2019.04.03 ”トランプ票”と似ている大阪維新票
大阪ダブル選挙での維新敗退は安倍政権崩壊の引き金になるか(3)

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

 2019年3月29日夜、大阪でたまたま研究会があった。京阪神の自治体OBが集まる研究会だ。折しも折、話題は自ずと大阪の「入れ替わりダブル選」に集中することになり、各方面から意見や情報が飛び交った。だが、「今度の選挙は情勢が混沌としていてなかなか形勢が読めない」「人によって情勢の見方が違う」「メディアからも情報が入ってこない」などなど、凡そ決め手になる情報が少ないのである。それでも議論を続けているうちに浮かび上がってきたのは、大阪維新票は「浮動票」から「固定票」に変わってきているという共通認識だった。

 話はこうである。橋下氏が登場した頃の大阪維新は、彼一人のカリスマ的人気で浮動票を根こそぎかっさらう勢いだった。橋下氏の個人的人気を利用することでポピュリスト的手法を駆使し、手を変え品を変えて浮動票を引き寄せる選挙戦術で乗り切ってきたのがこれまでの維新選挙だった。しかし、今度は少し様子が違うのではないか――というのである。最大の変化は、ここ数年間で大阪維新票は「浮動票」から「固定票」に変化してきていると言うことだ。

 「大阪都構想」という自分たちの政策(野望)を実現するためには手段を択ばない―これが大阪維新のやり方だ。「なんでもあり」ということなので、だから大抵のことでは大阪人は驚かない。それでも、今回の知事と市長が入れ替わりでダブル選に打って出るという「奇策」にはさすがに驚いたらしい。当然だろう。知事と市長という職責の違いや重さを何一つ考慮することなく任期途中で突然投げ出し、首長選挙を府議会・市議会選挙を有利に導くための手段として利用するという前代未聞の暴挙に打って出たからだ。

 地方自治を足蹴にするこのような行為は、良識ある有権者にとっては呆れるほかなく「許せない!」と思うのだが、ところが必ずしもその通りに行かないのが大阪の選挙の怖いところだ。松井氏や吉村氏が手を振るだけで喜ぶ府民市民が大勢いて、大阪維新というだけで集まる人たちがいるのである。しかしこの雰囲気は、どこかトランプ大統領の集会や街頭演説の光景と似ているのではないか。トランプ大統領が一言喋れば観衆が大歓声を上げる、内容などは二の次三の次で大袈裟なゼスチャーと大声さえあれば満足する――アメリカほどではないが、そんな雰囲気が大阪には結構充満しているのである。

おそらくその背景には、維新であれば無条件で支持する有権者がすでに一定割合に達していることがあるのだろう。昨夜の会合では「3割方いる」というのがみんなの一致した意見だった。アメリカではトランプ大統領が40%台の支持率を維持しているというが、支持層はフェイクニュースであろうとプロパガンダであろうとそんなことは気にしない。とにかく自分たちの気分に合うことを言ってくれればいい、少しでも現状を変えてくれればいいと思っているだけだ。

 大阪でも同様の空気がある。「何をやってもうまくいかない」「とにかくむしゃくしゃする」「上にいる奴らが悪い...」、こんな気持ちが充満しているところへ、大阪維新が「大阪都構想を実現すればすべてうまくいく!」「既得権をぶっ壊せ!」と煽るのだから、そんな演説を聞けばとにかく気持ちがスッキリするのだろう。だから、これらの大阪維新支持層には松井氏や吉村氏が何を言おうと何をしでかそうとそんなことにはあまり関心がない。とにかく派手なことをやって息詰まるような現状に風穴を開けてくれればいい、と思っているだけだ。また、大阪維新支持層には女性や若者が多いのが特徴だ。彼・彼女たちにとっては選挙になれば街頭演説や集会で顔が見られ、あわよくば握手したりツーショット写真も撮れる。これが大阪維新固定票の実態なのかもしれない。だが、3割方もいるとなればその影響力は大きく決して無視するわけにはいかない。

 この日の会合の結論は、大阪維新支持層を切りくずことは困難だが(理屈や政策では彼らを説得できず、現状をすぐに変えることも困難だから)、それを上回る反維新票を結集する以外に方法がない、問題はそれがどれだけ可能かということになった。興味深いのは、多くの意見が「大阪の自民党はアカン!」と言うことで一致したことだ。大阪維新はもともと自民党が分裂してできた地域政党であり、生きのいいのはみんな出ていったので、ロクでもない連中しか残っていないのだという。そんな連中に選挙の主導権を任すとトンデモナイことになる、というわけだ。

 しかし、別の意見もあった。大阪維新が府議会・市議会選挙に首長選挙をぶっつけたのは、都構想実現のためには両議会で大阪維新が過半数を獲得するためだが、これが実際は「逆効果」になっているのではないかという意見である。アカン自民党でも自分の議席を守るためには頑張らざるを得ない。首長選挙単独の時は日和見を決め込んでも、府議会・市議会との同時選挙となれば、結果として小西・柳本両候補の得票が増えるのではないかという分析だ。

 加えて、前回の首長選挙では自主投票だった公明党が今度は「本気」で反維新陣営に参加していると事情もある。公明党のことだから内部事情は複雑で、「最後はどう転ぶかわからない」という意見も出たが、もしいい加減なことをしたら「公明党はもう終わりや」という意見が多かった。間もなく世論調査の結果も出るだろうが、昨夜の情勢分析がどの程度通用するか、今後の推移を見守りたい。(つづく)

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