2019.05.27 米中貿易摩擦で世界の景気不安
  底流に米中の覇権争い

伊藤力司 (ジャーナリスト)

ニューヨークや東京の株価の動揺は、基本的には世界第1の経済大国アメリカと第2の経済大国中国の間の貿易摩擦が原因である。トランプ米大統領が、中国に対するアメリカの大幅な貿易赤字の解消を目指して仕掛けた関税戦争の見通しが不透明で、そのことが、世界中の市場を神経質にしている。

昨年11月末、ブエノスアイレスのG20首脳会議の機会に開かれたトランプ大統領と習近平中国国家主席の首脳会談で、米中双方は本年3月当初まで摩擦解消を目指して協議を行うことで合意した。少なくともこの間は、アメリカも対中関税の追加引き上げは行わないことを約束したのだが、トランプ氏は約束を破って関税を引き上げた。

しかしトランプ政権は貿易不均衡問題をきっかけに、米中関係を根本的に見直し、中国と対決する道に踏み込もうとしているようだ。ペンス米副大統領は、昨年10月4日ワシントンの保守系シンクタンク「ハドソン研究所」で演説し「邪悪な中国共産党との対決」を米国民に呼びかけた。

ペンス副大統領はこの演説で、中国がひそかに米内政に介入しトランプ政権の転覆を図ったとまで告発した。米国内の一部メディアは、このペンス演説をトランプ政権の対中国「宣戦布告」と評したほどだ。

1946年3月、訪米中のチャーチル英首相が「鉄のカーテン演説」をして東西冷戦を予言したが、このペンス演説は「米中冷戦」の幕開けを告げたと、ワシントンではもっぱらの話題になった。

当面の米中摩擦のポイントは、人工知能(AI)や量子コンピューター、5G(次世代通信規格)などの先端技術だとされる。米側の心配は、中国が米企業の知財をこっそり入手して、AIや5Gなど軍事に直結する先端技術の分野で優位に立とうとしているのではないか、ということだ。こうした懸念はトランプ政権だけでなく、広く米国の関係者の間で共有されているという。
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