。
 1日をトータルにすると午前に4時間、午後に4時間で合わせると8時間労働、残業時間を1時間とすると1日の総労働時間は9時間ということになる。こうした働き方は統計上でも残業込みで9時間分の労働として取り扱われ、何の問題もない働き方として処理されてきた働き方なのだ。だが、この働き方を細かく見てみると、実はかなり問題のある働き方なのだ。

 先ほど述べた時間配分例をモデルとし、通勤という観点から改めて見てみたい。まず、出勤は午前と午後で1日に2回あることになる。家に戻ろうとすれば通勤時間は当然のことながら2倍になる。仮に通勤時間を都市部で一般的な片道1時間とすれば、2往復すると4時間必要ということになる。従って、昼間の中休時間が午前9時から午後3時まで6時間分あったとしても通勤の行き戻りで2時間が消えてしまい休み分は4時間しかないことになる。
 また、朝に出勤してすぐ帰宅し再び出勤するというのも面倒な話であり、家に帰らないケースもあるであろう。もちろん休み中とはいえアルコール等も飲むこともできないし次の勤務に支障を来すようなことも一切できない。結局、休みがあっても名ばかりとなりがちで、実態は限りなく待機に近いものとしてあり、朝5時から夜8時までの15時間拘束されているのと大差がない働き方としてある。

 次に、睡眠という観点から見てみると、仮に1日の仕事が午後8時にすべて完了したとしても、翌朝5時に出勤するとなれば、夜間休息のトータルは9時間しかないことになる。通常のサラリーマンが午前9時に出勤し午後5時に退社するとすれば、残業がなければ夜間休息のトータル時間は連続して16時間ある訳で、比較して見ても著しく短いことがうかがえる。そして、トータルで9時間しかない夜間休息から通勤時間2時間分と食事時間として1時間分を引けば残りは6時間となる。さらに、入浴等の最低限の生活時間を差し引けば睡眠時間の確保はトータルで4~5時間程度しかないという計算になる。もちろん、残業が増えれば、睡眠時間は限りなくゼロに近づいていくことになる。

 1日の休み時間をトータルすると昼間に6時間、夜間に9時間で合計では15時間分あるわけだが、休み時間が連続ではなく分断されており、十分な睡眠時間が確保できるとは言い難い状況と言えよう。昼間の中休時間にも寝ようと思えば全く寝られないわけではないだろうが、明るい日中であり、仕事の緊張感もありで、仮に寝られたとしても1~2時間程度の浅い睡眠にしかならないであろう。人間は生物としてのヒトとして、連続して7時間から9時間程度の睡眠をとることは必要とされており、細切れでは疲労は蓄積し病気の誘発も避けられないというものであろう。
 近年、バスや電車の運転手に居眠りが目立つ等の報道がされるが、実態として寝不足にならざるを得ない勤務形態があるということも知っていただければと思う。

 さて、こうした夜間休息時間の短さに対し、睡眠時間が確保できるよう、勤務明けから次の勤務開始までは最低でも11時間空けるようにとの要求が労働組合等からも強く主張されるようになってきた。連続して11時間という長さはEU労働時間指令(EUが加盟国に対し労働時間についての国内法整備を課している)において24時間につき最低でも連続11時間の休息が必要と謳われていることが根拠となっている。こうした流れを受け、働き方改革の一環として、勤務間インターバル制度の導入が検討され、このほどようやく努力義務として加えられることになった。だが、その内容はまだまだ不十分なもので、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」という厚生労働省の告示においても1日の休息期間は継続8時間以上あればよいことになっており、運転手の拘束時間は16時間まで可能となったままであり、運転手が安心して眠れる環境が整うまでには、まだまだ道が遠いと言えよう。

 さらにもう1点、仮に勤務間インターバル制度の充実により11時間の休息が確保できるようになったとしても問題はなくならないということも付け加えておきたい。なぜなら、労働時間を考える上での前提となっている“1日とは何か?”という最も根本的な問題が実は手つかずという問題があり、労基法上の定めもなく(「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の中に限っては、1日とは「始業時から起算して24時間をいいます」との記述があるが)、就労上の1日と暦上の1日が必ずしも一致する必要はないということがあるからなのだ。そして、勤務間インターバルにおいては、休息時間確保のためなら翌日の始業時間を繰り下げてもよいとされており、インターバルとしての最低時間さえ確保されていれば、昼夜関係なく始業時間も変動するなかでの就労を強いられることにもなりかねないからなのだ。
 
 人間の体は長い月日をかけ、太陽が昇る時に目覚め、沈む時に眠るようにできている。この自然のリズムに逆らえば、海外に出かけなくても時差ぼけが発生し、健康や安全が担保される保障もないと言えよう。
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