2019.03.23 アフガニスタン和平への道開く
タリバンと米国―最長の和平交渉終る

坂井定雄 (龍谷大学名誉教授)

 2月末からカタールの首都ドーハで開かれていた、アフガニスタンの反政府イスラム武装勢力タリバンと米国の和平交渉が終わった。17年間にわたるアフガニスタン紛争のなかで、最も長い16日間続いた交渉で、重要な合意点と解決すべき重要課題がすべて洗い出されたようだ。このアフガニスタン紛争を当初から報道し続けてきたパキスタンのジャーナリスト、アハメド・ラシッドは、国際的信頼が中東では最も高いカタールの通信社アルジャジーラが伝えた総括分析の中で「和平への道はなお長く、飽き飽きする道だが、アフガニスタン国民はこれまでにはなかったほど希望を抱ける理由がある」と書いている。
 2月15日の本欄で紹介した通り、タリバン側の交渉団主席は、タリバン内で最も尊敬されているムラー・バラダール、米国側はタリバンとの和平交渉に当初から関わってきたアフガニスタン生まれのカリルザード元国連大使。どちらも信頼が厚く、最良の交渉団だった。
 会談では、まず双方が合意した2点を確認した、米国側はアフガニスタンに現在駐留している約14,000人の米軍の全面撤退、タリバン側はアルカイダなど他のテロ組織との関係を持たないことを約束。双方は取り決めの草案をまとめたという。
 双方は、今後も必要に応じて交渉を再開することで一致し、握手を交わしてドーハでの交渉を終えた。
 しかし、最も重要な未解決の問題は残った。アフガニスタン政府のアシュラフ・ガニ大統領が、タリバンとの直接交渉を拒否し続けていることだ。米国の強力な支援で1914年に大統領に就任したガニ大統領。アフガニスタン政府軍の総司令官も兼任している。タリバンと戦い続けている政府軍は17万4千人。ほかに国家警察隊が14万8千人。軍と国家警察隊の経費は欧米、日本などが支援しているが、英国以下の戦闘部隊(ISAF)の派遣は14年で終了。直接的軍事支援は米軍だけになった。しかし、最盛時10万人を超えた米軍も次第に縮小、戦闘任務を政府軍に肩代わり。さらにトランプ政権は、縮小を進めた。
 その結果もあり、タリバンは攻勢をつよめ、国連アフガニスタン支援団によると、主に政府軍・警察との戦闘で17年には4年連続で死傷者が1万人を突破、18年も状況は変わらず、タリバンの支配は国土の4割を超えたとも推定されるまでになっている。
 ドーハでの交渉で、カリルザードは政府側との停戦交渉に応じるようタリバン側を説得し、その条件を討議したが、タリバン側は最終的にOKを出さなかった。現ガニ政権はタリバンとの交渉を頑なに拒否し続けているが、政権との直接交渉による解決しかないことを、タリバン側も理解している、とみられた。ラシッドはこう書いているー
 「ドーハでの交渉は、長年の念願だった政府とタリバンのアフガン和平交渉をすぐに生み出すことはできなかったが、進むべき和平への道を開いた。米軍部隊の撤退とテロ対策については草案で合意し、停戦と政治的解決のためのアフガン人同士の対話の開始などについても話し合う用意があることまで一致したようだ。」
 だが、ガニ大統領は、米国とタリバンのドーハ交渉が終わった現時点でも、タリバンとの交渉拒否の姿勢を変えようとはしていない。しかし、ガニ大統領の任期は今年9月までで、選挙管理委員会は次期大統領選挙を今年4月20日に行うと決定している。14年の大統領選では、ガニとアブドラ現行政長官が激しく争い、再選挙を含め就任まで5か月かかった。今年4月の大統領選がどのように展開するか、予断を許さない。
 2004年から14年まで大統領を務め、現在も政治的影響力があるカルザイ前大統領は、今回のドーハ交渉の終了後、アルジャジーラのインタビューで次のように語ったー「私は米国とタリバンの交渉を歓迎している。全アフガニスタンでの停戦が遠くてはならない。いま、アフガニスタン国民が求めているのは、全土での即時停戦と平和だ。不幸にもそれには時間がかかるが、タリバンと米国の間の停戦と生産的な交渉が続くことを希望する。」(アフガニスタン内の交渉に政府を含めることが必要かの質問に対し)「絶対にそうだ。政府とタリバンの直接交渉が、可能な限り早く必要だ。それによって、包括的な和平協定が可能になる。」(了)


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