2019.05.29 自民・公明両党が維新に屈服、議席欲しさに政策を投げ棄てる究極の〝政党ロス現象〟、大阪維新のこれから(4)

広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)

産経新聞が大阪維新を天まで持ち上げている「だけ」だと思っていたら、今度は全国紙全て(大阪本社版)が5月12日(日)朝刊の1面トップで、自公両党が維新に屈服し、大阪都構想の住民投票に対する態度を翻したことを伝える始末になった。ついこの前の大阪ダブル選挙まで「大阪都構想反対!」「住民投票反対!」と絶叫していた自民・公明両党が、今度は手のひらを反して住民投票に協力するというのである。自民・公明の公約を信じて反維新候補に投票した有権者は、開いた口が塞がらないのではないか。

 政党は政策を同じくする者が結集する組織だ。理由もなく政策を変えれば(これを「豹変」という)、政党の立ち位置はたちまち崩壊する。自民・公明は「維新への民意を受け止めなければならない」として態度を変えたというが、それなら反維新候補に投票した有権者の〝民意〟はいったいどうなるというのか。彼らが言う「維新への民意」を受け止めるということは、取りも直さず、自らの支持者の〝民意〟を踏みにじることだということがわからないのか。

 また、選挙に負けた政党が政策を変えるとなると、これは「翼賛体制=政党ロス(消滅)」に直結する。政党が時の権力に対して批判もせず、ただ従うだけの存在になれば、政党政治そのものが崩壊するからだ。太平洋戦争で諸国民に塗炭の苦しみを与えた軍部独裁政権(天皇制ファシズム)を支えたのは「翼賛体制」であり、その反省の上に立って生まれたのが戦後の議会制民主主義であるなら、今度の自公両党の豹変は、戦後民主主義の否定につながることになる。以下、各紙の代表的な記事を抜粋しよう。

 〇毎日新聞、「都構想 来秋にも住民投票、自民府連会長も容認」「自公、維新に屈服、都構想住民投票 容認表明、統一選1カ月 困惑、市民ら 共産は反対変わらず」「大阪都構想 住民投票へ、同日選の影 公明転換、強い維新になびく」
 ―「今回の民意を受けて、より充実した協定書(都構想の制度案)のため、積極的、建設的に改革を進める立場で前向きの議論をする」。11日の公明党大阪府本部会議で住民投票実施容認の方針を決め、記者会見に臨んだ佐藤茂樹代表(衆院議員)はにこやかな表情で方針転換の理由を説明した。安倍晋三首相が衆参同日選に踏み切るとの憶測もある中、議席を死守したい公明としては住民投票の容認方針で維新に対し、関係修復に向けたシグナルを早期に送り国政選挙の不安要素を取り除きたい考えだ。
 ―ダブル選や衆院大阪12区補選で惨敗した自民党大阪府連も11日、国会議員や地方議員が参加する会合を開き、引責辞任した佐藤章府連会長の後任に渡嘉敷奈緒美・衆院議員を選任。渡嘉敷氏は「今回の民意を受けて住民投票は賛成したい。維新と対立するのではなく、ちゃんと歩み寄っていく」と述べた。ただ、自民はこれまで住民投票の実施も含めて一貫して反対。ダブル選でも「都構想に終止符を打つ」と訴え戦ってきただけに、松井氏も「党内でコンセンサスが取れているのか」といぶかった。

 〇朝日新聞、「自公、住民投票を容認、大阪都構想巡り 来年以降にも」「住民投票へ自公急転、衆参同日選意識し焦り、維新『実施確約』求める」
 ―「民意に応える大阪の改革をさらに強めていくという党の立場を、より鮮明にしなければならない」。11日、公明党大阪府本部での記者会見。佐藤茂樹代表が住民投票の容認を表明した。実態は、地方選に負けたうえで国政選挙を意識させられる中、追い込まれた格好での決断だった。
 ―大阪ダブル選前は住民投票実施に一定の理解を示していた公明よりも強硬だったのが、自民党大阪府連だ。一貫して住民投票の実施に反対だったが、「反維新」候補が大敗して方針を大転換した形だ。夏の国政選挙を控えて党勢を立て直すため、この日就任したばかりの渡嘉敷奈緒美会長は実施容認を表明した。渡嘉敷氏は「国政では野党が反対ばかりしているイメージがあるが、それと同じような声が(大阪では)上がっていた」と強調した。ただ、いきなりの方針転換に両党の足元は揺らいでいる。公明府議の一人は「うちはもう維新の言いなりだ」。自民府連幹部はこう反発した。「府連でもまだ議論はできていない」。

