2019.06.20  不快になじめない私―「ウソ」で固めた東京オリンピック
     韓国通信NO604

小原 紘(個人新聞「韓国通信」発行人)

 友人たちと群馬の猿が京温泉へでかけた。赤谷湖畔の宿に二泊。月夜野、赤城山周辺のドライブと散策。夜の酒食の席は、談論風発、楽しく盛り上がった。
 しかし旅行の間中、四月以来の改元騒ぎと、天皇交代、トランプ大統領訪日、安倍首相の異様な露出風景が醸した不快さが心に残っていた。
 「いま、この社会の気流か気圧のようなものが急速に変わりつつあることを、どれだけの人びとが感じているだろうか」、「不快になずみ、不快を口にしなくなり、いつの間にか快不快の境界線も見えなくなっている」のは、「乏しい内面が、わたしたち自身を執拗に抑圧しているから、それは真の不幸をのぞむかのようだ」と作家辺見庸は苦悩をにじませ(『新・反時代のパンセ』)、「連日のオリパラ・ご退位さわぎにわたしは無言で毒づく。けっ、しゃらくせえ!」とエッセーを締めくくる。
 改元、天皇の交代劇、トランプの国賓接待劇は明らかに、首相による、首相のための「茶番劇」だった。彼が描く次の舞台は、改憲を懐に、国民的「祝祭」、オリンピックの場に移る。私は断然「不快」である。そして辺見の挑発に乗って毒づく。今からでも遅くない、オリンピックなぞ止(や)めちまえ!と。
 耳を貸す人はいるだろうか。現に競技場の建設は進み、チケットの販売予約も始まった。大勢のボランティアが嬉々として集まり、聖火リレーのコース、金メダル候補の話題でもちきり。開催日までのカウントダウンも始まった。
 政治利用やカネ儲けを目的にした「悪巧み」は、いずれ破たんするはずとタカをくくっていたが、善男善女、老若男女、こぞって一年後を楽しみにしているようにも見える。「反対」を唱えても、変人あるいは、「非国民」扱いされるのがおちかもしれない。それでもオリンピック「オール与党」の世情のなかで主張したい。実はオリンピック開催の期間中だけでも、喧騒を離れてどこか静かなところで暮らしたいと真剣に思っていた。「ニッポン! ニッポン!」の声で湧きかえる日本からの脱出。

<嘘と金で買ったオリンピック>
 放射能は「アンダーコンロール」と真っ赤な嘘を語った(2013年9月)安倍首相の得意げな顔が思い出される。許容放射能の国際基準1ミリ㏜を遥かに越す20ミリ㏜の避難地域の相次ぐ指定解除。「自主避難者」の住宅を取り上げて「安全」を言い繕う政府。オリンピック誘致をカネで買った疑惑で竹田恆和IOC会長は辞任に追い込まれた。
 ウソとカネにまみれたオリンピック招致後、目にあまる安倍政治の暴走が始まる。強行採決が相次いだ。首相の国政の私物化、「モリカケ疑惑」を官僚たちの「文書改ざん」「ウソ」で乗り切った。政府統計の「改ざん」でアベノミクスの偽装が露見した。昭恵首相夫人が国有地の払い下げに尽力したことも、100万円の寄付も「なかった」ことにされた。疑惑の人が夫とともに晴れやかにトランプ大統領歓迎宮中晩さん会に参加したことに誰も驚かない。首相の親友、加計孝太郎氏の請託も「なかった」ことにした。
 「平和でより良い世界づくりに貢献し、スポーツ文化を通して、世界の人々の健康と道徳の資質を向上させ、相互の交流を通して互いの理解の度を深め」「住みよい社会を作り、ひいては世界平和の維持と確立に寄与する」(オリンピック憲章抜粋)。
オリンピック精神と相いれない不道徳、不寛容な政治と社会的病理が深化した。
 在日外国人やLGBT(性的マイノリティ)に対する差別と、ヘイトがはびこる日本社会。北朝鮮や中国に対する敵愾心を煽り、軍事拡張にひた走る国。商業主義と巨大利権の横行。憲法の平和主義をかなぐり捨て、差別と国際協調破壊者のトランプ大統領に忠犬のように付き従うわが国に、「道徳の資質の向上と世界平和」を語る資格はない。社会のデタラメさを覆い隠すオリンピックと、それに浮かれる熱狂が、これから一年以上も続くと思うとうんざりだ。「オリンピック疎開」はやめて、醜悪で腐敗した「バベルの塔」を見てやろうという気持ちに今は傾きつつある。

<政治目的に利用されるスポーツと障害者たち>
 政治家たちが学ぶべきものはオリンピック精神、スポーツ選手たちのひたむきな努力とフェアープレイ精神ではないか。スポーツの世界は、「口先」「謀略」「権力」「忖度」「カネ」「ウソ」がはびこる政治の世界とは無縁の世界だ。政財界のオエライさんたちの頭には、「国威発揚」、「金儲け」、そのためのメダルの数しかない。彼らにとって選手たちは野望の実現のための手段に過ぎない。白血病を発症した水泳選手に対して「メダル候補なのに残念」と語った五輪担当大臣は、「手段」とされた選手をはじめ国民のヒンシュクを買った。
 NHKはパラリンピック関連報道に余念がないが、「アンダーコントロール」から始まった醜悪な国策オリンピックを美化する狙い、政府へのサービス、「忖度」としか見えない。パラリンピックで陽の当たるエリートたちと無縁な社会で暮らしている障害者たちの姿が見えない。「共生社会」という政府のウソ。政府が定めた障害者の雇用率を引き上げるために、各省庁が雇用障害者を水増しした。障害者には屈辱的、前代未聞の内閣総辞職に値する大事件だった。

<オリンピック成功のための国会決議>
 今から5年あまり前の2013年、衆参両院で「オリンピック成功に関する決議」が行われたのをご存知だろうか。オリンピックを「国際交流・国際親善、共生社会の実現、国際平和に寄与する意義深いもの」と位置付け、オリンピック開催は「元気な日本へ変革していく大きなチャンス、国民に夢と希望を与え」、「東日本大震災からの復興を着実に推進して、新しい日本の創造と我が国未来への発展に努める」という決議が、自由民主党、民主党・無所属クラブ、日本維新の会、公明党、みんなの党、生活の党の全会一致で可決された(日本共産党は決議提出には加わらなかったが、決議に賛成。反対は「オリンピックより福島を救え」と主張した山本太郎議員のみだった)。
 福島原発事故から2年後、誘致を喜び、政府に「ヨイショ」した頭脳の程度に驚かされる。

 東北の復興もなかば、福島原発の処理は未だ何の見通しも立っていない。避難生活者5万4千人、うち福島は4万2千人(2019/1現在)という苛酷な現実のなかで行われるオリンピックは、まさに「喪中のなかのお祭り騒ぎ」ではないのか。オリンピックに対する批判すら認めない全体主義的傾向、日本社会の劣化が始まった。 地震、水害、原発事故、戦争による不慮の中止も考えられるが、今からでも遅くない、やはり、オリンピックは自主返上すべきだ。
 オリンピック開催後の日本がどうなるか心配する人は多い。

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