 〇読売新聞、「都構想 再び住民投票、来秋にも 自民・公明が容認」「住民投票『民意』で転換、公明 参院選注力を狙い、自民『寝耳に水』憤りも」
 ―4月の統一地方選で地域政党・大阪維新の会が圧勝した「民意」は、これまで一貫して大阪都構想に反対してきた「反維新」勢力の住民投票への対応を一転させた。4年前、大阪を二分した都構想の賛否を問う住民投票が再び現実味を帯びてきた。公明党は11日、府本部代表の佐藤茂樹衆院議員が大阪市内で記者会見を開き、住民投票の実施容認を表明。統一選の結果について「維新の行政運営を有権者が高く評価した」などと維新を持ち上げた。統一選の期間中は維新を「壊れたレコードのように都構想としか言えない連中」と批判していたが、転換の背景には支持母体の創価学会の突き上げがあった。だが、住民投票の容認は、前回に続き2度目で、決裂と歩み寄りとを繰り返す党の姿勢には「日和見」との批判も出かねない。ある公明議員は「党の方針を支持者に説明するのは大変だが、現実的にはこれしかない」と複雑な心境を吐露した。
 ―「住民投票(の実施)には賛成したい。今までの路線とは違う形で再生していく」。11日、自民党府連の議員が一堂に集まる全体会議後、新府連会長に選出された渡嘉敷奈緒美衆院議員は記者団に唐突に告げた。党関係者によると、全体会議前の幹部の集まりで渡嘉敷氏が住民投票の実施容認を提案。反対意見も出たが、多くの国会議員の賛成で決まったという。だが、渡嘉敷氏は全体会議で方針転換を説明しておらず、そのことをニュースなどで知った多くの地方議員は「寝耳に水だ」と戸惑った。大阪市議団からは「支持者に説明できない」と憤る声が続出。ある府連幹部は「全くガバナンス(統制)利いておらず、危機的状況と嘆いた。

 〇産経新聞、「都構想 来秋にも住民投票、維新・松井氏 自公、協力へ転換」「都構想住民投票を容認、自公、民意受け白旗、国政選挙にらみ維新と対決回避、『もう終わりや』府連内に反発 自民」
―「大都市制度のあり方と衆院選はまったく関係がない」。公明府本部の佐藤茂樹代表は11日、住民投票容認と衆院選との関連性を記者に問われ、言下にこう否定した。だが、そんな佐藤氏の言葉とは裏腹に、支持母体の創価学会や党本部からは、維新との関係見直しを求める声が強まっていた。公明が前回投票に協力したときは、衆院選での維新との対決を避けたい学会本部の強い意向が動いたとされる。「常勝関西」と呼ばれるほど、関西の地盤を固めてきた公明にとって、大阪、兵庫の衆院6議席は党として絶対に失うことのできない〝生命線〟とされる。学会や党本部では「反維新」の旗を振り続けることによる逆風が、国政選挙に及ぶことに日増しに危機感が強まった。大型連休明けの今月7、8日には、公明の府市両議員団の幹部が都構想の賛否を含めた見直しを明言。8日には関西の学会幹部と3期以上の公明市議団が集まり、「維新への民意を受け止めなければならないとの共通認識が形成された」(公明関係者)という。
 ―「民意を得た維新と連携を目指す。従来の立ち位置を変えていく」。自民大阪府連の新会長が会見の冒頭で訴えたのは、不倶戴天の敵であるはずの維新との関係改善だった。ダブル選で完敗しただけでなく、安倍晋三首相も応援に駆け付けた衆院大阪12区補選で維新候補に膝を屈した自民府連。府議・市議ともに議席を減らし、「解党的」とまで言われた現状について、この日就任した衆院議員の渡嘉敷奈緒美会長は「負けは神様がくれた贈り物」と表現。「対立からは何も生まれない」と維新への歩み寄りを明確に打ち出した。会見に先立って行われた府連の総務会では、都構想の住民投票容認について賛成多数で承認が得られたと強調したが、大阪市議団を中心に維新へのアレルギーは強い。ある自民市議は渡嘉敷氏の融和路戦について「全体会議では一切そんなことは聞いていない。国会議員は自分らの選挙のことだけ。府連はもう終わりや」と猛反発した。

 以上が各紙記事の抜粋だが、公明は学会と党本部の圧力で、自民は国会議員の主導で維新への「関係改善=屈服」が突如表明されたことがわかる。自公与党が学会の支援の下で戦わなければならない国政選挙を目前にして、首相官邸の別動隊である維新との関係改善は急務の課題だったのであり、自公の惨敗は「神様の贈り物」だったというわけだ。このことの堺市長選に及ぼす影響は、関西空港を襲った台風どころではないだろう。自民・公明が維新候補に組する事態も想定されないことはない。さて、堺市のリベラル勢力はいかなる戦略を構築するのか。キーワードは、「堺のジャンヌダルクよ、出でよ!」といいたい。(つづく)
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